くらしっくミステリーワールド(5) 大きな活字で読みやすい本 オールルビ版-甲賀三郎集

甲賀三郎【著】

• 販売会社／発売会社: リブリオ出版
• 発売年月日: 1997/02/01
• JAN: 9784897844978

商品レビュー

2023/12/15

ブクログメンバーの書棚でみつけて興味をもちました。初めて聞く名前でした。図書館にあったのがこの大活字本。

４作収録。いずれもトリックがあれこれ入り組んでいて、最後に謎解きがされる。探偵がするのではなく、犯人からの手紙だったり、関係者の証言で明かされたりする。トリックの妙を楽しむのと、書かれた戦前の情景を思い浮かべる、というのが今読む価値か。

「琥珀のパイプ」1924（大正13）発表
　関東大震災のあと私の家の周りで自警団ができた。その夜３人で夜回りをしているとかねてから非協力的だった家で３人の人間が斬殺されていた。夜回り当番の一人はその家の主を非難していた男だったが・・　もう一人の越してきたばかりの記者の男は訳知り顔に死因などを説明しだす・・　震災後という状況を頭に描くと、ほの暗い街角が目に浮かぶ。

「状況証拠」　
法学博士の青山氏。法廷で弁論をするが状況証拠がいまひとつ決定打にならないものを感じて弁論すると男は無罪になるが・・

「四次元の断面」　
川根は妻の不貞を疑い妻を連れ出し殺した罪で服役。だが妻を連れ出したバスの行路が自白との整合性がないとして無罪放免された。不貞の証拠だと確信したのはデパートの写真展で偶然妻と他の男がベンチに座っている写真を見たからだったが・・　

「青服の男」　
別荘の若旦那がその別荘で死んでいた。が、当の若旦那は次の日別荘にやってきた。そっくりだが死んだのは実は従兄なのだという・・・

甲賀三郎：1893（明治26）10.5～1945（昭和20）2.5　51才没　本名は春田能為。筆名は郷土伝説の甲賀三郎兼家からとった。滋賀県生まれ。大正5年東京帝国大学工学部卒。和歌山市の由良染料株式会社入社。大正9年に農商務省の臨時窒素研究所の技師となる。大正12年に「真珠塔の秘密」が雑誌「新趣味」の懸賞募集で一等に入選。

2001.7.2初版５刷　図書館