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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 慶應義塾大学出版会 |
発売年月日 | 2013/06/22 |
JAN | 9784766420531 |
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商品レビュー
4.5
2件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
この著書の一貫した問題意識は、昨今の大学改革において「課題相互の関連性や、これまでの歴史的な経緯に対する思慮や配慮を欠いた、『拙速』のそしりを免れない個別政策が、目まぐるしく打ち出され、それが混乱を招」いている点にある。そこで著者は、歴史学的・比較教育的な視点を踏まえながら、日本の高等教育政策や大学改革の諸問題の根源をひとつずつ明らかにしている。 その一例として、高等教育システムの問題を取り上げたい。 著者は「アメリカの高等教育が規範的にも構造的にも“脱工業化”の時代の諸要求に適合している」というトロウの指摘を紹介している。アメリカの「Higher Education Model」では、多様な高等教育機関が併存し、多数の私学もある。これらが志向しているのは、消費者である学生である。そして、システム全体に共通の基準を維持し監視する機関がない。このような無政府状態の教育機関群を一つのシステムとして纏めているのは、「無数のあらゆる種類の団体(職能団体など)」であるという。 一方、日本の場合は数多くの私立大学はあるものの、中央政府のコントロールを受けている。高等教育機関も種類は少なく、画一的な「大学」が多数を占めている。多様な目的・学力の学生を受け入れるシステムとしては、硬直化し過ぎているのである。 日本とアメリカとでは、大学を取り巻く社会的・文化的な背景が異なるため、アメリカの例を無批判に取り入れることはできないが、ユニバーサル化した大学のあり方を考える際に参考になる事例である。現在取り上げられている大学関係の諸課題も、昨今突然出てきた問題よりは、過去から何らかの形で議論されているもの多い。そのような先達の知恵と経験は大いに参考にすべきである。 いずれにせよ大学改革は、対処療法的に行うのではなく、それぞれ関連する諸課題をも包括させながら巨視的な視線で、かつ、自律的・主体的に取り組まなければ成功しないということだ。同時に政府は、教育システム全体や日本の雇用慣行も踏まえた、かつ日本の風土に相応しい教育システムの再編成のため、大局的かつ長期的な視野をもった緩やかなコントロールも必要なのだろうと感じた。
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この夏学期は、空いている時間は、修論のデータクリーニングと授業の課題を捌くことにほとんどの時間を費やした。それは、自然科学の研究者が実験を行うようかもしれない。ある程度データも溜まり、7月上旬の論文指導での報告を終え、なんともいえない余韻ひたっていたところ、何気なく院生部屋にあっ...
この夏学期は、空いている時間は、修論のデータクリーニングと授業の課題を捌くことにほとんどの時間を費やした。それは、自然科学の研究者が実験を行うようかもしれない。ある程度データも溜まり、7月上旬の論文指導での報告を終え、なんともいえない余韻ひたっていたところ、何気なく院生部屋にあった本書が目に入ってきた。すかさず、一緒にいた一人に「この天野先生の本、読みました?」と尋ねた。彼は「修論のテーマに関する1章があったらか買いましたよ。」といった。私もパラパラ目次とまえがきを読んでみた。この本にはトロウとクラークへのオマージュとも書いてある…。高等教育研究の第一世代のうちの一人による、静かでやわらかい語り調ながらも、ものすごい気迫に満ちた本書を、知らず知らずにうちに1章分を読み切っていた。次の瞬間、院生部屋のPCから本書を発注していた。 本書における個人的な関心は、大学分類、機能別分化、教養教育、分野別評価・参照基準だ。しかしこれらは各個別の問題でなく、一連の大学の課題として複雑にからみあっている。16章までを読みとおすとそれがよくわかる。 多忙な読者は、実務で情報の取捨選択や意思決定に日々追われたり、論文のテーマ周辺の先行研究を渉猟や、関連データ作成をせざるを得ない状況だったりするかもしれない。 だが、そういう人ほどこそこの本を読み、大学教育という海の中で自分はどこにるのか、ということを確認したほうが良い。本書は読者に一定の著者自身の軸を示してくれる。それは半世紀におよぶ研究から抽出された確固たる芯のようなものだろう。本書を読み、軸となる指針を一度受け入れた後、各自の課題に取り組むとまた違った考察になること請け合いだ。幸いにも今月末、著者の特別講義を受講することになった。一言ひとこと、じっくり味わいたいと思っている。
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