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蝶々さん(下) 講談社文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 講談社 |
発売年月日 | 2011/07/15 |
JAN | 9784062770262 |
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商品レビュー
5
6件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
男性上位の維新後の世において、侍の娘として生まれ、幼いときから『葉隠』を手本として生き抜くには、相当の覚悟と強靭な意思が必要である。それを体現して見せたのは、「伊藤蝶」、通称蝶々さんその人であった。武士道という言葉を聞けば、その顛末が自刃による散華となることは容易に想像できる。本作でもその部分は、そっけないほどに簡潔に書かれている。つまりは、散ることの美しさではなく、散るに至るまでの生き方や自害を判断した心の美しさを描くことが必要なのだということを、『蝶々さん』は教えてくれる。 長崎式結婚――そう呼ばれた体のいい「買春」のためのシステムは、主に結婚という手続きを重視するキリスト教が要求する規格に基づく体裁を整えるためのものであり、それを日本の武士道精神に基づいて、あくまでも「結婚」という手続きをした以上、夫の良き妻であろうとする蝶々さんのいわば大いなる「勘違い」が生んだ悲劇とまとめることはできよう。だが、蝶々さんの純情が、長崎に駐留する外国軍人たちの一時の慰安に蹂躙されたことを知るに至り、蝶々さんは「おもちゃになどなっていないことを証明」するためにおのが命を絶つ道を選ぶ。 肝心なところで運命の神が背を向け、あと少しで手が届くというところで悉く運命は蝶々さんに手のひらを返した。それでもあきらめることなく、「武士」として美しく生きるために、何度も強い心で立ち上がり、前を向く蝶々さんの強さ。これが本書の伝えたいことのすべてではないだろうか。しかし、運命の神様は、最後の最後に背を向けるのではなく、仮初(かりそ)めの幸せを蝶々さんに与えてしまう。ようやく蝶々さんが手にした幸せは、一見蝶々さんが何よりも欲しかったものに見えて、実は偽物だったのだから、これ以上の悲劇はないだろう。 本作を読むと、維新後の時代(おそらくはそれ以前から)の日本は何と女性が生きるには大変な時代で、かつ、維新前から唯一開国していた長崎という地理的条件は、蝶々さんのような悲劇を生み出す絶好の舞台だったと言わざるを得ない。社会が女性に優しくないのだから、その中で蝶々さんが武士道を胸に秘めて生きることの辛さは察するに余りある。自分の手でおのが命を殺めるという最後の選択も、それまでの蝶々さんの生き方を読んできただけに、納得してしまう。 だから、『蝶々さん』の結末はただひたすらに悲しい。その悲しさからカタルシスを得ようとするのならば、オペラ「マダム・バタフライ」のように最後の長崎式結婚を切り取るのではなく、やはり蝶々さんの生い立ちを通読する必要があるのではないだろうか。
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すごく感動した。 長崎とゆう日本の中でも稀な土地にいるサムライの娘蝶々さん。 時代背景も明治初期でまた読み返したいと思う一冊
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上巻に引き続き、一気読み。 プッチーニによって「マダムバタフライ」としてオペラ化されている、明治の長崎を舞台にした蝶々さんこと伊東蝶という1人の女性の人生を描いた作品。 蝶が学校に通っていた頃は幸せな毎日だった。 父の形見の学問のすすめを読み、ユリと仲良く、母と2人のババ様と暮らした生活がいかに恵まれていたかが読み進めると強く感じる。 母が将来を見据え、6年後の女学院入学を申し込みに蝶を連れて行ったのがすごい。 オランダ坂で蝶に言った言葉が印象的。この時代に生きた人としてはすごく強い女性だなー。やえさん。 母とみわババ様の死後、しまババ様の痴呆悪化後の蝶はキツい目にあいながらも大事な人たちに支えられて強く生きていく。 ユリ、サダちゃん、お絹、尹作、木原クン… その生活の中、活水に行きたいという夢を持ち、ひたすら努力し続けた蝶の姿勢が素晴らしい。結局それが叶わないのが悲しい。 フランクリンと結婚したものの、「長崎式結婚」をしたかっただけの彼とは二度と会うことのないまま蝶の人生は終わる。しかも既婚者だったフランクリン…最低やな!! 子どもを産んで待ち続けた蝶は、フランクリンの妻に子どもを引き渡し、自害して生涯を終える。 誇りを守りたいときに自害するのだという母の教え通りの自害だった。 田代先生、ユリ、2人とも死んでしまった。しまババ様も死んだ。子どもも引き取られ、夫には会えず、蝶は「誰のおもちゃでもなかったと証明したい」と言って死んでいった。 この時代・この地ならではの、悲しいお話です。
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