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装釘考 平凡社ライブラリー741
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 平凡社 |
発売年月日 | 2011/08/12 |
JAN | 9784582767414 |
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装釘考
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商品レビュー
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・私は古本屋にあまり行かない。行つたとしても買ふものに偏りがある。読み物として古本を買はうとは思はない。初版本を求めてなどといふこともしない。買ふのは個人的に興味ある分野の本ばかりである。概ね新しい。古くても昭和戦前期といふところ、明治大正などはまづあり得ない。それでも店頭にある...
・私は古本屋にあまり行かない。行つたとしても買ふものに偏りがある。読み物として古本を買はうとは思はない。初版本を求めてなどといふこともしない。買ふのは個人的に興味ある分野の本ばかりである。概ね新しい。古くても昭和戦前期といふところ、明治大正などはまづあり得ない。それでも店頭にある明治大正の本は見たことがある。書棚にあれば手に取つて見る。ケース内ならばその値段とともに拝ませてもらふ。いづれにせよ、ほんの少ししか見たことがない。西野嘉章「[新版]装釘考」(平凡社ライブラリー)はそんな人間にも実におもしろく読める。かなりの書の表紙や函のカラー写真が載つてゐる。その最初の頁には「佳人之奇遇」や「小説神髄」が見える。その最後の方には「時計」や「詩人の使命」が見える。本書は文学史の書ではない。あくまで装幀の、いや装釘の書である。極論だが、本書ではその作者よりも装釘者の方が問題になる。ただ、人によつては自ら装釘したりするし、装釘に対する一家言ありといふ作家もゐるから、著者と関係づけて述べられることも多い。坪内逍遙「小説神髄」などは「形式と内容の背離」(51頁)と評され、「前時代の遺産を真っ向から否定し、西洋の写実主義に新時代の文学の活路を拓こうとする、その方法的実戦としての『小説神髄』は、文学刷新の志とは裏腹に、江戸戯作で使い古された出版形式すなわち、分冊の形で出版された。」(52頁)と記され、更に、逍遙の「ごく初期の翻訳物を別にすると、どれもがその大いなる矛盾に彩られていた」(同前)とも記される。内容と装釘の乖離の指摘である。そのうへで、「大きさは半紙版、紙縒を使った結び綴じ、和装仕立て」(53頁)と装釘について記す。まともな和本ではないので題箋はなどと続かない。「表紙は板目木版のベタ刷りで、各冊色替わり。著者名、表題、発売元の大字を白く抜き、分冊名は墨刷り。表紙は本文と共紙である。」(同前)この記述を写真で確認できる。他書の説明も似たり寄つたりである。ただし、時代が進むにつれて装釘家の比重が上がつていき、有名画家が登場するやうになる。かういふのが丁寧に跡づけられてゐる。私は明治の洋装本よりもまだ和本の方に馴染みのある人間なのだが、かういふ固有名詞と表紙写真とによつて、そんな欠が補はれる。それゆゑに思ふことがある。本書巻末には「参考文献抄録」がある。全部ではないのであらうが、12頁にわたつて多数の書名が記されてゐる。しかし、索引はない。かういふ書である。一体何冊の書が紹介されてゐるのであらうか。1章で何冊も紹介してゐるところがほとんどである。本書は全50章、短章とはいへ多い。言及される書名も多い。その索引がないのは致命的ではないか。かういふ書は索引があつてこそ真価を発揮できる。書名索引だけでも良い。更に、書肆索引、装釘家索引、著者索引、さうして事項索引とあれば文句なからう。これらをまとめて人名と事項に分けても、全体を一つにしても良い。その方が使ひ勝手が良いかもしれない。どのやうなものであれ、本書には索引がぜひあつてほしいと思ふ。 ・本書元版はもはや稀覯本であるらしい。紀田順一郎は巻末の解説でこのあたりに触れてゐる。本書の内容以上に「その独創的な装釘」(265頁)が愛書家に受けたといふ。「墨一色に白抜ヌキ書名の外函意匠は申すに及ばず云々」(同前)、こんなのを読むと、たとへライブラリー版であつても、これを再現すべく努力してほしかつたと切に思ふ。本文所謂旧字体などは何の苦もなく実現できたのにと思ふばかりである。おもしろいから、慾を出してこんなことを考へるのであつた。
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