艶肌女将と誘惑温泉 リアルドリーム文庫

北條拓人【著】

• 販売会社／発売会社: キルタイムコミュニケーション
• 発売年月日: 2010/12/02
• JAN: 9784860329990

商品レビュー

2010/12/13

堅実な構成だが官能描写は概ね良好

[ＤＳＫ]

デビュー作のようである。温泉旅館らしい風情はあるが、第１章で全体の世界観を綴った後は、１章１ヒロインで第２章～第５章が続き、最後の第６章でみんな仲良く愛し愛される甘い展開である。女将が登場するのは当然として、仲居さんの役目を女将の妹がメイド姿で受け持ち、高校生の娘も手伝う古風ながら実は傾きかけた旅館となっており、これに長逗留している熟女の一人客が加わる４人体制。この旅館に世話になることになった主人公には、社会人ながらイマドキな理由で行き場を失った世知辛さも忍ばせている。

正直なところ、物語の部分に特筆すべき点はあまりない。主人公の真摯な態度やちょっとした仕掛けが奏功するのと、主人公に癒された熟女が一役買うことで旅館が立ち直るサイドストーリーが一応は描かれて読後感の良さに貢献しているが、主人公に母性をくすぐる優しい好青年という都合の良い設定がなされているので、展開としては実に都合良く進んでいくことになる。ほとんど初対面なのに愛情めいたものが芽生え、主人公のほんの僅かな下心も好意的に捉え、結果的には迫られる訳でもないのに進んでスキンシップを求めていくヒロイン達の描写が続いていく。フランス書院文庫だと鮫島次郎作品に近いノリか（さすがに「ボボ」や「おサネ」といった表現はないが）。主人公もちっとは努力しなさいよと一言申し上げたくなる部分はある。第一印象は芳しくなかった高校生の娘にしても「内心憎からず」といった描写が出てくるので最終的には想いを寄せる展開になってしまうのを見ると、こうも出来過ぎた展開が矢継ぎ早に続くのかとも思ってしまい、時には萎えるかもしれない。ただ、心と体を通わす愛情描写を個々に見れば決して悪くなく、例えばヒロインをもう少し絞るなり嫉妬する可愛らしさをもっと加えるなりすればかなり上質な作風になる可能性も充分に秘めていると感じた。要するに、ドラマ部分に多少目を瞑っても興奮度の高い官能シーンが描かれているのである。もう少し温泉旅館の至る所で交わってもよかったとは思うが、タイプの異なる２人の熟女に加え、お姉さんキャラに妹的存在という設定と性格に沿った情交描写が各章で見られるので、読み手の好みを幅広く網羅する良さがあったのと、愛情を以って加速する肉欲のいやらしさが出ていたと思う。