マンションの社会学 住宅地図を活用した社会調査の試み

大谷信介【編著】

• 販売会社／発売会社: ミネルヴァ書房
• 発売年月日: 2012/04/11
• JAN: 9784623063499

商品レビュー

2012/09/25

大学の演習で学部生が行ったマンションについての社会調査をまとめた本。一般的な世帯単位のデータから建物単位のデータベースを作り、それをに基づいた研究をまとめるまでの調査のプロセスを追うことができるようになっている。マンションを対象とした研究の本もまた少ない。国勢調査や住宅地図などのアクセス可能なデータをどう使い、どう解釈するのか、これから研究や論文を始める人にも役立つだろう。（建築学専攻）

配架場所：工1B・建築
請求記号：322-0:O.3

◆東京大学附属図書館の所蔵情報はこちら
https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2003052107&opkey=B148057371919254&start=1&totalnum=1&listnum=0&place=&list_disp=20&list_sort=6&cmode=0&chk_st=0&check=0

2012/04/30

入荷先：目黒区立八雲中央図書館

社会学部や社会学科の科目の中で重要な位置を占める社会調査法の実習科目の題材を何にするか、多くの大学ではキャンパスの中でその調査対象を選定することが多いかもしれない。そのなかで主編者の大谷が注目したのはキャンパスのある西宮市において戦後着工された（あるいは立て替えられた）マンションや社宅、公務員宿舎、「カウンシル・フラット」であった。
本書はそれらの集合住宅がどのような特徴と、どのような背景を持って西宮に建てられたのかという壮大な調査記録である。

一読して感心することしきりである。というのは、聞き取り調査の対象者が集合住宅のディペロッパーや町会の重鎮、小学校の学区域問題にあっては西宮市の教育委員会やPTAといったような安易な落としどころに持っていくことの難しい調査対象者に果敢に挑む姿勢、そもそも一次資料に住宅地図を使用することで読み取れるものが多岐にわたることなど、学部の社会調査法の講義記録とだれがこれを読み取れるだろうか。
また近所の井戸端会議や口コミ（特に学区域に関するセクションでは顕著である）も真剣に調査の変数として記録するという「ふまじめ（と想われてしまいそうな行為）にまじめ（に向き合う）」を地で行く姿勢も社会調査という調査の形態にどう寄与するのかという結果に結びついている。普通の学生さんならばしり込みしてしまいそうだ。

なお、くりかえしになるがあくまでも社会調査法の実習であり、関連する社会学理論との連結はあっても社会運動理論との連結はないので誤読注意のこと（あれがない、これが欠落していると外野が指摘するのは、本書の場合お門違いである）。