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ヴォイス 西のはての年代記 Ⅱ 河出文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2011/03/07 |
JAN | 9784309463537 |
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ヴォイス
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商品レビュー
4.6
12件のお客様レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
グウィンの作品の中でどれが好き? という(ある意味とても酷で厄介な)問いを投げかけられたら、いまの私は「ゲド戦記」や「闇の左手」よりもこの本(「西のはて年代記」二巻)をえらんでしまうかもしれない。そのくらい気に入りで、また、わたしにはまだおぼろげにしかわからない深い霊性を湛えた本のように思う。物語そのものは、高い地位の生まれの母を持ちながら「侵略の落とし子」として生まれた少女メマーを主人公に、その目を通して進んでいく。メマーは豊かな感性の持ち主で、その考えのくるくる踊るところーーたとえば客人のための食材を用意したり、自分に半分血を入れた侵略者に強い憎しみを露わにしたり、そのひとりと「男の子」として話して憤慨したりーーに生き生きとしたこころの動きを見ることができる。そして、ゆえに、そのメマーが「語り手」として突き動かされた自分におびえること、メマーに語らせたものが何だったかについて、導き手たる「道の長」が解釈するところが気持ちに沁みる。前作に続いてオレックとグライが出てくるのもうれしい。
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・『ゲド戦記』の似姿 『ギフト』でもうっすらと感じたことだが、『ヴォイス』ではさらに感じた。 『ヴォイス』に対応する物語は『壊れた腕輪』であろう。喰らわれしものアルハは設定が完璧すぎて、テナーをお姫様にしてしまった。その反動が『帰還』で爆発し、それによって一部の読者はやっつけられてしまった。 お姫様にならないための背景を与えられたメマーは、元気いっぱいに活躍する。しかし、怒りを秘めた内向的な若者として描写されていたにしては、ややご都合的ではある。 ・一人称視点 説明調である。朗読向けなのか。そんな印象を『ギフト』にもった。狙いはどうあれ、一人称視点による事物紹介は説明調になりやすいようである。 事物紹介を一通り終えたあと、メマーが伸びゆくくだりにおいては非常に力強く働くが、メマーが不在である場面の語りや、先に述べた焦点がぼやける印象の場面では一転して弱い。 ・すわりの悪さ 注目を集めるキャラクターが多すぎるせいで焦点がぼやける印象があり、いちどきに順に焦点が移っていく場合には嫌気を覚えることがある。演劇のスポットライト的な演出のように見えるというか。この物語にもその気がある。 ・総括 物語よりも、設定に重きが置かれてしまった観がある。 「ありきたりな悪役」を避けようと工夫した気配というか、曰く言い難い物語のよじれのようなものを感じる。小物すぎる人物がその座を占めることになり、カタルシスが弱い。 日々は続いていく系のエンディングだが、物語に没頭できなかったためか、染みる感じはない。
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ル=グウィンの「西のはての年代記」の第2巻。主人公は「西のはて」の最南に位置する都市アンサルの少女メマー。17歳になるまで、不自由な暮らしを迫られていた。というより、自由な暮らしを知らなかったとも言える。彼女の母は、砂漠近くの神聖国家アスダー国の侵入を受けた際、アスダーの兵士によって強姦され身ごもった。メマーは支配者と被支配者の血を引くことになるが、彼女は母が属したガルヴァマンドの一員として日々を過ごしていた。彼女は幼いとき母から教えられて秘密の部屋に入る事ができた。母を失ってから、秘密の部屋に入りそこに置かれている書物を文字を読めないまま、本に名付けをし、本に書かれている内容を想像していた。ガルヴァマンドの長「道の長(みちのおさ)」からやがて文字を習い「読み取ること」の喜びを知る。「道の長」はアスダーの兵士に捕らえられ、身体が不自由になっていた。 メマーは、ある日、旅の詩人オレック(もちろん、「西のはての年代記」第1巻の主人公、「高地」をでて、20年近くも吟遊詩人として各地をめぐっていた)が朗唱をすることを知ってそれを聴きに「港市場」に出かける。街に出るときはいつも、男の子の服装をしていた。広場で、ハーフライオンに驚いた馬の暴走を抑える。それをきっかけにハーフライオンのシタールの飼い主のグライ(オレックの妻)と出会い、オレックとグライの馬を世話する場所として、自分の家のガルヴァマンドの厩に誘う。オレックとグライは、ハーフライオンのシタール、「高地」を出て以来ともに旅する2頭の馬とともに、ガルヴァマンドの館に住まうことになる。 支配者アスダーの現地支配者としてイオラスは、オレックの吟唱を好んでいた。いっぽう、アンサルにあった大学と図書館を破壊し、すべての書物を捨て去ることを命じていた。メマーが秘密の部屋にこもって本を読まなければならないのは、そのせいだった。アンサルの人々は、そうした圧政に対して反乱をこころみるが、失敗に終わる。しかし、その事件をきっかけに火傷を負ったイオラスにかわって、その息子イドールと従う神官たちによるクーデタがおこる。しかし、イオラスは現地妻のティリオ・アクタモの力と部下の軍人たちの支援を得て、権力を奪還する。 その事件の折、道の長とメマーは重要な役割を果たす。メマーの「ギフト」は、本からにじみ出るアンサルの精霊の言葉の「語り人」であり、道の長の「ギフト」は「読み人」であることがわかる。つまり、精霊に憑依されたメマーは精霊からのお告げを語り、道の長はそれを人々に伝えるのがその役割なのだ。 タイトルの「ヴォイス」は実は複数形でなければならなかったと言えるだろう。原題は、実際「Voices」なのだから。オレックの朗唱(もとは彼の母の書き残した物語や昔語りの本を記憶しそれを朗唱すること)であり、メマーの「語り」もまた、本をもとにした言葉である。そうした語りを聴く人々が、それぞれの思いでその言葉を理解する。そうした物語となっている。
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