象牙の穴 角川文庫

黒岩重吾(著者)

• 販売会社／発売会社: 角川グループパブリッシング
• 発売年月日: 1981/07/01
• JAN: 9784041268117

商品レビュー

2013/04/16

黒岩重吾は　エロティックな小説を書く人だと思った。
この本を読んで、時間の流れを感じた。
黒岩重吾の理性的なそして正義感的な側面も理解した。
この小説の中の萩野という弁護士は、重吾自身の投影もふくめて
人間くささを出している。
人間に対する見方、夫婦の愛情、仕事に対するひたむきな姿勢
など　興味はつきない。
それに比して、雨森という人間像は、ちょっと単純な感じが
しないでもない。
男性としての魅力に欠け、終始コンプレックスの塊のようで、
非社交的な人間；そして　結局は人間を人間として
思わなくなっているなど　萩野とは対照的だ。

計画的蒸発のために、手段を選ばぬ行為

大学助教授として　総合的視点が欠如しているように見える。
大学の先生の犯罪というのは良く取り上げられるが、
もっとセンシティブにとりあげる。つまり学生からの視点が
必要ではないだろうか。

産学協同に対する批判ともとれる作品であるが、
その発展方向をさししめず、政治家的　相川と　技術者　雨森の
分離が描かれているだけである。

人間の葛藤を中心にすえる。