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広範囲応答型の官僚制 パブリック・コメント手続の研究 学術選書 行政学0064
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 信山社 |
発売年月日 | 2011/02/20 |
JAN | 9784797258646 |
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広範囲応答型の官僚制
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本書は、パブリック・コメント手続の機能を規定する要因について、行政学特有の理論的分析枠組みを探究、設定した上で、定量的な実証分析を行った1冊です。 パブリック・コメント手続(以下、パブコメ)とは、各府省が「命令等」を制定する際に、制定案を開示し、一定の期間を定めて一般市民からの意...
本書は、パブリック・コメント手続の機能を規定する要因について、行政学特有の理論的分析枠組みを探究、設定した上で、定量的な実証分析を行った1冊です。 パブリック・コメント手続(以下、パブコメ)とは、各府省が「命令等」を制定する際に、制定案を開示し、一定の期間を定めて一般市民からの意見を公募するよう、2006年に法定された市民参加の一形態を指します。 実証分析の内容も大変興味深いものでしたが、個人的には、その土台を形成する分析枠組みの探究の方に、今後の行政研究の視野を広げる意義深さを感じました。定量分析におけるデータセットは、主に総務省行政管理局が毎年公表する「意見公募手続等の施行状況についての調査」などが用いられています。 まず分析枠組みについて。 第1に、パブコメを分析する際の説明変数として、行政内部の構造的特質に着目している点に本書の特徴があります。著者は、従来の行政学が行政の①対外的活動と②対内的活動の個別の分析に終始していることを批判し、①と②を繋ぐ手続・制度の分析(③)こそが行政学のレゾンデートルを示すものであるとします。本書ではパブコメがこの③に相当します。そのため、①と②の両面から説明変数が設定されることになり、パブコメ研究では従来重視されてこなかった行政の内部構造が説明要因とされます。 第2の特徴として、本書では、行政の「サービス供給」だけでなく、「発言」や「決定」も被説明変数として扱われています。行政組織による正統性調達の問題を扱ったブルンソンの理論が参照され、対外的に正統性を維持するための「発言」や「決定」が、重要なアウトプットの1つとして位置づけられています。 第3に、既存のパブコメ研究との相違として、パブコメ実施前の省庁と利害関係者との「プレ接触」を研究の射程に含めている点も特徴的です。当初、パブコメが不透明な審議会政治の代替物として位置づけられた経緯を考えれば、これら行政と利害関係者との関係性一般を視野に入れた分析は重要な意味を持つと言えます。 続いて実証分析について。 まず、近年のデータからは、パブコメ案件に対する意見提出数は一貫して少ない現状が見て取れます。この原因について、著者は、「プレ接触」の存在が利害関係者のパブコメを利用するインセンティブを低下させていることを指摘します。その意味で、通説通り、各府省は「業界応答型」の対応を行っていることが考えられます。 一方で、意見提出のあった案件の原案修正率からは、各府省が「(制約された)広範囲応答型」の応答性を有している側面も確認できます。たしかに、事前の「プレ接触」や与党審査の存在によって応答性は「(制約された)」ものとなっており、原案修正率は意見提出のあった案件の2,3割に留まっています。それでも、2,3割の案件では原案修正が行われている事実と、それが意見提出数の多寡の影響を受けていることが明らかにされる著者の回帰分析によって、各府省が一般市民への応答性を一定程度有していることが検証されます。 さらに、省庁間の差異に着目すると、行政内部の構造的特質が原案修正率に影響を与えていることも確認されます。具体的には、パブコメの主要な決裁権者である課長の状況適合的な行動原理に着目し、課長が事務官である場合よりも、利害関係者と強固な関係性を築きやすい技官である場合の方が、原案修正率が低くなることが検証されます。この点、各省庁の応答性を高めるための1つの方策として、強固な「適切さの論理」を持たない中途採用者を増加させることが意味を持つとする著者の指摘は、興味深いです。 以上が本研究の主な内容ですが、行政の内部環境と外部環境の結節点に着目する著者の分析は、今後の行政研究全般にとって大きな示唆を与えてくれるものであると思います。 一方で、著者も断りを入れているように、意見提出数の多寡と原案修正率の結びつきから行政の市民への応答性を推察している点など、若干説得力に欠ける論理展開もいくつか見受けられました。ただ、この点は客観的なデータセットによる定量分析にこだわった本書の性格上やむを得ない部分でもあり、後続調査・研究に期待したいです。 研究論文の集積ということもあり、若干専門性は高いですが、行政研究に関心のある方には強くおすすめできる1冊です。
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