くらしっくミステリーワールド(3) 大きな活字で読みやすい本 オールルビ版-小栗虫太郎集

小栗虫太郎【著】

• 販売会社／発売会社: リブリオ出版
• 発売年月日: 1997/02/01
• JAN: 9784897844954

商品レビュー

2010/01/30

下娘、はやみねかおるのファンである。人気シリーズの１つに夢水清志郎シリーズがある。その第1作、『そして五人がいなくなる』にちらっと小栗虫太郎の『完全犯罪』なる本が出てくる。相当に読みにくいらしいその本、どんなお話なのか？と聞かれたけれど母も知らない。そんなわけで図書館で探して借りてみた。が。のっけから「苗族共産軍」なんて単語が出てきて意欲がしゅるしゅるとそがれた模様。「読んで〜（←読み聞かせのこと）」と持ってきたので数ページ読んでみたけれど、読み聞かせに向かないこと甚だしい。「?江上流苗族（ろこうじょうりゅうびょうぞく）」だの「前社会革命党（ぜんエスエルとう）」だの、音で聞いてもそりゃわからんだろう・・・。で、今回はとにかく本人はあきらめ、代わりに母が読むことに。ひょんなことから何だか珍しいものを読ませてもらった、という感じ。『聖アレキセイ寺院の惨劇』『完全犯罪』の二作を収録。活字が大きく、ルビ付。高齢者や子どもでも読めるよう配慮がなされている（子どもは別の意味で読みにくい本だと思うが）。「衒学的」という言葉がつきもののようである作者。両作に共通して、時代がかったエキゾチックな舞台に、黴臭い怪奇な雰囲気を漂わせる登場人物。トリックは作者が綿密に構築したことを思わせるが、与えられたヒントから読者が導き出せる類の物ではない。この雰囲気を楽しめるかどうか、いずれにしろ、万人向けという感じではない。著者の作としては、推理小説三大奇書の１つ『黒死館殺人事件』の方が有名なようだ。縁があればいずれ。