豊かさのなかの自殺

クリスチャンボードロ, ロジェエスタブレ【著】, 山下雅之, 都村聞人, 石井素子【訳】

• 販売会社／発売会社: 藤原書店
• 発売年月日: 2012/06/25
• JAN: 9784894348608

商品レビュー

2023/11/25

自殺と相関がある因子は何か。
統計的アプローチで自殺を解明する社会科学の論文。社会が豊かになれば、自殺は減る？

自殺の動機とは。中国においては、社会的不正義に対する復讐の方法として。アフリカでは、個人がリネージ(血統)のネットワークに適応することが困難である場合に。インドでは主にカースト制度や結婚相手の選択をめぐった家族問題。イスラム教振興するマレー人は神が定めた秩序への服従の拒否として。このように、文化によって異なる自殺の動機だが、インド人よりも中国人の方が自殺者が多く、マレー人の自殺はゼロに近い。

自殺率は豊かさに従って上昇していく。しかし、その他の要素、都市や競争心、個人主義の台頭や人口の高齢化も関係している。最も高い相関を示すのは教育水準、識字率である。

飲酒量が減れば自殺も減る。飲酒量が増えれば、自殺が増える。女性たちは、社会的職業的レベルが上がるほど独身者の割合が増えるが、男性たちは地位が高いほど独身者は減少する。両性ともすべての年齢で、自殺率は結婚している人より独身の方が高い。

看護婦の自殺率は高く、経営者の自殺率は労働作業員よりも高い。ブルーカラーでは、タクシー運転手が男性の平均より4倍多いが、トラック運転手は平均を下回る。しかし、最も高い自殺率は、職業を失った男性である。

更に掘り下げる。豊かになると、出生率は低下。離婚の増加、高齢化、宗教的実践の減少、社会がより豊かになることで、このように解放された因子が自殺を増加させる要因だ。伝統的な家族の紐帯を弱めるようなあらゆる変化が自殺を導く。子供の面倒を見ることが自殺から身を守る。鮮やかな結論。

2013/06/25

福祉国家のモデルとされる北欧諸国の孤独感と、PIGSの一角に数えられるイタリアの幸福感。ひどく貧しい国では総じて自殺率が低く、豊かな国では貧困層の自殺率が高い。などなど、統計を多用して様々な神話を破ってゆく書。

2013/04/12

比較的最近までの各国の自殺に関するデータをこれだけまとめて提示してくれる本書の努力は有難い
ただし、豊富なデータとはいえ、その解析は拙く、しばしばその結論に頷けない事もあった