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中世幻想世界への招待 河出文庫
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商品詳細
内容紹介 | 「狼男伝説」朝日新聞社 1992年刊の改題 |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2012/09/06 |
JAN | 9784309411729 |
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中世幻想世界への招待
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中世ヨーロッパにおいて、人びとのなかに息づいていた「狼男」「妖精」「若返りの泉」などのイメージはどのような社会の欲求から生まれ、根付いたのか。また、当時絶対的な力を奮っていたキリスト教会が民衆の想像力をいかに誘導してきたのか、「聖体の奇蹟」や「煉獄」のイメージが誕生した経緯を通じ...
中世ヨーロッパにおいて、人びとのなかに息づいていた「狼男」「妖精」「若返りの泉」などのイメージはどのような社会の欲求から生まれ、根付いたのか。また、当時絶対的な力を奮っていたキリスト教会が民衆の想像力をいかに誘導してきたのか、「聖体の奇蹟」や「煉獄」のイメージが誕生した経緯を通じて考える。 タイトルからはファンタジーのネタ元を紹介するような本に思えるが、そうではなく、中世の人びとが共有していた空想的なイメージが当時の社会構造とどのように関わっていたのかという視点に常に帰っていく評論である。 第一章で扱われるのは狼男。機械宇宙論によって理性に馴致されるべきものとみなされた〈自然〉=本能を、人間のなかからも切り離そうとする(けど出来ない)という葛藤が狼男伝説を形成した、という視点が面白かった。この構造は産業革命後に二重人格やドッペルゲンガーのテーマが文学界で流行ったこととも重ねることができると思う。 第二章「聖体の奇蹟」と第三章「不思議の泉」の後半は共通テーマと言ってよく、最初はあくまでメタファーだった聖体が「キリストの体そのもの」と考えられるようになっていった過程を追う。ここで図示される「聖体の挽臼」や「神秘のブドウ圧搾機」のことは、前に小池寿子『内臓の発見』で初めて知り、そのグロテスクさに驚いたのをおぼえている。 個人的に、カトリックの教義のなかでも聖体の実体変化説とマリアの無原罪受胎説は異質な飲み込みづらさがある。大澤真幸は『〈世界史〉の哲学 中世篇』で、聖体についてはっきり「カニバリズム」と言っていたように思う。面白いのは、嬰児姿のキリストの体を食べ、十字架にかかったキリストの脇腹から血を啜る人びとのイメージは今日の目から見ると黒ミサそのものだが、これはカトリックの〈正統〉だったということだ。 第四章「他者の幻像」では、反ユダヤ主義が差別を正当化する構造を解いていく。煮詰まった共同体にユダヤ、イスラム、果ては病人といった〈部外者〉を作り出し、うっぷんを晴らしをするナショナリズム。その矛先はいずれ内部へも向き、魔女狩りを激化させた。 第五章「彼方への旅」はジャック・ルゴフの研究を元に、天国と地獄の中間地点である煉獄のイメージが生まれてきた背景を見ていく。煉獄の誕生によって、民衆の死生観が「現世と来世は生者と死者の人間関係で社会的につながっている」という認識に変化したというのが面白かった。教会は現世から働きかけることで死後の罪を浄化できると説き、免罪符などを流布させる素地を作り上げていったのだ。 中世という時代は〈文明〉対〈自然〉、〈精神〉対〈肉体〉、〈自己〉対〈他者〉の相剋関係において、〈文明・精神・自己〉が〈自然・肉体・他者〉を征服することを良しとし、正当化・合理化していった時代だといえるだろう。そしてキリスト教的な合理主義が完成すると同時に、西洋は〈制服すべき他者〉を求めて大航海時代に突入する。そのとき新大陸征服のために駆使された西洋的な整合性の考え方は、中世の一見幻想的なイメージのなかにあったのだとわかる一冊だった。
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2016/1/17 もう少しファンタジーな内容なのかと思っていたら、キリスト教の世界に近い傾向だった。いまいち面白くなく、かなり飛ばし読みをしてしまった。
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「狼男伝説」「聖体の泉」等、伝説や脅威現象から見る ヨーロッパ中世の人々を支配していた空気感や、それら伝説や 脅威現象をどんよくに取り込んで利用したキリスト教世界の したたかさなどを考察しており、非常に面白かった。 荒唐無稽な話も細かく紐解いて行くと、 その時代に必要なものであ...
「狼男伝説」「聖体の泉」等、伝説や脅威現象から見る ヨーロッパ中世の人々を支配していた空気感や、それら伝説や 脅威現象をどんよくに取り込んで利用したキリスト教世界の したたかさなどを考察しており、非常に面白かった。 荒唐無稽な話も細かく紐解いて行くと、 その時代に必要なものであったり、 作為的なものであったりして無下にできないなと。 またそれらを紐解いていく作業は面白いだろうなと 羨ましくも感じた。
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