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周作人伝 ある知日派文人の精神史 シリーズ・人と文化の探究7
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | ミネルヴァ書房 |
発売年月日 | 2011/10/26 |
JAN | 9784623059508 |
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周作人伝
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2段組で注を入れると500頁もの本である。劉岸偉さんには『東洋人の悲哀』という周作人をあつかった本があって、気になって買ったものの積ん読状態だったから、敬愛する比較文学の泰斗平川祐弘師のお薦めがなければ、とても本書を読む勇気はなかったろう。本書はその劉岸偉の周作人研究の集大成とも...
2段組で注を入れると500頁もの本である。劉岸偉さんには『東洋人の悲哀』という周作人をあつかった本があって、気になって買ったものの積ん読状態だったから、敬愛する比較文学の泰斗平川祐弘師のお薦めがなければ、とても本書を読む勇気はなかったろう。本書はその劉岸偉の周作人研究の集大成ともいうべきもので、生まれ故郷の紹興の風土の紹介からはじまり、南京の水師学堂での勉学の様子が描かれる。周作人は、その後日本留学、辛亥革命のあとの政治的混乱を経、五四運動の洗礼を受け、日本の武者小路実篤らの「新村」運動にも共鳴、文学的には独自の小品文の大家として全盛期を迎えるも、日本軍の中国侵略の中で、北京に残ったがために、文部大臣に相当する職につき、戦後は「漢姦」として監獄生活を送る。その後、新中国の誕生とともに、北京にもどされ、日本の古典やギリシア文学の翻訳生活を送ることで生活を維持し、一時的な平穏をえるものの、長生きをしたばかりに最後は文革の嵐の中で死んでいく。享年82であった。劉岸偉さんは、資料を丹念によみつつ、時にひっかかる日本語に出会うことはあるが、全体としては充分読むに耐える日本語にしている。これ自体たいしたものである。さらに、周作人が翻訳した原本にもこだわり考証をするのはさすが学者だなあと思った。ぼくがこの中で一番知りたかったのは、周作人が多くの友人たちの勧めにもかかわらず、なぜ北京に残り、日本軍の占領政策に荷担することをしてしまったかである。この部分はダンテの神曲ならぬ「煉獄」の章に詳しく書かれている。文部大臣に相当する教育総署督弁就任も、自分がやった方が他のこの職をねらうものたちよりましだという責任感によると読める。その中でもまったく日本のいいなりになったわけではなく、かれなりの抵抗もして日本側の怒りを買ったこともあれば、地下組織の人間を助けたこともあったらしい。かれが督弁につくこと自体共産党の指示によるという説もあるほどだ。劉岸偉さんはその部分も含め、全体を淡々と資料に物語らせるように書いていく。それは周作人批評はまずこうした事実を踏まえてやるべきだという姿勢だとは思うし、簡単に批評できることではないが、少々物足りなさを感じた。読みにくくはないければ、通読するのにそれなりの時間がかかったのは、今ひとつぐいぐいと引き込むものが感じられなかったからかもしれない。もちろんそれはぼく自信が周作人に関心をあるものの、ほれこむところまでいっていないことによるのかも知れない。なお、p173「古への俗言は、(今の俗言は、後の世の古言なり)」の後は「今の古言なり」が抜けているのではないか。また、姓の馮(ふう)を2度も「ひょう」と振り仮名をふっているのは少しきになった。
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