バイ貝

町田康【著】

• 販売会社／発売会社: 双葉社
• 発売年月日: 2012/03/22
• JAN: 9784575237641

商品レビュー

2017/09/14

『ドストエフスキーは、貨幣は鋳造された自由である、と書いた。心の底、腹の底からその通りであると思う。カネ、銭を遣うとき我々はなにものからか解放されている。』

『真に幸福な人とは、鋳造された自由を多く持ち、それを遣わなければ生きていけない人ではなく、カネを持っているか持っていないかに関係なく、カネを遣おうが遣うまいが自由である人ということであろう。』

『妖刀。実に恐ろしい存在である。それを所有した者は精神に異常をきたし、前後不覚、錯乱状態に陥って無関係な人々を殺傷してしまう。
刀に妖刀があるなら同じ刃物である妖鎌がない訳がない。同じく妖包丁、妖鋏、妖カッターナイフ、妖高枝切り鋏、なんてなのもあるであろうことが推測され、注意が肝要である。』

『この鬱を散ずるためにはやはり三千円くらいは遣わなければならないだろう。そして三千円を稼ごうと思ったら私は二時間程度、仕事をしなければならず、二時間仕事すると、だいたい千円くらいの鬱が生じるので、鬱の総計は四千円分。』

『こんな鬱が私の全鬱の五パーセント程度を占めている。
と言うと、「なんだ。五パーセントか。少ないじゃないか」と言う人があるかもしれないが、鬱の発生源は主要なものだけで約八百あり、ひとつの発生源の全体に占める割合が一パーセントを超えるものは少ないのである。』

『つまり僕は小説家ですよ。嘘をつきますよ。という看板を掲げて商売をしている訳だ。その小説家に向かって、正義感に燃えて、赤目を吊って、「あなたは嘘つきだ」なんて言うのは、こんなこと言って申し訳ないが、はっきり言って愚の骨頂、実に滑稽なこと、ということにどうしてもなってしまうのである。烏骨鶏の卵でもお召し上がりくださいませ、みたいな。』

『見た目も味もきわめて惨めな、一口食べる度に、滅亡、悲哀、忍従、辛苦、陰謀、悶死、暗殺、発狂、恐怖、憎悪、不信、鬼門、仏滅といった文言が頭に浮かぶ、そんな焼き飯が完成したのであった。』

『しかし、もしかしてもしかしてもしかしたら、ということがない訳ではないと100%言い切れる自信がある訳ではないという考えもあり得る可能性はゼロではないような気がまったくしない訳ではないような気分が自分のなかにほんの少しだけあるような気持ちがしないでもない。』

『例えばテニスなんてなものは激烈に素晴らしいらしい。どれくらい素晴らしいかと言うと、天皇陛下と皇后陛下の最初の出会いが軽井沢のテニスコートであったというくらいに素晴らしい。』

2017/05/01

なんか合わなかった…
鬱を散ずる為に、モノを買う。モノを買う為には、鬱を増やしながら仕事をしなければならない。こうやって鬱と散財のスパイラルに陥るという著者。
こうやって読んでいる分にはいいけど、近くにいたら面倒くさそうな人だな…

2017.5.1…16

2017/01/28

なにを読まされているのかわからない気持ちにもなるけど、読んでいる間は楽しい。難しい言い回しもよく知ってるなあと感心するけど、難しい言い回しも駆使して、買い物に失敗し続ける話を書く。