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紅梅 文春文庫
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紅梅 文春文庫

津村節子【著】

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紅梅 文春文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 文藝春秋
発売年月日 2013/07/10
JAN 9784167265144

紅梅

¥220

商品レビュー

4.2

13件のお客様レビュー

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2024/09/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

吉村昭、津村節子夫妻はどちらも著名な小説家。 吉村がガンになり、その様子を妻の津村が小説仕立てに書き上げたのが本作。 夫婦の細やかな心配りや愛情がさり気なく伝わってくる内容です。病床でも欠かさず日記をつける夫とそれを時々チェックする妻、夫は妻が目を通すことも知っており、面と向かって言いづらい感謝の言葉も間接的に伝えるという作家同士ならではのやり取りが秀逸。 例えば、「育子(小説内での津村節子)、寝ているうちに帰る」と素っ気なく書かれた日記の一文は、夫が死を意識し遺言書を残そうとした時期のもの。後でそれを読んだ妻は、「育子は、夫が目を覚ました時に育子がいないことを、どれほど寂しく思ったことだろう、と胸を鋭利な刃物で刺されたような気がした」 そして、「夫が枕元に置いていた日記をどうして読まなかったのだろう。育子は天候とその日の出来事しか書かれていない夫の日記をよく借りて、自分の日記のまとめ書きをしていたから、読むことに抵抗がなかった。それなのに、なぜかベッドの脇に置かれている日記を読むのはためらわれた。病気が進むにつれて、日常のことではなく、心情が書かれているだろう、と思ってためらいを抱いたのである」と後悔する。 津村節子も売れっ子作家だったので、どうしても外せない仕事や会合が頻繁にあり、しかも夫の病気は世間にナイショにしている為に欠席するにも本当のことが言えないという状況。夫は夫で、「君は自分の仕事をしろ」と言ってはくれるが、やはり側に妻がいないのは寂しい。そんな様々な感情が、「寝ているうちに帰る」という一文に凝縮されている。 夫も体が許す限り、執筆仕事や講演もこなそうとするし、闘病に対して前向きで、常にユーモアも忘れない。 『夫は患者として実に従順であった。医師の指示は忠実に守る。以前肝臓の数値が悪いから二週間アルコールをやめて下さい、と言われたことがあった。医師が海外で行われる学会へ出席するため二ヶ月以上も留守になった時、夫は医師が帰国するまで禁酒していた。「先生に、全然飲まなかったのですか、と驚かれたよ。私は辛抱強くて、女房とずっと一緒に暮らしています、と言ったんだ」』 闘病中の痛みや不自由さにずっと耐えながら、大きく取り乱すこともなく、周りの人間を気遣う人間だったが故に、余計に彼の最期にとった行動は衝撃的でした。 このノンフィクション作品は夫婦の愛の物語です。

Posted by ブクログ

2024/09/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

小説…とはいえ、ほぼノンフィクションと考えていい、津村節子が、夫吉村昭の舌癌発見から看取るまでの闘病記録的私小説。 死ぬことを克明につづった文章を読むのは、とてもストレスに感じる行為で、この本も読む前に覚悟をしたのだが、そのストレスは想像していたものとは違って、していた覚悟は別のものに変わっていった。 俺はどう死にたいのか?妻や家族を看取る時、どういう態度と行動をとりたいのか。観念的なものもそうだが、もっと行動に落とし込んだ具体的な気持ちの持ちようを考えるきっかけを作ってくれたと感じた。 俺も家族もいつ死に至る病気になってもおかしくないし、まして俺も妻も半世紀以上生きてきてるわけで、世間的にまだまだ若いと言われたところで、時間を追うごとに寿命に近づいているわけで…。いつまでも、まだ悲しいことを考えたくない、では済まされないと思う。 居住まいをきちんと整理しておくとか、自分の気持ち(延命治療についてとか簡単な遺言とか)を簡単でもいいのでまとめておくとか、保険とか財産(ほとんどないけど)の処し方とか。 痛いのは嫌いやし、忍耐なんて大嫌いなので、大病を患ったと分かった瞬間に、タイムリミットを決めて安楽死させてもらうようにしておこうと思っているが、それにはどうしたらいいのか等の下調べもしておかないと。 なんか読書感想から大きくずれてしまったが、夫妻の闘病記を読むにつれ、この夫婦はお互いを尊敬しあっていたのだなと思えたし、尊厳を認め合ったからこその闘病記だなとも思えた。 貧乏なのでお手伝いさんが云々とか、病院のDX個室みたいなところは無理だが、見習えることは見習いたいなぁと。

Posted by ブクログ

2022/02/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ー臨終まですら愛ー  夫婦ともに小説家の育子の夫が癌になる。  入退院、検査、治療、療養と人は簡単には死ねるはずもなく。看病する方も、ひしと迫りくる患者の死の前にひたすらに生きるしかない。  しかし、育子は、小説家であり、夫の看病に充分に注力できない。  闘病と看病とは、交わりがたい個人の営みであると同時に、血のつながらない二人がもっとも自身を繋げていく過程でもある。  つまりは愛。  臨終とは、この世の愛の総決算なのかもしれない。  夫の死を見つめる視線も、鋭く描写される。死は誰にとっても等しく未知。遺言をしたため、土地や家財、関係各位の人への対応、葬式の段取りなど、詳細に描かれていたのを読むのは初めての事だったので、死すら、個人的なイベントではなく、公のものなのかと思うと、なんとなく社会生活のイベントの一つのようなきがして、ニュースに流れる、恐らく昵懇ではない、ほぼ他人の死を、肉親の死と言わんばかりの悲し気な表情で知らせるニュースのアナウンサーほど嫌気がした。  そんな背景からも、育子にとっての臨終と、看病生活は、ひと時、夫との私的な時を過ごせた時間なのだろうと思うと、二人の愛が嚙み合ったり、すれ違ったりするさまは、どんな夫婦にも、どんな二人にも当てはまるのだろうなぁと感慨を受けた。

Posted by ブクログ

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