マティーニに口づけを リンクスロマンス

橘かおる【著】

• 販売会社／発売会社: 幻冬舎コミックス/幻冬舎
• 発売年月日: 2012/10/31
• JAN: 9784344826397

商品レビュー

2020/03/29

不本意にも愛人としての生活を強いられている氷崎。その状況から逃れるために行動する姿を見ると優秀な人なのがよく分かるのに、現状が原因で「自分なんか」と思っている節があるのがもどかしい。それは大堂との関係が変わってからも同じで、そんなことないのに。と悲しくなった。氷崎の自己評価の低さは中々変わらないかもしれないけど、それを理解している大堂と一緒にいれば落ち込みすぎずいられるかな。と感じられた。

2012/11/01

2007年雑誌掲載分に書き下ろし「テネシーワルツで乾杯を」とショート「スイートアゲイン」が追加収録されています。
ものすごーく腕が上がった作家さんだと思います。この1冊の中でも、本編と書き下ろしではっきりと落差があります。文章もキャラも、大人に成長していて感慨深いです…

リーマンもの。勤め先の社長である芝浦に復讐しようと企てている玲司。というのも芝浦に嵌められて弱みを握られ、2年間も彼の愛人として身体の関係を強要されているからなのです。
玲司は、芝浦によって会社も家も奪われた大堂に近づき、彼を味方に引き入れて仕返しを成し遂げようとするのですが。

ツッコミどころ満載でした。ていうか、玲司が実は天然さんなんじゃないかと疑ってしまいました。
どう見ても可愛いし美人だしおいしそうです。玲司には伝わっていなかったけど、芝浦は完璧に惚れていましたよね…でも嫌われてしまい、独占欲丸出しになってしまったに違いない。芝浦が無体なことをすると腹を立てていましたが、それは自分の好みではない芝浦を邪険にしてしまったせいじゃないかと。だって大堂には迫られても、ただ困っていただけのようだったし。ツンツンしているのも、恋愛に疎いからという気がします。
芝浦があわれ。彼の心理描写がないので、そこも残念。

なので復讐とか仕返しとかがメインだと思って読むと、ちょっと肩透かしくらいます。玲司がもうちょっと芝浦の扱いを上手くできていたら、こんなに辛くならなかったのでは？と思えてしまうので。

書き下ろしの方が、玲司の気持ちを細やかに描いていて引き込まれました。玲司が仕事を辞めて家にいることになり、大堂はますます仕事が順調で忙しくなって、二人の生活のすれ違いが頻繁になってしまう後日談です。玲司は大堂の気持ちが離れたんじゃないかとか、好きな人ができたんじゃないかと疑心暗鬼になって一人悩みます。意地っ張りで強がるくせにぐるぐるしてしまうんですよね。
やっぱり、恋愛下手な玲司です。

この手のリーマンものはやたら多くて、競争率も高いし読者もシビアだと思うので、かなりのクオリティが必要。2007年には良作でも今ではちょっと平凡だったりします…
スイートで胸キュンないつもの良さが、いまひとつ生かされていなかったかな。