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クリス・ボルディック選 ゴシック短編小説集 クリス・ボルディック選
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クリス・ボルディック選 ゴシック短編小説集 クリス・ボルディック選

クリスボルディック【編】, 石塚則子, 大沼由布, 金谷益道, 下楠昌哉, 藤井光【編訳】

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定価 ¥3,850

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 春風社
発売年月日 2012/01/01
JAN 9784861102981

クリス・ボルディック選 ゴシック短編小説集

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商品レビュー

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2021/02/15

レビュー  ゴシック小説は、18世紀後半のイギリスで成立したものである。このアンソロジーは、そこからゴシック小説なるものがどのように発展していったのか、その様相を豊富な実例でもって示そうとした大変読み応えのある書物となっている。  ゴシック小説の始祖と呼ばれるウォルポール『オ...

レビュー  ゴシック小説は、18世紀後半のイギリスで成立したものである。このアンソロジーは、そこからゴシック小説なるものがどのように発展していったのか、その様相を豊富な実例でもって示そうとした大変読み応えのある書物となっている。  ゴシック小説の始祖と呼ばれるウォルポール『オトラント城』は現在の視点から読むと、文体、描写、話の構成、何をとってもほとんど稚拙と言って良い出来だ。ウォルポールは小説家では無く、大物政治家の息子で金と時間を持て余した趣味人としてこの小説を記したのだから、その点を差し引くべきではあろうが、同書に収録された同じ18世紀後半に書かれたゴシック小説は多かれ少なかれウォルポールと同様に、ゴシック的なモチーフを多く並べ立てることで何とか雰囲気を作り上げ、物語を展開しようとしている。  しかし、19世紀の部に入ると、ゴシック的なモチーフ同士がうまく結び合わされていく。19世紀において、小説はリアリティをより強く志向することになるが、その機運がゴシック小説にも現れている。恐怖の感情はより複雑に、より細かに描写されることで、人間の感情や人生をめぐるドラマとして熟成しつつあるように見える。文学のなかでは傍系と看做されてきたゴシック小説も、リアリズムの機運のなかでしっかりと自らの物語的強度を高めている様子がうかがえる。  20世紀に入ると、また1つの変化がうかがえる。描写や話の展開がさらに複雑化されるという熟し方とは別に、ある個人の認知の歪みによる恐怖というモチーフが現出する。本書に収録されたギルマン「黄色い壁紙」はその最も顕著な例であろう。同作では、ある女性が自分の仮住まいの黄色い壁紙に(外部からの精神的ストレスにより)様々な幻覚を見るのだが、恐怖という感情は、その対象に何か恐怖を抱かせるような本質があるのでは無く、感じている本人の精神の問題、対象がどう見えるのか/をどう意味づけているのか、という自覚のもとに書かれている。主人公が錯乱していくにつれ、壁紙の描写はどんどんリアリズムを離れて、主人公の見たままの様子で描かれるが、これは同時代に展開されたドイツ表現主義的な手法であろう。  このアンソロジーで見る限り、ゴシック小説では必ずと言って良いほど女性が狂気に陥っているか、死ぬか、そうでなければ男性主人公に奇妙な神格化をされる存在として描かれているように思える。ゴシックもまた女性差別とは無縁ではなかった。それどころか、ゴシックは恐怖体験を描くために、恐怖を喚起させる対象を積極的に必要としたのであり、そこへ歴史上公然と差別されていた女性は召喚しやすかったのだろう。本書では倫理上の関係から訳出されてないがハンセン病がゴシック的モチーフとして登場したり、また人種差別がポーやドイル作品に見られたりするように、ゴシックをゴシックたらしめる恐怖の演出と差別はかなり複雑な関係にあるように思われる。  だが、一方でゴシック小説は女性たちに小説を読んだり書いたりするという回路を開いたこともまた確かだ。同書でも女性作家の作品が複数収録されているが、リアリズムとは異なり、徹頭徹尾空想で創作できるゴシック小説は、社会的行動を制約されていた女性たちに空想の旅を許した。ゴシック小説初期のアン・ラドクリフはその代表的存在であり、女性たちが育ててきたゴシック的想像力の金字塔の1つがメアリー・シェリー『フランケンシュタイン』なのであろう。  同書は2段組520頁前後と、1段組であれば実質1000頁前後の内容量であり、非常にボリューミーである。しかし、ゴシックに興味があれば、初期から現代までを通覧できるこのアンソロジーは、ゴシック小説といういまいち捉えどころのない文学ないしは想像力について、かなり具体的なイメージを与えてくれるだろう。大変に面白い本であった

Posted by ブクログ

2013/06/20

ゴシック小説の系譜をたどるアンソロジーなんだけど、完訳じゃないのね、残念ながら。どうせなら、リストに載ってる小説をぜんぶ訳して欲しかった。完訳にできなかった出版事情があるんだろーけど。 私的には、ジョイス・キャロル・オーツの「ヤギ少女観察記録」が最も鮮烈だった。読み手の想像によ...

ゴシック小説の系譜をたどるアンソロジーなんだけど、完訳じゃないのね、残念ながら。どうせなら、リストに載ってる小説をぜんぶ訳して欲しかった。完訳にできなかった出版事情があるんだろーけど。 私的には、ジョイス・キャロル・オーツの「ヤギ少女観察記録」が最も鮮烈だった。読み手の想像によって、いかようにも解釈が成立するような内容で、わけのわからないものに対する本能的な好奇心と恐怖がよく描けていると思った。女性の作者ならではの視点も光る。「ヤギ少女観察記録」は、このアンソロジー中で、最も色んな人の感想や解釈を聞きたくなる作品だった。 有名なギルマンの「黄色い壁紙」も入っているのだが、古くはフランケンシュタインといい、ゴシック小説への女性作家の貢献度って、かなり大きいなーと、改めて思った。

Posted by ブクログ

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