外国人が見た東日本大震災

エハンデラヴィ【著】

• 販売会社／発売会社: 武田ランダムハウスジャパン
• 発売年月日: 2011/06/27
• JAN: 9784270006528

商品レビュー

2014/01/21

タイトルに引かれて読んだ本。
東日本大震災では大勢の来日外国人も被災し、原発問題を受けて一斉に本国へと避難していきました。
一時期、本当に外国人の姿を見なくなったことを記憶しています。
そんな中、海外から震災1ヶ月後の被災地へとやってきた外国人のメモが元になっています。

著者について詳しく知りませんが、名前が2つあり、意識研究家という肩書。
若干新興宗教っぽい思想を持っている模様で、「天使」についても長く語られます。
その辺りは軽く読み進めるとして、西洋人の目に「この世の終末の光景」のように見えたこと、たまたま日本が初めに被害を受けただけで、今後世界中に起こりうる危機だと恐怖を感じたことは、ほかの外国人にも共通する感覚だろうと思います。

フリージャーナリストとしての目的も意志もしっかりしていますが、それでも未曾有の事態を前にして言葉が編み出せず、混乱している様子がそのまま文章になっています。
そもそも著者は、15年間の日本生活経験者で、日本が未知の国ではありません。
それだけ住んでいたのならば、かなり日本語も日本人の気質もわかるのではないかと思います。

現在著者が住んでいるカナダのネルソン出身の空軍パイロット、グレイ大尉が日米大戦時に敵国日本でも賞賛を受け、女川にモニュメントが立っていると知り、訪問目的地を女川にしたとのこと。
きちんと講演を行い、募金活動を行って、救援物資を集めた上で向かっている辺り、計画的で、思いつきの行動ではないこともわかります。

彼の行動は非常に冷静で、模範的。被災者のことを考えて、極力迷惑にならないよう細心の注意を払っています。
ただ、どうしても彼が受けた感想は、他の国に属する人間としての遠さがあり、私たちのようにはダイレクトな混乱を受けていないような気がしました。
そして、実際の被災地を目にした生々しい感想は、あまり語られていないように感じました。
冷静な文になっているため、日本人として遠さや違和感も感じずにはいられません。
とはいえ彼は最大限協力体制を取ってくれており、これが内部の目と外部の目の違いなんだろうと思います。
宮城県内でできた震災瓦礫は、年間の瓦礫の23年分の量があるとのこと。
そういった比率での説明を受けたのは初めてで、これは簡単にはなくせないものであることを再認識します。

彼は被災地に行き、さまざまな救援を通して被災者と交流を重ねながら、考えを巡らせます。
やはり自分の環境に引き寄せて考えるため、軸となる観点が違うのがおもしろいところ。
「アメリカ人がテレビを見る平均時間は1日8時間、そのうち2時間はCM」なんて、あまり関係無さそうなことまで語られます。

著者が目指した、女川のグレイ大尉のモニュメントは崩れていたとのこと。
これに特別な感情記載はなく、淡々とメモされていたので、著者の心的状況はわかりませんでした。

文章内に誤字が多かったり、わかりづらい文章が頻出するのは、著者が書いた文をそのまま載せているためか、校正が甘いのか、わかりかねるところ。
たとえば
「日本人の心は世界の人とはちょっと珍しい部分がいっぱいあると思ってるんです。」
という文など、スムーズに読み進められずに（うーん？）と止まってしまいます。

それでも外国には、彼の本の方が伝わりやすいだろうことを考えると、海外から来日して自ら被災地を訪ね、体当たり的な取材を行った海外ジャーナリストの貴重なルポルタージュだと思いました。

2012/03/16

外国の方でも、こんなふうに日本のことを思ってくれているということがとてもありがたく思った。

震災後約１ヶ月に被災地に入ってインタビューしているくだりや町の様子をありのままに書いている部分は、とても貴重な資料だと思う。

彼の日本人論には共感する部分、ずいぶん買いかぶっていると思う部分、イヤ違うだろうと思う部分、いろいろあった。

2012/01/31

フリージャーナリストとしてのエハンの行動力に好感。
私たちはデモクラシーで生きているのではなく、メディアクラシーで生活している・・とか、日本人は「恐怖心」というウイルスを植え付けられているとか、被災地に居たら、新しいアイディアは生まれないとか・・。教育こそ大事・・など。
もっと現実と世界を見ろよ、自分達は進化する民でいようではないか、というメッセージは真摯に耳を傾けたい。