148の事例から見た是否認事項の判断ポイント 税経通信

税務経理協会【編】

• 販売会社／発売会社: 税務経理協会
• 発売年月日: 2011/10/21
• JAN: 9784419057411

商品レビュー

2019/05/25

2011年から積読状態で、いつか読もうと思っていた書籍を今更ながら通読。法人税を中心に148の事例が紹介されており、既知の部分も多かったが知識の整理ができた。ただ広大地通達の解説などすでに陳腐化している論点が多々あるので購入はお勧めしない。
P159
事例について
事業所得と給与所得との区分の判定をめぐっては弁護士の顧問料報酬が多いようであるが、そのほか疑義が生じやすいのは、大学や専門学校、予備校等の非常勤講師の講義報酬についてである。これら教育機関はその目的、理念、受講者が区々でありその講師と報酬支払者の契約内容も一律ではないと思われる。したがって、①の判別基準を踏まえつつ、業種、職種による違いはあろうが②の各事項を総合勘案して判定することになろう。ちなみに、要旨次のように判示して給与所得とした裁判例がある
(京都地判昭56, 3.6)。
３大学は学科目につき委嘱の期間、担当日、担当時間数を定めてその学科目の講義を委嘱し、所定の報酬を支払うことを約し、各大学が定めたカリキュラムの一部である特定の学科目について、週の特定の時限に、特定の場所で、ある程度長期にわたり継続して、講義を実施すべき義務を負い、そのカリキュラムに示された大綱に従うべき義務があった。したがって、大学の一般的指揮監督に服するものというべきであり、講義時間数に応じた手当額を毎月所定の日に定額支給され、その手当は夏季、冬季等の休暇中でも支給され、休講等でも減額されず、講義内容の優劣等はその増減対象となっていないことから、給与所得に該当すると認めるのが相当である。
なお、最近でも非常勤の大学講師の報酬を給与所得とした判例がある(大阪地判平22, 3.12)。
P165
2　大阪地判平成20年2月29日
学校法人が設置する高校及び中学校の校長であった同法人の理事長が
理事長職に留まった上でこれら校長の職を退き、同法人設置の大学の学長に就任するに際し、同法人から高校の校長の退職金として支払われた4,800万円余について、学長就任後の職務の校長在職時に比べ相当軽減されただけでなく、勤務形態自体が異なりその内容、性質においても、具体的な職務内容や自らのかかわり方については相当程度異なるところがあること、学長としての給与は校長としてのそれに比べて約30%減少して、給与面にも職務の量、内容、性質の変動が一応反映されていることから、校長からの退職、学長への就任という勤務関係の異動は、社会通念に照らし、単に同一法人内における担当業務の変更といった程度にとどまらず、その勤務関係は、性質、内容、処遇等に重大な変更があったなどとして打切り支給の退職金を認めた事例。
P165
4　長崎地判平成21年3月10日
取締役から監査役に就任した役員に対して支給された一時金1,800万円について、取締役を退任し監査役に就任することは株式会社との委任内容等が異なるので、原則として地位又は職務の内容が激変したということができること、その上で、監査役としての任務のほか会社の業務にほとんど関与しなくなったこと、別会社の代表取締役として当該会社の業務に連日従事していたことなどから職務内容が激変したというべきで実質的に退職したと同様の事情にあると認められるとし、さらに取締役の退任と監査役の就任の前後において報酬額に変化がなかったとしても、それぞれの報酬額は月20万円で、その金額からして監査役の報酬をさらに低額にすることは困難であり、非常勤取締役としての貢献と非常勤監査役としての貢献とが同額の報酬を持って評価されることはあり得るので、報酬額に変化がないことをもって、直ちに、地位又は職務の内容は激変していないということはできないとして、一時金を退職所得として認めた事例。
さらに、最近においても、上記2にやや類似しているが学校法人の理事長に対する一時金が退職所得として認められた事例がある(京都地判平23.4.14)。