フランス的クラシック生活 PHP新書

ルネマルタン【著】, 高野麻衣【解説】

• 販売会社／発売会社: PHP研究所
• 発売年月日: 2011/04/22
• JAN: 9784569797861

商品レビュー

2013/06/05

綺麗なものが嫌いな人は、いないと思う。
クラシックも然り。

ロマンティックで麗しいの、心安らぐやわらかな音色、情熱的で壮麗なの。
どれも良さそうじゃないですか。

但し、心地よい音色は好きだけど―。
ここから先がモンダイなのですよね。

薀蓄やら演奏者の批評やら、したり顔にしなきゃいけなくて
普段着じゃダメそうで、もひとつおまけにチケットが高い…。
つまり小難しい、となると、誰も聴きたくないわけです。

だけど、誰もがお気に入りの音楽を暮らしの中で楽しんでるんだし
思い出の曲も持ってる。それがクラシックじゃダメ？

綺麗でしょう？ロマンティックでしょ？切ないでしょ？
じゃあ、あのロックバンドのバラードと同じように聴いてみては？

ほら、マリー・アントワネットも、ジョルジュ・サンドも
現代のパリジャン・パリジェンヌだって
恋の想いに身を委ねながら同じ曲を聴いたのだもの…。

というわけで、甘やかで美しい、毎日のシチュエーションに
似合った名曲の紹介がなされています。

語り口もムッシュ・マルタンが気軽に話しかけてくれてる感じ。
おしゃれで肩の凝らない一冊です。
本当に好きで愛聴してるものを、大事に紹介してるのが伝わって
読んでるだけで気持ちがほぐれていきますよ。

玄人好みなCDのチョイスだって声もあるようですが
私は逆に、良いのは確かだけど、手垢がついた名盤を選んでるより
新鮮な気分のCDを選ぶほうが、現代的でいいと思いました。

無論名盤も聴き進めていくのはイイですよね。
読んでみて、お聴きになって、クラシック好きになられたら
是非聴いていただきたい。

でも、題材がクラシックなのだから、既に伝統があるし
視点がフレッシュでも曲の選定はチョロいものではないのですから
軽やかに新たなお勧めCDを載せるっていうのは、いいと思います。

ラ・フォル・ジュルネの宣伝本だなんてご意見も、
ネットでは散見しましたが、音楽祭を立ち上げた経緯は
サラっと触れてるだけで、身近にクラシックを楽しんでねという
メッセージでしかありません。

コンサートに行くのは最初はためらわれたって
おうちで気楽にCDを聴いてリラックスするのは出来るでしょ？
街でiPod聴くのもイケルでしょ？

じゃあ、そこから始めてみないかい？
あなたの生活をきっとドラマティックに彩ってくれるよ？

そんな茶目っ気いっぱいの優しい声が聞こえてきそうですよ。

長い間人々に愛されてきた美麗な曲の中には、
華やかさも、慰謝も、安息も。
あるいは、悲しみも、嘆きも　壮大なものへの感動も。

私たちがよく知っている感情が、磨き上げられて
たっぷりと込もっています。

理解できないはずは、ないんです。
ややこしい敷居の高さをとっぱらえば

お気に入りのコロンを振るように
お好きなお酒を口に含むように。

聴くのがいいのです。
これは、その手引き。

旬で、プロフェッショナルな演奏は、
きっとあなたの心にも届くと思うのです。

一流の音を、気軽に聴きませんか？
今も私は、ヴィヴァルディをかけてます。

あなたが見てる、この同じ画面を見ながら。
そのぐらい楽にクラシックを聴いてほしいって
そんな本でした。