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世界の終わりと妖精の馬(上) 時間のない国で3 創元ブックランド
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世界の終わりと妖精の馬(上) 時間のない国で3 創元ブックランド

ケイトトンプソン【著】, 渡辺庸子【訳】

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世界の終わりと妖精の馬(上) 時間のない国で3 創元ブックランド

定価 ¥2,090

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 東京創元社
発売年月日 2011/05/30
JAN 9784488019822

世界の終わりと妖精の馬(上)

¥385

商品レビュー

4.5

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2012/08/13

「時間のない国で」三部作最終編。 エネルギー問題や、自然破壊、物質的な欲望に支配された消費社会への批判は、当初から、この三部作の通奏低音として鳴り響いていたものだが、最終作にいたり、このテーマが全面に押し出されててくる。 そして、二作めの「プーカ…」で押し広げられた重層的な世...

「時間のない国で」三部作最終編。 エネルギー問題や、自然破壊、物質的な欲望に支配された消費社会への批判は、当初から、この三部作の通奏低音として鳴り響いていたものだが、最終作にいたり、このテーマが全面に押し出されててくる。 そして、二作めの「プーカ…」で押し広げられた重層的な世界観はさらに猛烈に壮大な時空へと広がり、淡々とした語り口のままに、文字通り近未来の凄惨な「世界の終わり」と新たなる始まり、新たならせんを描く神話の始まりまでが語られている。 第一作目では、アイルランドの田舎のひとつの村、家族、少年と、ケルト神話、伝説の中の妖精たちの住む異界との秘密のつながり、といった日常性に密接した世界や、ケルト的世界観vsキリスト教、といった信仰の問題であったものが、ここまで広大な多層宇宙、多層世界に広がってゆくとは…そしてその世界間のダイナミクス、そのありようが、物語として、また猛烈に面白いのだ。 さて、妖精の使える魔法は、本質的なものではなく、一時的な、めくらまし。魔法で出した金貨は時間がたてばもとの石ころ、ごちそうは、胃袋のなかで、もとのガラクタに戻ってしまう。 妖精王を脅してご馳走を出させ、食べて腹痛をおこす愚かな独裁者という光景を眺めたドナルは、遠い昔の豊かな物質文明(今の私たちの時代)の正体を外側から回顧する。 「それは遠い昔に、マスコミや広告主の企業が、すべての人々からある種の分別を失わせるために、たくみに使った"魔法"のことだ。彼らは、健康に悪い食べ物、人を愚かな犯罪者に変えてしまう飲み物、その他、何や国もたたないガラクタの数々を、宣伝という名の魔法によって、これがなければ自分は生きられないとだれもが思ってしまう品物に仕立てていた。そして、人々は釣り針のエサに食いつき、釣り糸から錘までのみこむ貪欲さで、業界のお偉方や宣伝担当者たちが期待したとおりの存在に落ちていったのだ。消費者の心を底なしに引きつける見栄えのいい魔法には、結局のところ、真の価値など、なにひとつなかったのに。  そして、その結果は? この世界だ。資源が浪費しつくされて、温暖化が進む一方の地球と、もはや絶滅の一途をたどるしかない人類の姿だ。」 二作めの、プーカ、山羊の姿をした創造主が、人類を滅ぼそうとして、その怒りを語った時も、「私の作ろうとした美しい世界を汚し食いつぶす、愚かな欲望の」というような科白があった。 そしてしかし、またここには、三部作を通じて鳴り響いているもうひとつのメロディがある。 貪欲、利己、愚かさへの怒りと悲しみに対する、救いとしての歓びと救いの主旋律、それは、芸術、音楽への、純粋な歓びと愛だ。妖精も神も人間も、すべてが等しくつながるところ。 ここでも、物語の中で、音楽は大きなパートを占めている 世界に危機が訪れたとき、人々を苦しめる独裁者となった弟エイダンは、ひたすら権力と我欲のために物資を独占しため込んだが、兄ドナルは、必死で人類の宝、遺産として、文学、芸術を残そうとした。 結果として、その必死の思いが、妖精と神の嗜好に合致したために、三者の存在のバランスは新しく建て直されることになる。ひとつの世界が滅びたのち、新たな世界創造へと未来はつながってゆくのだ。 気まぐれな妖精王ダグザが、滅亡してゆく地球から、永遠に平和な妖精の国になだれ込んだ、避難民、人類に対して腹を立て、追い出そうとするのかと思いきや、一緒に持ち込まれた楽器や楽譜に興味を示し、オーケストラを編成しようとするくだりは、実に痛快である。 いつでも燦々と日が照り、平和で陽気なひとびとが歌い踊り、飢えも死もない妖精の国。生き残った人類はそこで妖精たちと暮らす。そして、罰として人間界に残されたけれど、いつか、許されてその国に戻されるのだ、というその記憶を神話として語り継ぎながら、新たなひとくみのアダムとイブが、新しい世界を構築してゆく、見事なエンディング。 ほう、とさまざまな価値観についての思いを心の中にめぐらせながら、快い読後感。良書である、と思う。

Posted by ブクログ

2011/10/08

地球の温暖化がすすみ、世界は異常気象のため海の下に沈もうとしていた。アイルランドでは、独裁者エイダン・リディが乏しい物資を独り占めし、人々をこきつかって苦しめていた。一方時間のない妖精の国ティル・ナ・ノグでは、エイダンの父JJがのんびり暮らしていたが、そこへ大量の人間たちが出現、...

地球の温暖化がすすみ、世界は異常気象のため海の下に沈もうとしていた。アイルランドでは、独裁者エイダン・リディが乏しい物資を独り占めし、人々をこきつかって苦しめていた。一方時間のない妖精の国ティル・ナ・ノグでは、エイダンの父JJがのんびり暮らしていたが、そこへ大量の人間たちが出現、この国の物資を取りに来たと言う。 世界の終末を描きながら、相変わらずのドタバタぶり。長い目で見りゃ、終末ははじまりかもしれないけど、いいのかなあ、こんなに不真面目で? っていうおもしろいお話でした。

Posted by ブクログ

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