枕草子 日本古典文学全集

文学・エッセイ・詩集

• 販売会社／発売会社: 小学館
• 発売年月日: 1985/02/01
• JAN: 9784096570111

商品レビュー

2011/02/07

「新編日本古典文学全集」の前身である、「日本古典文学全集」に収録されている『枕草子』。新全集「新編日本古典文学全集」の『枕草子』は三巻本系統を底本にしているが、こちら旧全集「日本古典文学全集『枕草子』」は能因本系統の学習院大学蔵本を底本に採用している。旧全集も新全集も松尾聡先生と 永井和子先生が執筆を担当されているので、新旧あわせて読めば、お二人の『枕草子』研究の足あとまで辿ることができる。

新旧あわせて購入するとなると贅沢な話ではあるが、図書館を利用すれば金銭的負担を抑えて充実した時間を得ることができるはず。また、「日本古典文学全集」に準拠した「完訳　日本の古典」の『枕草子』(全２巻)を一冊にまとめた、『枕草子 能因本 (原文&現代語訳シリーズ) 』（笠間書院刊）も出版されている。同じ執筆陣なので、それを代用することもできる。

松尾聡先生と 永井和子先生の『枕草子』は、能因本を底本としたもののほうが良いと思っている。能因本とは、清少納言と姻戚関係にあった能因法師が所持していたことが奥付に書かれていることにちなんで「能因本」と呼ばれている。この能因本を三巻本系統と比較すると、章段の順番も違うし、記述されている文章にも相違点が多い。

能因本系統と三巻本系統のどちらが原本に近いかという論争の末、現在では三巻本系統が優位なのだが、それは研究者間の話。それとは別に、それぞれに味わい深くて、両者を比較しながら読むというのも『枕草子』の愉しみ方のひとつだと思う。中学・高校時代から比較読みを愉しむことができれば、将来は『枕草子』研究家として活躍できるかも。まあ、オジサンには縁のない話だけど。