出世をしない秘訣 でくのぼう考

ジャン=ポールラクロワ【著】, アンリモニエ【絵】, 小宮山量平【監修・序】, 椎名其二【訳】

• 販売会社／発売会社: こぶし書房
• 発売年月日: 2011/10/01
• JAN: 9784875592563

商品レビュー

2014/11/23

フランス人作家による諧謔。

およそ50年前の著作ですが、成功それ自体をおちょくる姿勢は大陸ヨーロッパの大人の知性を感じさせます。

"うまく出世を避けるには"
"いつまでも二等兵でいるには"
"代議士とならない方法"など興味深いトピックが並びます。

宮仕えならばここが染みるところ。

【引用】
決してアイデアを示すな！
(中略)
ひとたび、こんな身の程知らずな若者の思いつきがお目にとまるや否や、彼は社長室に呼ばれ、いきなり職工長だの事務長だのに抜擢されるのは、申すに及ばず。彼の給料は跳ね上がりわ彼の勤務時間は四倍にされる。…門のカフェで食前酒でも一杯つきあおうかと待っていた友達も、とにかくすっぽかされるようになる。
そこで教訓ー 小さな投書箱は敬して遠ざけたまえ。アイデアは持たぬこと！万一それがあるんだったら、それは君自身のためにとっておくが良い！
(中略)
こうして、君は昇進などよりもはるかに貴重な宝を得ることになる。これぞ、平穏かつ聡明な怠け者の権利。

2011/11/10

表面的には「出世（成功）」なんかしちゃったらこんなに酷いことになるよ！だから出世しないように「こう言われたらこう返しなさい」みたいな、ちょっと大げさに書いてます。

でも実は、何かと不安にさせる世の中で、自分にとって何が大事なのか、成功とは何なのか、周りに振り回されずに考えられる冷静さを取り戻させてくれる本、という風に感じます。

1960年頃に翻訳、出版されているのを再編したものなので、時代も国も違うここに出てくる出世した人たちの例はピンとこないものもありますが、あまりに大げさに書き綴る出世阻止の方法には笑えるやらあきれるやら、同感できなくても笑える部分があります。

何はともあれ、今の私にはピッタリの本。