中国の地域経済 空間構造と相互依存

岡本信広【著】

• 販売会社／発売会社: 日本評論社
• 発売年月日: 2012/09/24
• JAN: 9784535556904

商品レビュー

2013/01/07

本書は中国経済を専門とする著者による中国の地域経済についての研究書である。本書ではまず，海外－中核－周辺という概念を用いて地域を記述し，それらの相互作用を産業連関モデルによって定量的に分析している。

広大な地域からなる中国では経済活動の厚みが地域によって異なる。本書によれば，中国の地域経済研究の基本は，地域ごとの経済発展の格差を計測し，その後に格差を解明するという手順で行われてきた。分析手法には定性的なものもあれば定量的なものもある。本書の分析は大きくふたつに分けられる。

第一に，中国国内の地域を中核と周辺にわけた上でそれらの地域間の相互関係を分析している。経済発展の度合いはその地域の環境や人によって異なる。はじめにある地域（中核）で経済が発展し，その後に経済活動が他の地域（周辺）へと伝わっていく。それと同時に，周辺の経済活動も中核に影響を与える。このような中核と周辺の間に存在する空間的相互作用は浸透効果と分極効果にわけられる（148－149頁）。本書は，中国の地域間産業連関データを用いて，中核の経済発展が周辺の経済との格差を広げる一方，それを上回って周辺の経済発展に寄与することを示している（173-174頁）。

第二に，2008年に発生した世界金融危機が中国の地域経済に与えた影響や国内での経済統合が中国経済に与える影響を分析することで中国と海外との相互依存関係を明らかにしている。海外は中核には大きな影響を持つものの，周辺への影響が限定的であることが示されている（第6章）。海外からの影響がネガティブなものである場合に，その悪影響が周辺に伝わりにくいことで周辺がその経済的重要性を相対的に高める，という分析は非常に興味深い。

このように，研究対象として中国経済について関心を持つひとだけでなく，中国ビジネスに携わるひとにとっても本書はおすすめできる。