あきらめない街、石巻 その力に俺たちはなる 石巻工高野球部の奇跡

佐々木亨【著】

• 販売会社／発売会社: ベースボール・マガジン社
• 発売年月日: 2012/08/01
• JAN: 9784583104683

商品レビュー

2012/12/04

チェック項目4箇所。「体育館には5人の認知症の人がいてね。その5人を昼間に一箇所に集めたんです。認知症の人って、会話が好き。好きだけど、話をする方も聞く方も何を話しているかわからない。それでも、話にうなずき、ずっとしゃべっている。昼間ずっと話しているから夜は疲れて寝てしまう。夜の徘徊はなくなりましたね。」。「遺体の中には、自分の子供と同じ年ぐらいの子供もいましたしね。顔を拭いてあげているんでしょうけど、泥まみれの中で毛布にくるまっていて。当時のことは夢にも出ました。震災当初は、1日1日が長かった。仕事に集中していれば、普通は日が経つのは早く感じるものなんでしょうけど、あの時は仕事をやればやるほど、1日が長く感じました。」。あらゆる条件を加味して出場校が決まる「選抜」大会において、地域性、つまり「被災地」という特異性を考えれば石巻工の甲子園初出場は規定路線のように思われた。「動けば変わる」・・・動いていれば、絶対に何かが変わる、止まっているから何も変わらない、「動く」ことで未来は開ける、松本はそう信じる。

2012/08/04

東日本大震災から丸１年後の第84回選抜高校野球大会に21世紀枠で甲子園出場を果たした、宮城県立石巻工業高校のドキュメント。

震災当日の状況や避難所での様子など、監督以下スタッフ、選手達の壮絶な体験が詳細に綴られており、言葉を失うことも。

地震や津波そのものに「プラス」の側面などあろうはずがない。
しかし、大規模災害に遭ってしまった事をきっかけに、「これまでの生活は『当たり前』ではなかった」「自分達は多くの人に支えられている」と強く実感し、それを今後の人生の糧としていくのだ、と彼等は語る。
マイナスの中からプラスを見つけ出す力。絶望的状況の中にあって笑顔を失わない、失ったとしても再び思い出す力。これが人間の底力なのだ。

　「あきらめない街、石巻!!　その力に俺たちはなる!!」

2011年、夏の県大会で初めて掲げられた横断幕。
グラウンドから瓦礫を撤去し、手作業でヘドロを取り除いた選手達。
その「あきらめの悪い」姿に勇気付けられた街の人々も多くいたという。

震災直後のセンバツに出場した東北高校の時もそうだったが、被災地の子供達が被災地の外に向けて「元気です！」と笑顔で手を振ってくれるだけで、日本の多くの大人は救われる思いがする。