カナクのキセキ(3) 富士見ファンタジア文庫

上総朋大【著】

• 販売会社／発売会社: 富士見書房
• 発売年月日: 2011/10/20
• JAN: 9784829136911

商品レビュー

2017/12/25

黒夢の魔王となったカナクを救おうとするネウの旅と、白夢の世界イストリアル・セントラルのリーゼ姫の物語が、交互に展開されていきます。

カナクが黒夢の魔王となったことで、アレンシア大陸に夢魔（ムーマ）があふれ出し、人びとを「眠りもの」に変えていきます。そんななか、ネウはカナクの同級生だったレニウスとリリルと再会し、ネウとレニウス、そしてアルマの３人に、大氷山脈ディルギニアに住む銀獣人への書簡を届けることになります。

途中、ソーン音楽団の歌姫ヤヒロも合流し、４人は銀獣人ディクトが住むセスコム荘にたどり着きますが、すでにディクトは眠りものにされていました。銀獣人がやがて脅威になると考えたカナクとリーゼが、一足先にディクトに攻撃を仕掛けていたのです。しかし、ネウたちはディクトの息子ライカを探し当て、彼にアレンシアを魔王から救うため協力してほしいと訴えます。

ところで、アレンシアの人びとを苦しめている魔導師リーゼは、かつてイストリアル・セントラルの姫でした。イストリアルの人びとは、あらゆる欲から解放され、争いごとのない世界に暮らしていました。ところが、イストリアル人と精霊界フェイエリアの住人フェイエルフのハーフであるリーゼ姫は、従者の少年ポルトに恋心を抱くようになり、それ以後イストリアルにアレンシアからの黒夢があふれ出します。黒夢の力をまとった黒い獣との戦いでポルトを失ったリーゼに、黒晶石をアレンシアに封印する役目がいいわたされます。リーゼはこの命令を引き受けますが、ポルトを失った悲しみと、フェイエルフとのハーフであるためにアレンシアに行かされることへの憎しみに包まれた彼女の心の中に黒夢が入り込み、支配されてしまうことになります。

２巻まではカナクが主役でしたが、ここからはネウが主役となります。２巻までに比べると、劇的な展開も少なく、ちょっと失速した感もあります。その一方で、ライトノベルらしいネウのキャラクターが、作品の評価を下支えしているような気もします。

2015/11/16

リーゼがどうして黒夢の力を使って魔王なんて存在を作ろうとしたのかが判明します。不幸な境遇に加えて、石の力で集まったマイナスな思考に引きずられていたならそんな選択も納得です。
でも、それならカナクが黒夢を一手に引き受けるようになったなら、リーゼは平常心に戻る気がするんですが、どうなんでしょう。
それと、オリヴィア。
息子を討つというのは世の平定のためには仕方がないと思いますが、ちょっと葛藤が少なすぎやしませんか？　ましてや自分の選択ミスが招いた結果ともいえるのに。まだ本心を明かしてない気がします。

2015/03/19

マールの村を出たネウがカナクを救う方法を探す旅に出るまでの道を表章に、裏章はリーゼの道程の物語。今回はカナクはほぼ出てこず、ネウを主人公として、カナクの友人であるレニウスとリリル、それからヤヒロなど登場人物を揃えてきた印象。しかし、本当にリリルのことが好きなのか？と明らかに様子のおかしいリリルを遣り過ごして放置するレニウスには思った。そのまま旅続けるのかよっていう…。