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キム・チュイ【著】, 山出裕子【訳】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 彩流社
発売年月日 2012/09/24
JAN 9784779118227

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2018/12/24

ノーベル文学賞に代わる賞として創設されたニュー・アカデミー文学賞のノミネート作。 ベトナムからボートピープルとしてカナダに渡った女性の物語。著者の自伝的作品である。 記憶の断章のような、いくつもの短い物語が紡ぐ彼女の人生は、決して平穏ではないのだが、流れるような淡々とした筆致が...

ノーベル文学賞に代わる賞として創設されたニュー・アカデミー文学賞のノミネート作。 ベトナムからボートピープルとしてカナダに渡った女性の物語。著者の自伝的作品である。 記憶の断章のような、いくつもの短い物語が紡ぐ彼女の人生は、決して平穏ではないのだが、流れるような淡々とした筆致が不思議な静謐さを生んでいる。 物語は行きつ戻りつし、サイゴンでの裕福な生活、共産主義体制下での抑圧、マレーシア難民キャンプの惨状、そして新天地カナダでの新生活、自閉症を抱えた息子を語る。 主人公はグエン・アン・ティン。母の名も同じだが、ティンの母音iにつく発音記号が異なり、母の名は「平和な外観」、娘の名は「平和な内面」を意味した。だが、ベトナムを出るときに、その小さなアクセント記号は無意味となった。小さいけれども大きなものを彼女は捨てることになる。 ティンが生まれたのは申年(=1968年)である。サイゴン陥落が1975年。モントリオールに着いたのは10歳の頃だろうか。 少女は一度、言葉を失い、フランス語を習得することで、再び言葉を得る。 難民としてモントリオールにたどり着くまでには、数々の困難があった。 だが一方で、ベトナムの貧困生活から抜けられなかったもの、ボートピープルにすらなれずに川に沈んだものもいたことを思えば、ティンが新天地を得たのは「幸運」であったのだろう。 ティンを最初に迎えたカナダ人の先生は豊満で優しい女性だった。温かな腕に抱かれるような安心感の中、少女は自らの新たな人生を歩み始める。 大きな流れに流されてはいても、少女はその中で溺れはしない。しなやかに生き抜き、自らに宿る民族の記憶をつなぐ。 表題のRuはフランス語では「小川」「流れ」を意味し、ベトナム語では「子守唄」「揺籃」を意味する。 残酷さを秘めるおとぎ話のように、その語りはときに厳しいエピソードに触れる。民族の歴史であり、家族の記憶であるそれらは、次世代に語り残しておかなければならないものであるから。 小川のせせらぎとともに、低い声の母の子守唄を聞く。 ティンが手放してしまったベトナム語の面影はやはりそこに宿っているように思われる。 流動化する社会の中で、複雑な言語バックグラウンドをもつ作家はますます増えていくことだろう。そうした作家たちが生むであろう世界は、さらに新しい広がりを見せてくれるのではないかと期待している。

Posted by ブクログ

2018/12/17

ベトナムで生まれボートピープルとしてカナダへと移った少女。作者の自伝的小説。 記憶の断片を繋ぎ合わせるように、短い文章がページごとに繰り広げられます。時間も場所も人物も順番にきれいに並ばずにバラバラに迫ってきます。ただ記憶の流れから漂流した断片を拾い集めるかのように連なっている...

ベトナムで生まれボートピープルとしてカナダへと移った少女。作者の自伝的小説。 記憶の断片を繋ぎ合わせるように、短い文章がページごとに繰り広げられます。時間も場所も人物も順番にきれいに並ばずにバラバラに迫ってきます。ただ記憶の流れから漂流した断片を拾い集めるかのように連なっているのです。 しかもその記憶の断片は、それぞれが強烈な色を強烈な匂いを強烈な音を伴って刺激してくるのです。読み手はそのフラッシュバックのような記憶の洪水によって、ベトナム戦争後の混乱、逃避行の緊張、難民キャンプでの生活、カナダでの新たな日々、親戚のことや友人のことを語り手とともに追体験するのです。 時間も場所も人物も何もかもバラバラになっているからこそ、読み手の心に己の記憶の如く強烈に刻み込まれるのです。だからこそ物語として距離を置いて眺めるのではなく、まるで自分の体験のように感じるのです。 原題の「Ru」はフランス語では「小川」を、そしてベトナム語では「子守唄」あるいは「揺籠」を意味するのだそうです。記憶の流れる小川が子守唄ともなる。それは現在の主人公(そしてそれは作者にも通じるでしょう)の心情を表わすのでしょうか。現在も様々な出来事が起こり、やはり記憶となり流れていくのでしょう。それでも行く行くは子守唄となるのならば安心して進みましょう。

Posted by ブクログ

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