チケットを売り切る劇場 兵庫県立芸術文化センターの軌跡

垣内恵美子, 林伸光【編著】

• 販売会社／発売会社: 水曜社
• 発売年月日: 2012/03/26
• JAN: 9784880652832

商品レビュー

2021/01/26

今は劇場として成功している兵庫県立芸術文化センター運営の裏側やこだわりが分かる本。

劇場建設前は3年ごとにメンバーが交代するオーケストラに対して批判的な意見が多かったり、佐渡裕さんをメインビジュアルにした『ジャジャジャジャ〜ン♪』のコピーに対して佐渡さん自身が難色を示しておられたこと、佐渡さんが市民の皆さんと合流された際に「(莫大な市民の税金を投入して県立のホールを建てるくらいなら)私らの家のローン払って」といわれたことなど、決して市民や関係者の皆さんがウェルカムでなかったことが分かり、そういう点について大変勇気づけられる内容であった。

2012/04/24

庫県立芸術文化センターを成功事例として、その設立、運営、企画、マーケティングなどについて分析した本。
公共文化施設についての研究書でもある。

いわゆる「ハコモノ」行政が批判を浴びる中、どのような施設であれば、その価値を認めるべきなのか、というのは非常に難しい。

本書では、「兵庫芸文センターを維持するために、いくらなら寄付するか」というアンケート調査を行い、県内だけで年間５４億円の寄付金が見込めるという試算がされたと報告している。
これは、単なる利用価値だけではなく、その施設の存在による地域の魅力の増加や、地域の子供の教育面への配慮など、利用以外の価値観も金額として含まれている。

一方で、兵庫芸文センターへの県からの補助金は年間５億円ほどであり、上記の調査が正しいとすれば、補助金の１０倍以上の効用を県民に与えているということができる。

こういった評価手法は、非常に分かりやすく、施設存続の可否の判断材料にもなる。
もっと広く行われるべ調査ではないだろうか。