面白くてよくわかる！太平洋戦争 日本の安全保障史、外交史を知る大人の教科書

太平洋戦争研究会監修(著者)

• 販売会社／発売会社: アスペクト
• 発売年月日: 2011/07/25
• JAN: 9784757219601

商品レビュー

2012/02/12

　本書は1931年（昭和6年）の満州事変から1946年（昭和21年）の対日講和までの歴史を記述したものであるが、大きな歴史の流れを鳥瞰できる面白い本であると思った。これだけの期間の内容を1冊に詰め込むのであるから、内容が駆け足になるのは仕方がないが、歴史の全体像を大枠でとらえることができる面白さを感じた。
　内容も、戦争についてだけではなく、「不況脱出」「社会不安」「国民生活の統制」などの経済や政治システムも一部解説しており、中学生・高校生への昭和史の入門書としてだけではなく、昭和史を良く知っている年代にも全体を見ることができるおもしろさがあると感じた。
　評価がいろいろ分かれる内容をさけて、ほとんど事実のみを取り上げた構成は、誰でもが気安く読めるものとなっていると思った。これで歴史に興味をもてば、もっと詳細な本にも手が伸びると思う。
　終章「失敗の研究」には、控えめながら著者の価値観が出ていると感じた。軍を聖域化した制度として「軍部大臣現役武官制」と「統帥権」を取り上げ、「多様な選択肢を失った政治システム」となってしまった当時の政治制度により「日本の悲劇」が引き起こされたと主張している。
　昭和の戦争については、残念ながら現在でも様々な意見が対立して、国民としての共通の認識がもてる状況にはない。本書のように、評価を抑えて事実の確認から積み上げることも、重要なアプローチかもしれないと思った。

2011/10/21

太平洋戦争を知らないと言ってのける高校生がいると聞き及ぶ21世紀の日本にあって、ではアンタは知っているのか？と問われたときに、ひれ伏しはしないまでも、胸は張れないなさけなさ…
本書によって、初めてあの戦争を「俯瞰」する糸口を差し出されたような気がします。見開きの左ページは、常に地理感、距離感、相関関係を網羅した図解で占められ、「あの戦争」をキーワードとする映像・活字を肉付けするために、以降幾度もページを繰り直すことになりそうな一冊。

「面白い」という単語と「太平洋戦争」という単語の組み合わせには、ギョッとしますが、、、「面白くてよくわかる！」なるシリーズの中の一巻となればいたしかたなし。でしょうか。