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雷の波涛 満州国演義 7
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2012/06/22 |
JAN | 9784104623082 |
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3.7
13件のお客様レビュー
満州国演義シリーズ第7作。ドイツの電撃的侵攻によってフランスは降伏し、ドゴールの対独ゲリラ戦に入った。イギリスではチャーチルが首相に就任。インドではチャンドラ・ボースなどが独立を画策。この時点で万一、独ソ戦が勃発した場合、関東軍がどう動くかが問題になってくる。関東軍がソ満国境を超...
満州国演義シリーズ第7作。ドイツの電撃的侵攻によってフランスは降伏し、ドゴールの対独ゲリラ戦に入った。イギリスではチャーチルが首相に就任。インドではチャンドラ・ボースなどが独立を画策。この時点で万一、独ソ戦が勃発した場合、関東軍がどう動くかが問題になってくる。関東軍がソ満国境を超えるとなると、極東ソ連軍はそこに釘付けになるからだ。内地では米内光政政権が潰れ、近衛文麿再組閣。近衛の政治翼賛化により、大政翼賛会というもとは軍部に対抗させるために作ったものが軍部に簒奪されるように。日本は三国同盟を伊、独と締結。この三国同盟がアメリカに対する抑止力となることを期待したが、同盟締結でルーズベルトとハルの態度は一段と硬化。ハルノートを突き付けられた挙句ついに大東亜戦争に突入し、真珠湾を奇襲するのであった。 詳細→ http://takeshi3017.chu.jp/file9/naiyou10145.html
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ついに太平洋戦争が勃発する七巻。 対米戦争回避に向けた近衛内閣の最後の努力に記述の多くが割かれているものの、それも虚しく真珠湾攻撃とマレー侵攻を皮切りに戦争が始まる。 読んでいて驚かされるのは、当時の軍部や政府の上位の識者達は"対米戦争は無理"という認識では...
ついに太平洋戦争が勃発する七巻。 対米戦争回避に向けた近衛内閣の最後の努力に記述の多くが割かれているものの、それも虚しく真珠湾攻撃とマレー侵攻を皮切りに戦争が始まる。 読んでいて驚かされるのは、当時の軍部や政府の上位の識者達は"対米戦争は無理"という認識では一致していた点。 にも関わらず、お互いに足を引っ張り合い、泥沼に突き進んでいく。 敗戦を半ば確信しながらも、予算削減を恐れて対米戦回避を口に出来ない陸海軍の高官達もそうだし、日独伊三国同盟にソ連まで加えることができたらアメリカも戦争しようとは思わない筈、という机上論でしかない計算をしていた外相の松岡洋右にしてもそう。 そういう状態で、対米戦争を煽るメディアに熱狂された国民感情を押さえられる筈もなく、また景気回復のために戦争を望んでいたルーズベルトに戦争回避を決意させられる筈もなく、結局はヨーロッパで早くも停滞しつつあったナチスドイツと心中するような形で、太平洋戦争に至ってしまう。 上記のような対米戦前夜におけるゴタゴタやマレー作戦、シンガポールでの華僑虐殺事件なんかも印象的であったけれども、本巻にて何よりも目を引くのは、この時期の満州国に関する二つの描写だ。 一つ目は大観園という、ハルビンに築かれた阿片と売春の歓楽街についてで、阿片浸けの廃人達が汚物にまみれ、生きるでも死ぬでもなく蠢いている様子が書かれている。地獄絵図のような場所だったのだろう。 三巻にて満州国経営の柱として開始された国家主導の阿片商売が、この地獄へと繋がっていったのだと思うと凄まじい。 もう一つは開拓女塾という、日本から満州国に移民してきた開拓民村の男達に花嫁としてあてがわれた東北出身の若い娘達の話だ。 こちらは、一巻にて話が出ていた東北の貧しい農村における娘の身売りとも通ずる話だ。 彼女達には他に生きていく選択肢などない。誰も頼れる者もいない満州の地に連れられて、汚ならしい姿をした得体の知れない開拓民達と強制的に結婚させられていく。 これらのおぞましい光景が"五族協和の理想郷"の成れの果てであったというのは、何というかあまりにも悪いジョークがすぎるような気がする。
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ノモンハン以降ソ満国境は睨み合いとなり、ドイツ帝国の情勢を待たずに、この国は日米開戦という有史以来最も愚かな選択を行ってゆく。開戦当時は無敗が続く中で国民は異様な戦勝のムードに浮き足立つ。軍に統制された新聞は国民に夢のようなことしか書かない。 満州事変はまだしも夢や理想に支...
ノモンハン以降ソ満国境は睨み合いとなり、ドイツ帝国の情勢を待たずに、この国は日米開戦という有史以来最も愚かな選択を行ってゆく。開戦当時は無敗が続く中で国民は異様な戦勝のムードに浮き足立つ。軍に統制された新聞は国民に夢のようなことしか書かない。 満州事変はまだしも夢や理想に支持されたものがあったろう。しかし、その後蒋介石率いる国民革命軍は持ちこたえ、中国共産軍・関東軍と勢力のトライアングルの中で膠着してゆく。日米開戦を前提にすれば兵站の不足が想定されるゆえ、石油を求めての南シナ海沿岸の国々への出兵となる。英仏からの独立運動支援というスローガンを笠にきた領土侵犯以外の何ものでもない戦争行為を、日本は世界を敵にしてまで推し進めてゆく。 陸・海軍間の争い、政党の崩壊、大本営の混沌。すべての要素が日本を率いるべきでない者たちの選択に委ねられ、破滅の方向を目指してゆく。そんな動きの中で、敷島四兄弟はさらに翻弄されてゆくかに見える。太郎は外務省高官として、次郎は戦争請負人のような柳絮の如き立場で、三郎は憲兵隊大尉として、四郎は満映脚本部職員として、いずれも祖国を遠くにしながら、歴史という残酷な御者の立つ四輪馬車に乗せられて搬ばれてゆく。 真珠湾攻撃によって日米は開戦の火蓋を切るが、日本が宣戦布告前に攻撃を開始した、あるいはそのように米国側が仕組んだこと、そして空母だけが見事に真珠湾から避難していたことなどは、他の書物でも頻出している。これによって日本は卑怯な先手を打った国として国際的に避難されたばかりか、太平洋戦争での制空権を失ってゆく。すべては開戦時からアメリカ側によって書かれたシナリオ通りの展開となってゆく。 国を導くはずの権力者たちがお互いに疑心暗鬼となってゆき、思わぬ方向にすべてが向かってゆく戦争とう力の狂気を数多くの書物が描いて来ているとは思うが、船戸世界では、わずか4人の主人公らの眼を持ってこれら巨大な誤てる国家の動きを描いてゆく。どこにも勧善懲悪は存在せず、人間が生きてゆくことが罪であるかのように。聖書のように。預言書のように。 この先は読みたくないな、と思いつつも文章の力によって読まされてしまう船戸的亡国論。何の結論も出ていない本書ではあるが、この物語の辿り着く果ては見たくなくても否応なく開示される地獄絵図になるだろう。そんな予感ばかりが強まってくる本巻である。刮目して対峙すべし、か。
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