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王朝国家政務の研究
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 吉川弘文館 |
発売年月日 | 2012/06/23 |
JAN | 9784642024976 |
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王朝国家政務の研究
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著者は広島の坂本賞三門下で王朝国家体制論支持派の1人。読み始めて、あれ!?これって自分が学生の頃から研究史として進展して無くね?(笑)と思っていたら、初出一覧を見ると、過去数十年分の論文集なわけね・・・。 冒頭の著者の問題関心によると、平安時代の貴族は政治への関心が希薄になり儀式...
著者は広島の坂本賞三門下で王朝国家体制論支持派の1人。読み始めて、あれ!?これって自分が学生の頃から研究史として進展して無くね?(笑)と思っていたら、初出一覧を見ると、過去数十年分の論文集なわけね・・・。 冒頭の著者の問題関心によると、平安時代の貴族は政治への関心が希薄になり儀式化した政務をこなすのみだったという誤ったイメージの払拭にあるということだが、10世紀以降の税収取をはじめとする国司への委任、そして本書の論述の基本となっているいわゆる「後期王朝国家体制」下においての官司請負の進展(官務家の成立など)や、外記政や陣定における先例重視と諸国申請雑事の国解慣行に対するマニュアル化・儀式化、弁の経験がない公卿の陣定出席の免除(?)など、逆に本書を読んでいると一部貴族や官人以外は政治へのかかわりがとても薄くなっているのでは?という印象の方が強くなった。(笑) 橋本義彦のいう「政」から「定」「奏」へという政務決済ルートの変更という展望に対して、外記政における「庁申文」「南所申文」「陣申文」の具体相の分析から、「申文」から「陣定」や「奏事」へのルートの定着という論述はなかなか興味深かった。より欲をいえば衰退するに至った「政」自身の国政への位置付けの変化を、反面からも論理化してほしいところである。また、王朝国家政務の討議機関(いわば閣議)となった陣定に提出される諸国申請雑事の儀式化と申請事項の一つである一国対象の荘園整理の話もなかなか面白かった。一国対象の荘園整理申請は国司の初任検注に法的根拠を与えるためというが、院が与える免除事項との厳しい対立事件もあったのが、時代を下って江戸時代まで申請が儀式として続くなど(もちろん実質は何もない)、いろいろと興味は尽きない。 11世紀半ば以降に始まる王朝国家の諸国直接支配方式への転換により、陣定が権門間所領争いなどの調整・調停機関としても機能することになったということだが、陣定が実務機関である弁官局を従えることで、実際を取り仕切る官務家小槻氏を成立させ、また下達文書として官宣旨が重視されていくという過程は、自分が学生時代に関心をもった分野でもあり、とても懐かしかった。(笑)佐藤進一の『古文書学入門』の影響もあって(!)、官宣旨は太政官符の簡易版でありその成立は請印政が面倒だったからと思っていたが(笑)、陣定-弁官局系統の文書という位置付けは興味深いところである。太政官符、官宣旨、宣旨の違いはまだまだ自分としても理解不足で、こうした実際上の使い分けを明らかにする研究に今後も学ばさせて欲しい。 官務家成立前史として左大臣藤原道長が自らの家司で周囲から非適任とみなされていた但波奉親を無理やり大夫史に任命させた件と対比して、後年、息子頼通が父道長に勘当されながらも能人であることをもって、惟宗允亮を明法博士に小槻貞行を大夫史に任命させ他貴族から支持を得た話は、両者の政治姿勢の違いと国政の転換点を思わせ面白い。そして官務家世襲の具体内容として、宣旨発給・前例勘申・文殿管理のそれぞれの具体事例の紹介は、小槻氏の権能範囲を確認できるとともに、公卿層が頼りとし世襲を認めざるを得ないほど政治実務を掌握した小槻氏のしたたかさも垣間見える。実務官人層の政治実務掌握に関連して、算博士の三善為康を例にとり、中央官人である博士の家が地方出身者へ弟子入りを許し、さらに家業さえ継がせるほど家の職能を後代に伝えることに執心したという事例では、為康が越中国射水群出身だとわかり、俄然、親しみも湧いた。(笑) 逆に局務家中原氏・清原氏を論じた部分では、著者の割と近年の論文群であるが、少し冗長で本書テーマの論点からすると少しぼやけた感じがあり(軒廊御卜の招集を巡る議論や太政大臣藤原伊通の生き様の紹介は、単体としては面白い部分もあったが)、結局、職掌は異なるものの同じ太政官の事務局であるにもかかわらず、弁官局が重宝され、外記局が後に見直される経緯についてはわからないままだったので、より正面から取り組んで欲しいところである。 実は読書中はもう少し辛口な「レビュー」にしようかと思っていたのですが(笑)、「あとがき」で、大学頭大江成衡の「文預り」としての心意気に仮託して自身と本書を擬しているという文章を読んでぐっときたので、まあ備忘録としてはこんなところかな。(笑)
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