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昼田とハッコウ
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2013/09/27 |
JAN | 9784062180269 |
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昼田とハッコウ
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商品レビュー
3.4
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軽妙で洒脱でそれでいて地に足がついている文体は今を生きる人々の日常を語るにこれ以上ないほど合う。丁寧に描かれる家族の生活は、ある程度の誇張を交えて飽きさせないが、かといって戯画的になりすぎることなく、冷静な観察者による現代の記録といった心持ちがする。しかしそれ自体が読み方によって...
軽妙で洒脱でそれでいて地に足がついている文体は今を生きる人々の日常を語るにこれ以上ないほど合う。丁寧に描かれる家族の生活は、ある程度の誇張を交えて飽きさせないが、かといって戯画的になりすぎることなく、冷静な観察者による現代の記録といった心持ちがする。しかしそれ自体が読み方によっては壮大な叙述トリックのようにも読めるのが不思議である。 物語は、主人公である昼田実の一人称で語られる。彼の父親は彼が生まれる前に蒸発しており、母親も彼が幼いうちに亡くなり、母方の親戚である田中家で育てられることになった。とても神経質で思い込みが激しいうえに嫉妬深く、意思が強いというよりはこだわりが強すぎてとても社会でうまくやっていけるとは思えないこの主人公の語りは、一見すると冷静な観察の記録であるかのように見せかけられているが、その実、決して客観的で公平なものではないだろう。しかも自分が一番優秀で友達付き合いもよくIT企業でうまくやって行けているという自認なのだから、この主人公の目に映る登場人物たちが本当にそういう人物なのかはかなり疑わしく思えてくる。冒頭で叙述トリックといったのはそういうわけである。 そう考えると、この小説はハッコウの成長物語に仮託しているものの、実は主人公を主体とした教養小説という構造になっていることになる。ハッコウや朝倉のだめな部分として描かれるのは全部主人公のだめな部分が見えているのであって、彼らは実はそういった問題点をすでに克服しており、だめなのは主人公のほうなのである。 ところが、物語の終盤に至っても主人公はそうした点を自覚することなく、ただただ悶々とし続けるばかりである。何となく社会の中で自分の役割を見出したかのような独白を続けているが結局のところ自分の殻に閉じこもって何もしていない。最後には幻想めいた情景の中で理想的な姿のハッコウを独り占めすることに成功し、そのまま夢の中に生き続けることを決意して物語は終わってしまう。現実のハッコウが結婚して現実的な経営者として活動しているのとは対照的である。 我々読者はこの結末をどう受け止めればよいのだろうか。こうした幻想は現実には受け入れられず、主人公の夢見た家族は書店とともにやがてその衝突を免れず崩壊していく運命を受け入れるべきなのだろうか。あるいはそれを避けるために現実を見ず、その夢とともに天の岩戸に閉じこもるべきなのだろうか。どちらも誤りである。これは教養小説である。決して内省的とはいえないハッコウや朝倉、その他の登場人物のように、眼の前の課題に一つ一つ対峙し、地味であまり意味があるとは思えないながらも恐れずに日々と向き合うことこそ重要であり、主人公のように斜に構えて人生を俯瞰しているかのような態度がかえってパラノイア的であることを丁寧に説いているのである。永久のモラトリアムを謳歌するような態度とはいつかは決別すべきなんだろう。
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この本が、この文章が、この人たちが、街が一生続いて欲しいと思った。 この本を買った当時はなぜか読まなくて、1ヶ月くらい前になぜかわからないけど急に読んでみようと思った。11年越し。 そういえば隣町が舞台だった。そして自分は書店でアルバイトをしていて、もうこれ以上書店員ではいられ...
この本が、この文章が、この人たちが、街が一生続いて欲しいと思った。 この本を買った当時はなぜか読まなくて、1ヶ月くらい前になぜかわからないけど急に読んでみようと思った。11年越し。 そういえば隣町が舞台だった。そして自分は書店でアルバイトをしていて、もうこれ以上書店員ではいられない。この仕事を自分の事にしておきたくないなと思ってしまっていた。 人はそれぞれの生活の線の上で普通ではないことが起こって、それでも毎日は続いていく。日常なんてものは言葉でしか存在しない。ナオコーラの小説は最後のページから続いていく感じがする。ただ文字はそこで途絶えていて、圧倒的“終わり”をつきつけられる。寂しくなってしまう。 やっぱりナオコーラが書くものが1番かっこいい。ナオコーラは俺のヒーローだ。 ps 感想書くのあんまり好きじゃないんだけどほんと、嬉しくて。なんかもうすごい嬉しいこんな面白い小説が読めて。
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2015年に上下の文庫本で購入。積読本でした。 多分名古屋に住んでた時に購入した記憶です。苦笑 約8年の時を経て、読みました。 昔、大好き過ぎて大事に取っておいた「指先からソーダ」 ナオコーラさんのエッセイ。 もったいなくて取っておいたけど、 読んだ時には感じ方が変わってしま...
2015年に上下の文庫本で購入。積読本でした。 多分名古屋に住んでた時に購入した記憶です。苦笑 約8年の時を経て、読みました。 昔、大好き過ぎて大事に取っておいた「指先からソーダ」 ナオコーラさんのエッセイ。 もったいなくて取っておいたけど、 読んだ時には感じ方が変わってしまった気がして、 読みたい時に読めばよかったと後悔したことがあり。 今回の本も同じだったらどうしようと、少し不安でした。 --------------------------------------------------- 働くことは「役割」を果たすことだと思っていた。 でも、それだけじゃないのかもしれない。 家族じゃない人と、 家族のように 繋がれるだろうか。 --------------------------------------------------- 共に生きることは、小さな関係にとどまることじゃない。 「町の本屋さん」のオレにできることはなんだろう。 オレはこの街が好きだ。 この街でずっと生きていこう。 --------------------------------------------------- 家族、仕事、生活、繋がり、血縁、愛。 社会、政治、街、書店。 すごく狭い話のようで、遠くて掴めないような。 町の本屋さんの行く末。 大震災、政権交代。 ふわっとしているようで、地に足をつける。 文化を繋いでいくこと。 昼田はハッコウの両親に育てられる。 昼田は、父親を知らない。 アロワナ書店を舞台に、 家族や繋がり、生きていくことについて描かれている。 とかいうと、 全く魅力的じゃないし、 なんて言うか、 あらすじでは書き表せないんだと思うのです。苦笑 絶妙なんです。 所々の会話や文のなかに、 きゅっと胸をつかれるような言葉があったり、 なぜか泣きたくなるような気持ちがあったり。 日常のなかの時間や高ぶりのなかで、 暗転するようにバッサリ途切れて、 別の日、みたいな物語の展開も良いのです。 あ、ここから先の会話気になるのに…!と思うけど、 日常のトーンに戻るから、 あの展開は幻?と思っていると、 淡々と葛藤が語られるから、 あ、夢じゃなかったのか、と思ったり。苦笑 アロワナの七不思議とか。笑 うーん、なんか言葉にしにくい。苦笑 私の中に、昔の私が残ってたことがわかった一冊です。 それが嬉しくて。ちょっと悲しかったりもして。 ナオコーラさんの本に救われた気がするんです。 読書ってすごいなあ、と思わせてくれた一冊です。
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