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日本人の地獄と極楽 読みなおす日本史
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 吉川弘文館 |
| 発売年月日 | 2013/04/12 |
| JAN | 9784642063937 |

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日本人の地獄と極楽
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本書は、日本人が仏教における「地獄」と「極楽」という他界観をどのように受け入れ、自らの土着的な信仰や文化と融合させながら独自の死生観・他界観を形成してきたのかを、庶民の視点から深く掘り下げて論じていると考えられます。エリート層の仏教とは異なる、「庶民仏教」や「仏教民俗」の実態解明...
本書は、日本人が仏教における「地獄」と「極楽」という他界観をどのように受け入れ、自らの土着的な信仰や文化と融合させながら独自の死生観・他界観を形成してきたのかを、庶民の視点から深く掘り下げて論じていると考えられます。エリート層の仏教とは異なる、「庶民仏教」や「仏教民俗」の実態解明を目指しています。 主要テーマ1:日本人の他界観における地獄と極楽の受容と隣接性 日本人にとって地獄や極楽は、単なる観念ではなく、信仰によって具象化・現実化する確かな存在として捉えられました。現世での利益を求めつつ、来世での極楽往生を願う(来世への投資)という二重の志向が見られます。特徴的なのは、地獄と極楽が遠く隔たるのではなく、隣り合わせにある、あるいは一体であるという認識です(例:擬死再生儀礼)。特に民衆的な浄土教では、強烈な罪業観からくる地獄の恐怖と、阿弥陀如来による極楽救済への信仰が表裏一体でした。古来の山岳他界観(山は死者の赴く場所)と浄土信仰が融合し、山が浄土と見なされたり(例:山越阿弥陀図)、地獄と極楽が同居する霊場(例:熊野)が生まれたりしました。 主要テーマ2:他界としての山と海 山は霊場として、死後の霊魂が赴く場所と考えられ、多くの寺院が建立されました(高野山、比叡山など)。死者の魂を山の浄土へ送る儀礼や、荒魂を鎮めるための参詣が行われました。山岳信仰は水源信仰と結びつき、龍神(水神、怨霊の象徴)とも関連し、地獄のイメージとも結びつきました。一方、海も他界への通路と考えられ、熊野からの補陀落渡海は、観音浄土を目指す捨身行として、信仰の強さを示しています。 主要テーマ3:死者供養と鎮魂の儀礼 葬送儀礼では、念仏紙や阿字を棺に入れることが極楽へのパスポート代わりと信じられました(例:善光寺の御判・御印文)。盆行事では、山などから祖霊を迎え、現世を訪れると信じられました(祖霊信仰)。位牌や仏壇に霊が宿るという素朴な信仰も根強くありました。死穢を祓うための水を用いた禊も重要視され、三途の川や葬頭河の観念、水浴び(垢離)の習慣に繋がりました。 主要テーマ4:民間信仰と仏教の習合 日本人の地獄・極楽観は、仏教の教えが土着信仰と習合し、時に誤解されながら成立しました。しかし、それは日本人の原始的な神観念や他界観を反映した独自のものでした。弥勒信仰は踊り念仏と結びつき、現世での豊穣や幸福をもたらすものとして受容されました(例:弥勒年号)。地蔵菩薩は地獄に堕ちた人々を救済する仏として広く信仰され、地獄絵図や民間で作られた偽経(地蔵十王経)などを通じて独自のイメージが形成されました。 主要テーマ5:芸能・説話における地獄・極楽 修験道の地獄巡りは、近世以降、儀礼性が薄れていきました。地獄や極楽の様子は、絵巻物や地獄変相図を用いた説経・絵解き、あるいは口頭伝承によって民衆に広まりました。昔話(例:「地獄の白米」)や古浄瑠璃、説経節などの語り物は、日本人本来の他界観に基づく地獄・極楽のイメージを反映しています。極楽を描くよりも地獄劇が多いのも日本的な特徴とされます。 主要テーマ6:庶民仏教研究の視点 本書は、国家仏教のようなエリート仏教に対し、下部構造としての庶民仏教(聖・庶民の仏教)の流れを重視します。文献史学だけでなく民俗学の方法を援用し、仏教民俗の成立とその背景にある歴史の解明を目指します。元興寺極楽坊から発見された中世庶民信仰資料の研究成果も、庶民の信仰生活を理解する上で重要視されています。 全体として、本書は日本人の地獄・極楽観が、仏教思想と土着信仰のダイナミックな習合によって形成され、庶民の生活や文化の中に多様な形で根付いてきた独自のプロセスを、豊富な事例と専門的な分析を通して明らかにしようとしていると言えます。
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