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大統領閣下 グアテマラ伝説集 ラテンアメリカの文学2
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 集英社 |
発売年月日 | 1984/11/01 |
JAN | 9784081260027 |
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大統領閣下 グアテマラ伝説集
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商品レビュー
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作者はグアテマラ人。中南米二人目のノーベル文学賞受賞者で南米文学を世界に認識させた「魔術的レアリズム」の先駆者。 現実の中に浮かぶ白昼夢、ふと目前に現れる精霊や神々、音や言葉の呪術的繰返しが、まぎれもない現実でありながら渾沌とした世界を創り上げる。 ※※※ネタバレしています。※...
作者はグアテマラ人。中南米二人目のノーベル文学賞受賞者で南米文学を世界に認識させた「魔術的レアリズム」の先駆者。 現実の中に浮かぶ白昼夢、ふと目前に現れる精霊や神々、音や言葉の呪術的繰返しが、まぎれもない現実でありながら渾沌とした世界を創り上げる。 ※※※ネタバレしています。※※※ 中南米のある国では大統領が独裁者として君臨している。 "魔王のように美しくまた悪辣"と形容される大統領の腹心カラ・デ・アンヘルは、政治的工作から大佐を亡命させ、その娘カミラを知る。親戚から捨てられたカミラへの憐憫は愛情に変わり二人は結ばれる。 愛を知ったカラは支配者から被支配者へ、飼いならされた犬から一個の人間へ代わる。 カラの態度に変節を疑った大統領は彼を投獄する。 長く陰惨な地下牢で、カラは老いさらばえいくつもの病気を併発し、衰え盲しい、彼自身でも彼の遺体でもなくなりそれでも生きたが、カミラが大統領の愛人になったという偽の情報で頓死する。 カミラは田舎で息子を産む。国では大統領の圧制が続く。 === 原語では、韻を踏んだり繰り返したりリズムも良さそうですが、翻訳だと翻訳者さんの苦労が見えます^^; 〈点せ、明礬(みょうばん)の明かりを、明礬石の魔王を!光から陰へ、陰から光へとせわしなく重なり合いながら、祈りを誘う鐘のつぶやきが耳鳴りのように続いていた。点せ、明礬の明かりを、明礬石の魔王よ、この穢れたるものの上を!明礬石の魔王よ!点せ、点せ、明礬の明かり…、明礬…、点せ…、明礬の明かり…、点せ…明礬…! 乞食たちは人影もなくひっそりした街中に背を向け、だだっ広い通りをプラザ・デ・アルマスの方に向かいながら、大聖堂の凍えるような陰に隠れて、市場の食堂を這いずり回っていた。P5〉 独裁の大統領は無個性で、だからこそ生きた個人というよりもは現実を覆う暗い影のような存在に感じます。 ふと目の前や心の隅を通る幻影が書き現され、凄惨さの中に確かに愛や自我があります。地下牢でカラがカミラを想う描写はあんな陰惨なのに、いや陰惨だからこそ、美しくて美しくて。 〈二時間の光と二十二時間の真っ暗闇、スープの入った缶と糞尿の缶、夏の渇きと冬の洪水、それが地下牢の生活の全てだった。だんだん体が軽くなって行くな。このまま行けば、風が、帰りを待っているカミラのところまで運んでくれるだろう。カミラは今頃待ちわびて目に見えないほど小さくなっているかもしれないな。そういう自分の手だってそんなに細いじゃないか!構やしないさ!彼女に乳房で温めてもらえばすぐに肉が付く…汚れているだって?彼女が涙で綺麗に洗ってくれるよ…目は緑色だったかな?P235〉
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主人公ともいえる大統領の腹心の登場シーンで何度も挿入される「魔王(サタン)のように美しく、…」というフレーズが印象に残る。 私はキリスト教徒ではないのでピンとこないが、「魔王」と「美しい」をつなぎ合わせることは、化学の授業で「この薬品同士は絶対に混ぜないこと!」と言われたにもかか...
主人公ともいえる大統領の腹心の登場シーンで何度も挿入される「魔王(サタン)のように美しく、…」というフレーズが印象に残る。 私はキリスト教徒ではないのでピンとこないが、「魔王」と「美しい」をつなぎ合わせることは、化学の授業で「この薬品同士は絶対に混ぜないこと!」と言われたにもかかわらず混ぜ合わせ、教室を吹っ飛ばしてしまうような、危険であり魅惑的な第一印象を、作者の出身地グアテマラや欧米の多くの国の読者は感じたのではないか。 また、この小説では視覚だけでなく、聴覚、嗅覚、触覚への刺激も大きい。 視覚では、中米の独特の色彩感覚によって、私はケツァールの翼の色をイメージした。 また聴覚、嗅覚では、拷問によるうめき声や吐瀉物のすえたにおいなどの、とても日本の小説では見られない描写が独特な手法で組み込まれている。 中米訪問経験のない私でも、光や熱やにおいや音、そして郷愁(嫌悪も)を五感全体で受けることができた。 一方、今の日本の実態からこの物語に対するとき、日本の現実からは遠く離れている、と言い切れるか? 改めて北朝鮮を挙げるまでもなく、ほんの60数年ほど前まではわが国でも不当逮捕や処刑が統治者の名においてなされていたのは事実。 また現代の日本で天下り官僚や、公金感覚に欠けた政治家がのさばる様子は、小説中のワイロの横行や、太鼓持ちの役人がノシ上がる様と全く変わらない。 作中の登場人物が流す涙と、現代の我々が不条理に直面して流すにがい涙とそれほど違いがあるとは思えない。この小説の主題は、対岸の火事ではない。 (2007/5/9)
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大統領ばなし的には、ガルシア=マルケスの「族長の秋」よりも分かりやすく、面白いかも。終わり方がちょっとアレですが、カミラが母親としてしっかり子供を育てていったようなので、そこだけが救いかなあ。女はやはり強いのか。
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