鉄人伝説 小説新日鐵住金

小野正之【著】

• 販売会社／発売会社: 幻冬舎ルネッサンス
• 発売年月日: 2013/03/15
• JAN: 9784779009501

商品レビュー

2024/01/16

規模も影響力も大きな企業は、その経営判断が国家を揺るがすという事がよく分かる。本著は、経済ニュースにおける歴史の裏側、その人間ドラマ。日本製鉄という会社が特に中国、韓国への対応が招いた事は何か。企業合併に踏み切った外圧、判断は何に基づいたのか。迫力がある。小説とあるが登場人物も固有名詞も実在するノンフィクション小説だ。

韓国ポスコを育て、中国宝山を作った日本製鉄。新日鉄による宝山建設の竣工式には江沢民や趙紫陽首相が出席。歴史は更に遡って1962年LT貿易の覚書が中国との間で交わされ、政府買い付け期間による買い付けから語られる。中国側に振り回されながらも成し遂げた挙句、競合化。ポスコには電磁鋼板の製造技術を不正取得されもした。

2001年に住金の株価が30円台に突入した時、新日鉄に業務提携を相談。当時の千速会長の了解を得て新日鉄、住金、神戸鋼の相互株式持ち合いが成立し、ミッタルへの防衛体制が出来上がった。このことを下妻は恩に感じ、2012年に住金と新日鐵の合併の後押しとなったという。

日本製鉄の大義、原動力は一体どこにあるのか。韓国や中国にそこまでしなければならなかったのか。その点はよく分からない。また、こうした出来事とは関係なく、日本製鉄には東大卒が多く、大平正芳を始めとした政界との深い関わりがあったという点も本著で知り得た事。学びも、疑問も尽きない。