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シオンシステム 完全版 ハヤカワ文庫JA
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 早川書房 |
発売年月日 | 2012/02/10 |
JAN | 9784150310578 |
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シオンシステム 完全版
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商品レビュー
3.7
7件のお客様レビュー
惹句などからはどうしてもバイオホラー的な展開を予想してしまうが、前半は医師・製薬業界に大打撃を与えるような、完璧な医療法を巡る政治的駆け引きを描くポリティカル・フィクション、謀略小説の色合いが強い。中盤からはホラー・サスペンスっぽくなり(でもバイオではない)、派手なカタストロフが...
惹句などからはどうしてもバイオホラー的な展開を予想してしまうが、前半は医師・製薬業界に大打撃を与えるような、完璧な医療法を巡る政治的駆け引きを描くポリティカル・フィクション、謀略小説の色合いが強い。中盤からはホラー・サスペンスっぽくなり(でもバイオではない)、派手なカタストロフがあっても、お話は終らず、工学寄りの宇宙SFの尻尾をぶら下げるという感じ。アイメリア・シオンの正体を巡って奇想が連発する感じで、プロパーのSFファンには好まれそう。ただ、読んでいて、なんとも言えない齟齬みたいなものも感じる。小説になってない何かを読まされるような感じというか。「クレイン・ファクトリー」を読んでたときにも同じようなことを思ったから、作者さんの味なんだろうけどね。おかげで最後まで作品世界に入り込めなかった。
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ニューハーフとか、レズ、ホモといった侮蔑語がするっと出てくるところが気になってスムーズに頭に入ってこないのが残念。時代設定が近未来か現代のSFだと思うのだけれども、バイオ系の研究職のMtFトランスジェンダーがニューハーフを自称するとは思えないです。 あと、卓上のドラフトって狭くて...
ニューハーフとか、レズ、ホモといった侮蔑語がするっと出てくるところが気になってスムーズに頭に入ってこないのが残念。時代設定が近未来か現代のSFだと思うのだけれども、バイオ系の研究職のMtFトランスジェンダーがニューハーフを自称するとは思えないです。 あと、卓上のドラフトって狭くて作業進みにくいと思いますけど…
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サナダムシなどをおなかに飼っていると花粉症にならないとかいう話があったが、寄生虫によって健康を増進するというのが本書のアイディア、虫寄生医療。虫といっても、サナダムシやギョウ虫ではなく、単細胞の原虫である。これを寄生させることで免疫系を賦活し、感染症と癌にはかからなくなる。その...
サナダムシなどをおなかに飼っていると花粉症にならないとかいう話があったが、寄生虫によって健康を増進するというのが本書のアイディア、虫寄生医療。虫といっても、サナダムシやギョウ虫ではなく、単細胞の原虫である。これを寄生させることで免疫系を賦活し、感染症と癌にはかからなくなる。そのうえバイタリティにも溢れ、百歳までも生きられるようになる。よってその処置を受けた者をセンテナリアンという。しかしそんなものが広まれば医者は商売あがったりだ、それにどんな副作用があるやもしれぬ、と医師会や薬剤師会、看護協会などが虫寄生医療の保険適用に反対する。といった政治状況。そして虫寄生医療をさらに越えたシオンシステムなるものも開発されているらしい。 主人公・常和峰は記憶を失っている。最近3年の記憶は続いているがそれ以前がない。しかも記憶を失って発見されたとき、若返っていたのだという。とすると峰はそのシオンシステムの被恩恵者にして犠牲者ではないかと、だいたい推測がつく。 峰はイナホを収容する施設のボランティアになっている。それとともにかつて世話になっていた中条老人のもとで競争鳩の飼育をしている。 イナホというのは虫寄生医療の出現とほぼ時を同じくして出現した、特異なうつ状態の人々だ。うつ状態というより、意志を失ったとでもいった状態で、ほとんどコミュニケーションも断っている。イナホも虫寄生医療と何か関係がある。恐らくその暗黒面と。 さらに峰の恋人だったハルカはかつてイナホのような状態だったのを峰に救われたらしい。峰はハルカの存在を忘却しており、ハルカは峰の居所を知らない。 そしてなぜか鳩競争の話が平行して語られる。というのも虫寄生医療のもととなった原虫はそもそもシオンと名付けられた鳩に寄生していたものだから。 例によって複雑にからみあった設定のため説明がややこしいが、おおむねこんなところ。 そして、シオン・システムの開発者・新海英知は常和峰の親友であり、彼もまたハルカを愛している。この三角関係と鳩の帰巣本能、そしてかぐや姫のアリュージョンが作品の核である。つまり帰る場所。 ハルカはなぜか自分の故郷は空にある見えない星だと思っており、峰と英知はそもそも恒星間飛行を可能とするための宇宙船と生命維持装置の開発を目論んだのだ。 アクション・シーンなどがほとんどない群像劇は、登場人物の強烈な個性をキラキラさせながら、しかし淡々と進み、事態の全貌は次第に明らかになっていく。明らかになったら決着をつけねばならない。 『ダイナミックフィギュア』同様、ここには悪人は登場しない。みなそれぞれの思いで生き、そして少なからず道を誤る。 医師会会長の細江義臣も重要な登場人物だが、彼がシオンシステムに抗うのは、商売あがったりになるからだけではない。「命の重みを忘れたときに人間は崖から足を踏みはずして谷底に落ちる」。 話は、しかし、単に生命倫理を問うバイオものに終わらず、SFとしてはいささか破綻している感があるが、かぐや姫の物語になっていくところがユニークだ。 2007年徳間書店刊『シオンシステム』に、翌年雑誌に発表された続編を加えて推敲した「完全版」である。
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