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小津安二郎の反映画 岩波現代文庫 文芸187
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2011/06/18 |
JAN | 9784006021870 |
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小津安二郎の反映画
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学生の頃『東京物語』を観て言い知れぬ感動を覚えた。でもそれが何なのかうまく言えなかった。蓮實重彦の『監督小津安二郎』を読んではみたものの、アプローチは斬新だがどこか血が通っていないという印象を拭えなかった。本書は明らかに蓮實の影響を受けているが、蓮實の小津論が腑に落ちなかった評者...
学生の頃『東京物語』を観て言い知れぬ感動を覚えた。でもそれが何なのかうまく言えなかった。蓮實重彦の『監督小津安二郎』を読んではみたものの、アプローチは斬新だがどこか血が通っていないという印象を拭えなかった。本書は明らかに蓮實の影響を受けているが、蓮實の小津論が腑に落ちなかった評者も、本書に出会って初めて小津映画が掴めたような気がする。 世界は無秩序である。この世界をレンズで切り取り、一定の解釈を施して物語に仕立てる映画とはそもそも「まやかし」である。小津の映画はその「まやかし」を徹底的に排する。というより「まやかし」に身を委ねつつ、それが「まやかし」であることを露呈させる「戯れ」、これが映画による「反映画」である。蓮實の「表層批評」を彷彿とさせるが、他方で小津は後輩である著者にこうも語る。「映画はドラマだ、アクシデントではない。」小津のこの言葉は著者を困惑させる。ドラマこそ小津が忌避した「まやかし」ではなかったか。 手掛かりは『東京物語』のワンシーンにある。旅立ちの朝、探していた空気枕が既に旅行鞄に仕舞われていたことに気づく。目の前にありながらそれを見過ごしてしまう愚かで不確かな人間。その人間に事物としての空気枕が深い沈黙のうちに投げかける眼差し。「人間が人間でしかないという否定しがたい眼差しをあらわにすることによって、かえって事物としての眼差しを蘇らせ、以前にも増して数限りない眼差しに包まれ、見守られていることの歓びへと、我々を誘う。」これが「世界の無秩序とともに生き、それを愛する唯一の方法」である。「映画はドラマだ」と小津が言うその「ドラマ」とは、映画の中に描かれるドラマのことではない。映画という表現形式を通じて、無秩序極まりない世界の中で我々を包む複数の眼差しに気づくこと、それは生が無秩序で相対的なものだからこそ、多義的な光に満ちた存在でもあり得ることを見出す瞬間だ。そこに映画による「反映画」としての「ドラマ」がある。 禅や仏教で小津映画を語ることが「日本的なるもの」に小津を矮小化するものだと言う批評をよく目にする。欧米の小津礼賛に見え隠れする浅薄なエキゾチズムへの反発もあるだろう。ただ、生活様式としてではなく、精神としての禅や仏教が果たして「日本的なるもの」かどうか甚だ疑問であるし、そういう論者も禅や仏教をどこまで理解しているというのだろうか。少なくとも、そのエッセンスをここに紹介した吉田喜重が捉えた小津の世界観は、無を受け入れながら無からも自由な平常心に徹する禅や、一切を空と観じ、転じて一切を光り輝く存在として再び見出す般若思想の「色即是空、空即是色」と極めて親和的なように思える。
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意地悪く言えば、冷徹な批評家の手による批評ではない。小津を慕う人物だからこそ書くことができた、小津に寄り添った批評として結実している。だがその読みは決してヌルいものではなく、深遠に(哲学的に?)死生にまで絡めた鑑賞を行っている。吉田自身映画監督ということもあって小津の舞台裏を眺め...
意地悪く言えば、冷徹な批評家の手による批評ではない。小津を慕う人物だからこそ書くことができた、小津に寄り添った批評として結実している。だがその読みは決してヌルいものではなく、深遠に(哲学的に?)死生にまで絡めた鑑賞を行っている。吉田自身映画監督ということもあって小津の舞台裏を眺め通すことができた人物なのだろう。この本を片手に小津に入り、小津の世界を堪能したいと思わされる。だがその一方でこの批評が「外」の観客にどこまで伝わりうるものかという疑問も(これもまた意地悪く言えば)思う。なかなか剣呑な1冊だが面白い
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小津安二郎に関する本は多数出版されており、論文や評論や感想文やどうでもいいような駄文や便乗本などなどは、うんざりするほどある。で、この本はというと、ちと難解ではあるが小津安二郎ファンであるなら読むに値する本であると思う。 もちろん、著者、吉田喜重自身も語るように、この本のような解...
小津安二郎に関する本は多数出版されており、論文や評論や感想文やどうでもいいような駄文や便乗本などなどは、うんざりするほどある。で、この本はというと、ちと難解ではあるが小津安二郎ファンであるなら読むに値する本であると思う。 もちろん、著者、吉田喜重自身も語るように、この本のような解釈が正解であるという保障はまったくない。私自身も疑問に思う部分が多い。しかし、小津監督と著者の有名な二度の接触シーンは、映画ファンならば誰でも謎解きの誘惑に駆られるエピソードであり、その意味でも、吉田喜重監督はこの本を書かねばならない必然性があったといえよう。
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