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刃物の見方
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 慶友社 |
発売年月日 | 2012/05/20 |
JAN | 9784874490693 |
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商品レビュー
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岩崎航介さんの、エッセイ的な文章から、雑誌寄稿文やら、講演会録やらの寄せ集め。 日本刀への思い入れがハンパないですが、酔った親戚のおっちゃんの講釈のような雰囲気です。 岩崎氏は、昭和初期に東京帝国大学文学部国史学科で日本刀を勉強し、文学部卒業後、もう一回帝大の工学部冶金学...
岩崎航介さんの、エッセイ的な文章から、雑誌寄稿文やら、講演会録やらの寄せ集め。 日本刀への思い入れがハンパないですが、酔った親戚のおっちゃんの講釈のような雰囲気です。 岩崎氏は、昭和初期に東京帝国大学文学部国史学科で日本刀を勉強し、文学部卒業後、もう一回帝大の工学部冶金学科に試験を受けて入り、日本刀研究室で金属工学の視点から日本刀の研究をした人です。 学生時代に全国を巡り歩き、各地の刀匠さんから「秘伝書」を写させてもらい、時には弟子入りして作り方を直接学ぶという、体を張った日本刀研究者。……研究者というより日本刀オタクに見えるのは何でなんだろう。論文とか書籍が少ないからかな。 この人の人生の目的は、目的は、日本刀の製造ノウハウを知り、よく切れる金物製品を開発することでした。 そういう意味で、美術品としての日本刀を鑑賞、鑑定、保護する方々とは視点が違います。 ……何というか、『研究肌の町工場のおっちゃん』に『日本刀マニア』を足して割らない感じがひしひしとします。こういう人好きです。 結果、玉鋼でカミソリを開発し、売って生計を立てていた様子。 そんな人の、人生の思い出話を集めた本。 刀匠さんから聞いたいろんな話とか、金物の開発の苦労、問屋さんが金物を売るときの話とか、切れ味の話なんか、ちょこちょこ興味深かったです。金属顕微鏡で見た鋼の結晶写真なんかも、数が多くて楽しかったです。 鎌倉時代の仏像はノミやタガネもいい刃物だったっぽいとか、中国は三国史時代で既に鍛造してるとか、人によって「よく切れる」と感じるカミソリが違うとか、その辺の話が好き。
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<よく切れる刃物とはどういうものかに取り組んだ昭和の研究家> いささか古い原稿を元にした本である。 元々は、昭和30年代~40年代の講演や雑誌寄稿を中心にまとめられた著者の遺稿集として、昭和44年に発行された。要望を受けて2012年に復刻されている。 著者は新潟・三条の金物卸...
<よく切れる刃物とはどういうものかに取り組んだ昭和の研究家> いささか古い原稿を元にした本である。 元々は、昭和30年代~40年代の講演や雑誌寄稿を中心にまとめられた著者の遺稿集として、昭和44年に発行された。要望を受けて2012年に復刻されている。 著者は新潟・三条の金物卸業の家に生まれた。三条は古くから刃物で知られ、隣接する洋食器の燕と併せ、金物のメッカである。 第一次大戦の頃にはアジア・アフリカにも進出して、三条の刃物産業は非常に羽振りがよかった。ところが、大戦後、ドイツ、特にゾーリンゲンのナイフが巻き返しを図ってこれらの市場を席捲した。三条の刃物はすっかり衰退し、著者の家の家業も傾いた。意気消沈した父に代わり、当時19歳だった著者は発憤し、苦学の末、東京帝国大学で刀剣の研究に没頭、後に三条に戻り、家業の傍ら、刃物の研究を続けた。 全般として、著者が得た知識を、日本の刃物の技術の継承、また三条の発展に役立ててほしいという論調となっている。 刃物というものは、不純物が少ない方がよいものになるが、不純物が少ないほど、鍛えや焼き入れが難しいのだそうである。 日本刀の原料として優れているものとして、玉鋼(たまはがね)が知られる。産地は島根県安来地方。八岐大蛇の神話とも重なる地域であることが興味深い。原料の砂鉄が優れていることに加え、たたらと呼ばれる製法もまた、不純物を混入しにくい絶妙なものなのだそうだ。 刃物は硬くなければならず、粘りも必要で、そのうえ研ぎやすいことが要求される。硬さは炭素量と焼き入れで決まり、粘りは不純物と組織の密粗で決まり、研ぎやすさは不純物の量で決まる(不純物の種類や量によって、白紙・黄紙・青紙といった呼称がある)。 よい刃物を作るには、原料がよいことが一番である。 だが、刃物の切れ味を保つには、研ぎも重要である。著者が調べたところでは、切れが悪い、という場合、刃物自体の良し悪しのほか、存外、研ぎの上手下手が物をいうのだという。著者は正しい研ぎ方を顧客に教えてもいる。 研ぎが重要であることから、砥石の採掘場の視察も行っている。訪れているのは名倉砥の産地(愛知県)と本山砥の産地(京都府)。後者は北面の武士本間氏が持っていた山であったことから、本間山を縮めて本山になったのだそうである。 日本に古来から伝えられる刀工の技術は、昭和20~30年代、すでにかなり継承が困難なものになっている。よい物を作ろうとすれば採算が合わない。貧乏するのが目に見えているから弟子は取らないといいきる名人もいた。著者はこうした名人たちに聞き取りをし、秘伝についてもいくつか記録があるそうだ。 著者が得た知識からすると、大衆文学の中にはおかしな記述も多かった。あるとき、著者は吉川英治の『宮本武蔵』の中で刀剣に関して納得がいかない点を見つけてそれを指摘した。その縁で吉川とやり取りをするようになり、後に作中に著者をモデルとする人物が登場している。 おそらく、現代では金属工学の観点からも、「刃物の切れ味」に関して、より深く詳しく解明されており、そしてまた本書よりも体系的に記載されている本も多いのだろう。 だが、大正から昭和に掛けての時代の雰囲気を漂わせ、またその時代にも限られた機材で科学的に解明しようと研究に取り組んでいた人物がいたことを知らしめる点で、なかなか味わい深い本だと思う。 *なぜこの本を手に取ったかといえば、最近、真剣を間近に見る機会があったため。関孫六に連なる職人が打ったらしいという日本刀を眼前に見て、「ほぅほぅ、刀というものはすごいものだな」と何だか頗る感心したのだ。で、たまたま新聞広告で見かけた本書を借りてみた。 結果、本書を読んでも関孫六のことはさっぱりわからなかったのだが、日本刀に寄せる著者の熱い思いとその研究熱心な姿勢に、「うぅむ、日本刀というものはやはりすごいものだな」と改めて頗る感心したのだった。
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