平成俳句の好敵手 俳句精神の今

坂口昌弘【著】

• 販売会社／発売会社: 文學の森
• 発売年月日: 2012/12/01
• JAN: 9784864380638

商品レビュー

2024/02/08

平成の世の俳人たちの中から好敵手と目される人を二人とりあげ、その句と人物を概観する。真鍋呉夫や宮坂静生、辻桃子、仙田洋子などこれまで知らなかった素晴らしい俳人たちにふれることが出来た。億年のなかの今生実南天／森澄雄、雪女溶けて光の蜜となり／真鍋呉夫、滝となる前のしづけさ藤映す／鷲谷七菜子、曼殊沙華終焉知られざるはよし／津田清子、稲妻や故人ふと見えふと笑ふ／廣瀬直人、満月の屋根に子の歯を祀りけり／福田甲子雄、万巻の書に春暁の来たりけり／有馬朗人、月はいま地球の裏か磯遊び／大峯あきら、白鳥の胸たかだかと餌を乞わず／黛執、われもまたいのちを一人静かな／山上樹実雄、蝶われをばけものとみて過ぎゆけり／宗田安正、秋深し人の祈りの深ければ／稲畑汀子、明日嫁ぐ娘と月光に濡れゐたる／山田弘子、鬼やんま水平にゆく彼の国まで／鍵和田釉子、目覚めるといつも私が居て遺憾／池田澄子、栗咲くや澱のごとくに沖縄忌／矢島渚男、時とまりたるごと奈良の雪催／茨木和生、遠祖のひとりと会ひぬ稲の花／宇田喜代子、千年のさくらをめぐる鉦の音／黒田杏子、なめくじり夢見心地に溶けゆけり／宮坂静生、海苔掻くや岩に夕日のにじむまで／大串章、父よ母よ乗りませ茄子の裸馬／大木あまり、産むというおそろしきこと青山河／寺井谷子、うぐいすのケキョに力をつかふなり／辻桃子、囀に色あらば今瑠璃色に／西村和子、父ありし昨日の空や鳥帰る／橋本榮治、母埋めしあと秋天を深くせり／能村研三、敵手と食ふ血の厚肉と黒葡萄／能村登四郎、みちのくに星の缶詰工場あり／高野ムツオ、飛込の途中たましひ遅れけり／中原道夫、火の山の不思議虹の不思議／岩岡中正、なるやうにしかならねども春を待つ／三村純也、一念の凝りて海鼠や桶の底／奥坂まや、籐枕くぢらの夢を見るとせむ／正木ゆう子、手鏡の背中恐ろし夏の恋／対馬康子、しぐるるやほのほあげぬは火といはず／片山由美子、人の耳噛みて甘しよ山桜／小澤實、露の世の露と遊べる我らかな／長谷川櫂、怨霊も今日は青澄む隠岐の海／佐怒賀正美、春浅しやつぱり君は来なかつた／稲畑廣太郎、時雨くる亡き人の言葉とも思ふ／石田郷子、満開の桜に明日を疑わず／黛まどか、いきいきと死んでゐるなり水中花／櫂未知子、父の恋翡翠飛んで母の恋／仙田洋子、幹に黴色を違えて土に黴／岸本尚毅、石鹸玉小さきは急きてるるるると／小川軽舟、みづうみにすきとほりゆく花筏／中岡毅雄、まぼろしの鷹をしたがへ旅ひとり／林誠司、火炎土器よりつぎつぎと揚羽かな／堀本裕樹、ことごとく未踏なりけり冬の星／高柳克弘