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移行期的混乱 経済成長神話の終わり
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 筑摩書房 |
発売年月日 | 2010/09/10 |
JAN | 9784480864048 |
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移行期的混乱
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商品レビュー
3.8
16件のお客様レビュー
保護貿易政策や護送船団方式と呼ばれた官民一体の経済システムに守られた日本経済は、ソ連の崩壊や牛肉・オレンジ輸入枠の撤廃などの国際社会の枠組みの再編を受けて、保護貿易から自由貿易へと変化を余儀なくされた。1991年以降の平均経済成長は、それ以前の3.8%から1.1%に低下した。 ...
保護貿易政策や護送船団方式と呼ばれた官民一体の経済システムに守られた日本経済は、ソ連の崩壊や牛肉・オレンジ輸入枠の撤廃などの国際社会の枠組みの再編を受けて、保護貿易から自由貿易へと変化を余儀なくされた。1991年以降の平均経済成長は、それ以前の3.8%から1.1%に低下した。 トッドらが世界中の国の社会構造の変化と人口動態を調査して得た結論によると、民主化の進展、教育の普及、識字率の向上、女性の社会的な地位の上昇という一連のプロセスは、出生率と負の相関関係がある。人口減少とは、文明が進んだ結果であり、人間と社会形態のアンバランスを調整しようとする出来事と考えられる。 江戸時代に人口動態が固定化されるのは元禄時代だが、この時期は貨幣経済が確立した時期で、商品経済が活発化している。元禄バブルの後の混乱を経て、戦国時代以来の高度経済成長が一段落して低成長時代を迎える。経済的停滞と社会変化の鈍化は、人口動態の固定化に大きな影響を与えたと考えられる。 2000年以降の10年間には、企業の不祥事が横行した。しかし、著者は、不祥事を起こした経営者の倫理が崩壊しているわけではなく、人も社会も成長しなければならないという右肩上がりの幻想や信仰のゆえに倫理を踏み外していると考える。消費者の嗜好が個別化、多様化している中で、従来のように売り上げを伸ばすことができなくなった老舗企業の経営者が採り得る手近な手段は、コストカットである。一般管理費や人件費をスリム化した後に、商品の製造原価を下げれば、商品の市場価値を低下させることになる。これを繰り返すと負のスパイラルに陥り、禁じ手を使うと不祥事となる。つまり、経営者たちが利益を出すことに従順であったがゆえに、禁じ手を使ったと考える。
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人口減少が一段落するまでの移行期的混乱、それは前例もなく、過去の経験であれこれいっても仕方ない面もあるのだけど、こうは考えないほうがいいかもな、なんて話。 「 いつでも時間と金を自由に交換できる、労働を金に交換できる」という観念が成立した頃に生まれ育った身としては、等価交換以外の...
人口減少が一段落するまでの移行期的混乱、それは前例もなく、過去の経験であれこれいっても仕方ない面もあるのだけど、こうは考えないほうがいいかもな、なんて話。 「 いつでも時間と金を自由に交換できる、労働を金に交換できる」という観念が成立した頃に生まれ育った身としては、等価交換以外の交換に憧れながらも、実際にはほとんど踏み出せない。リフレ政策で右肩上がりの時代と似た現象が起きたとしても、背景にはまったく異なることがある、ということを認識していないと、大きな落とし穴に落ちるのかも、ということが漠然とわかった。漠然と、だけど。
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これは好き嫌いが分かれる、ビジネス書と言うよりも思想論に近い。 まず、リーマンショック以降の今の日本の状況は単なる金融危機から原状復帰を目指している場面ではなく、人口減少時代という新たな時代への移行期であるため、そもそも成長戦略や経済成長ありきの政策を論じていること自体がおかし...
これは好き嫌いが分かれる、ビジネス書と言うよりも思想論に近い。 まず、リーマンショック以降の今の日本の状況は単なる金融危機から原状復帰を目指している場面ではなく、人口減少時代という新たな時代への移行期であるため、そもそも成長戦略や経済成長ありきの政策を論じていること自体がおかしいのでは、という筆者の視点にはある程度共感(筆者曰く、成長戦略がないことが問題なのではなく、成長しなくてもやっていける戦略がないことが問題)。 高度成長と民主化の進展は、ここに至っては日本の伝統的な家族構成である、家長制度、長子相続と行ったことまで変容させて行くこととなり、例えば二十四時間の生活の利便性を追求したコンビニエンスストアは、いつでも時間と金を自由に交換することができるという観念、労働を金と交換するという観念が人々の価値観の中に浸潤していくことになった・・・といったくだりは、総論も納得だし、各論としてのコンビニというビジネスモデルがもたらした弊害についても、個人的には非常に残念に感じている。便利さと引き替えに街の景観と小売り業を破滅させてしまったという日本の現状は、フランスに約3年住んでみて、街の景観は統一されていて、マルシェがあって小売りが元気で、買い物には会話がつきもので、といった、言うなればその町民文化的豊かさを肌身で感じただけに、共感できる。 一方で、後半の資本主義に対する警鐘として、「ビジネスにおける等価交換の原則が壊れてきている」という主張をサポートするために挙げている、医者と患者の情報の非対称性については、賛同しかねる。 筆者曰く、医者と患者といった情報格差がある立場においては、既に等価交換の原則が崩れており、だからこそ「医者の治療行為に対して医者が受け取る直接の返礼は病の治療という結果であり、返礼される金品は病の治癒に注がれた贈与への返礼という意味が濃厚だ」というのは、今の公的医療制度に対する誤った認識から来たものだと言わざるを得ない。 医者が提供する医療サービスに対して対価を払うのは、患者ではなく健康保険組合であり、共済組合であり、患者はその医療費を一部負担しているに過ぎない。 そのため、こういった公契約を取り上げて資本主義の等価交換性への反論とするのは、荒唐無稽な話になってしまう。 上記のように論理がねじれた指摘もあるが、考え方自体は、例えば政治家であれば分かっていても口には出せないような話であり、中々面白い。 こういう自分とは違う意見をじっくり聞いてみるのも、新たな気付きを与えてくれる一助になる。
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