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モナリザの秘密 絵画をめぐる25章
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モナリザの秘密 絵画をめぐる25章

ダニエル・アラス(著者), 吉田典子(著者)

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モナリザの秘密 絵画をめぐる25章

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 白水社
発売年月日 2007/03/13
JAN 9784560027103

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商品レビュー

3.8

4件のお客様レビュー

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2013/03/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

美術展に行くと売店などで図録というものを売っている。その美術展で展示されている絵についての解説と複製写真で構成された画集のようなものだ。せっかく実物を見ているのに何故そんなものが必要かと言えば、一枚の絵の前に立ち止まっている時間が限られているからだろう。レンブラントやフェルメールといっためったに見られない企画展に至っては、館内アナウンスで立ち止まることを禁止されることもしばしばだ。そこで図録を買って帰り、家で心ゆくまで好きな絵と対話するということになる。 素人が趣味で絵を見るからそういうことになるので、著者のような美術史家ともなれば、いつでも好きなだけ絵に接していられるのかと思ったらそうでもなさそうで、オリンパス片手に自分でスライド写真を撮影し、書斎でゆっくり見るという方法を採用していると知って親しみを覚えた。そうして無心に撮った写真の中に、実物の絵を見ていたときには気づかなかった謎を解く鍵が隠されていることが多いと著者は言う。 著者はイタリア・ルネサンスを専門とするフランスの美術史家で、新しい美術史学の旗手として期待されていたが惜しくも2003年に亡くなった。この本は、彼が生前放送したラジオ番組を編集したもので、です・ます調の口語体で書かれており、読みやすい。しかし、語られている内容はというと遠近法が何故ほかでもないフィレンツェで発明されたのかという理由や、遠近法と受胎告知画の間にある言われてみればなるほどと唸らせられる関係等々、かなり専門的な見識が披露されている。さすがは芸術の国フランスと感心した。 絵に理屈はいらない。美しければいいのだという方もおられるだろうが、著者はそうは考えない。そうでなくても、よく見れば見るほど説明がつかないことが数多く見えてくる絵というものがある。アラスはそのとっかかりに、ラファエッロをもってくる。ドレスデンにある「サン・シストの聖母」である。この絵を知らなくても天使グッズの絵葉書やワインのラベルなどでふくれっ面をした二人の天使像を見た人は多いにちがいない。評者も何度も見てよく知っている。 愛らしいとはとても言えない上目遣いの二人の天使の表情が、何故?という気にさせるので覚えているのだ。アラスの研究によれば、この二人の小さな天使は「ユダヤ教において神殿のヴェールを守っていた智天使(ケルビム)たちのキリスト教における形」であるという。この絵は「まさに生きた神が顕現する瞬間をきわめて正確に提示している」絵で、彼らは自分たちが秘密の番人の位階からリストラされる瞬間に立ち会っているところなのだ。神が見える姿をとるということは、死ぬ運命にあることを意味している。二人のさえない表情にはそんな気持ちが込められていたのだ。 タイトルとなっているモナリザの秘密についてはあまりに多くの言説が巷間に流布しているので、アラスの解釈もとりわけ目新しさを感じないが、次の遠近法の発明に至ると、あのパノフスキーの有名な『<象徴形式>としての遠近法』を向こうに回し、それが象徴形式などではなく完全な知的操作であることを豊富な裏付けを用意して論証している。 パノフスキーによれば、遠近法とは「神がいなくなった世界、デカルト的な無限の物質の世界を象徴する形式である」。アラスはそれを哲学的には面白いが、美術史学の立場から歴史的には不適当だという。遠近法を普及させるにあたって力のあった『絵画論』を著したアルベルティにとって場所とは演劇の舞台のように閉じられた世界でしかなく、彼には無限の彼方で消える「消失点」という概念はなかったという。このように当時の世界観でその時代の絵画を見るというのが、アラスの方法論であり、同じやり方で、ベラスケスの『ラス・メニーナス』を批評したフーコーに対しても、やんわりとではあるが、その解釈が当時としては有り得なかった理由を述べている。 遠近法と「受胎告知」を結びつける理由を述べているところはこの文章の一つの山場である。ミステリではないので、許されるだろうからそのわけを明らかにすると、こうなる。「遠近法は人間が計測することのできる世界の像を構築するのに対して、『受胎告知』とは、無限が有限の中に、測定不可能なものが尺度の中に、やってくる瞬間」を表したものだからである。15世紀の人々は、遠近法の特性を利用してキリスト教の神秘である「受肉」を絵画に表現している。フラ・アンジェリコの二つの「受胎告知」やアンブロージョ・ロレンツェッティの「受胎告知」をもとに、絵画の思考を読み解いていくプロセスは知的快楽の極みと言える。このあたりは、ぜひ本編を読んでいただきたい。絵の好きな方、特にイタリア・ルネサンスに興味のある向きには必読の書。

Posted by ブクログ

2012/08/25

ダニエル・アラスは、イタリア・ルネサンスを専門とするフランスの美術史家である。 ダニエル・アラスは、2003年12月に逝去したが、死の数ヶ月前に、フランスのラジオの仕事をした。 25回にわたって放送されたアラスの声を文章化したものが本書である。 アラスの著作は、『ギロチンと恐...

ダニエル・アラスは、イタリア・ルネサンスを専門とするフランスの美術史家である。 ダニエル・アラスは、2003年12月に逝去したが、死の数ヶ月前に、フランスのラジオの仕事をした。 25回にわたって放送されたアラスの声を文章化したものが本書である。 アラスの著作は、『ギロチンと恐怖の幻想』と『なにも見ていない』を読んだことがあるが、『なにも見ていない』は6つの面白い試みの散文で、とても愉しく読んだ。 本書は、絵画図版を多く取り入れ、専門としている14世紀から19世紀の絵画を中心に専門家としての独自の切り口で、絵画をめぐる25の話がまとめられている。 当然のごとくダ・ヴィンチに関しても深く掘り下げ、モナリザに関する考察も興味深いことを書いてる。 『なにも見ていない』でも取り上げられていた、フランチェスコ・デル・コッサの『受胎告知』に描かれたかたつむりのことにも再び言及し、独自の論説を展開し楽しませてくれている。 遠近法に関しても専門的な見解を縦横に描き、描かれる視点を読者に気づかせる。 絵画をじっくりと時間をかけてみることによって、そのディテールから得られる絵の本質を見極めようとするアラスの姿勢は、絵画鑑賞者に大いなる啓発となり、ますますの興味を引き出させる。 このラジオ放送は、ダニエル・アラスが自分が不治の病に冒されていることを知っているなか収録が行われた。 ダニエル・アラスが私たちに語る最後の仕事のひとつになったことは間違いなく、放送を聴けなかった私たち日本人は本書によって、アラスの最後のメッセージを受け取ったのだ。

Posted by ブクログ

2011/11/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ダヴィンチコードを見てから、この分野に興味を持った。 読んでみたがなかなか難解。 正直最後まで読めなかった。 ときたま、専門外の本を読むのもいいよね、というとこ。

Posted by ブクログ

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