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菜穂子・楡の家 新潮文庫
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商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 新潮社 |
発売年月日 | 2013/06/01 |
JAN | 9784101004051 |
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菜穂子・楡の家
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商品レビュー
3.1
21件のお客様レビュー
『風立ちぬ』に続いて堀辰雄。 『風立ちぬ』で二人が出会ったのは軽井沢ですが、『菜穂子』ではその隣村の信濃追分が舞台。 菜穂子が療養に行くのは『風立ちぬ』と同じく富士見高原病院のようです。 ジブリの『風立ちぬ』ではヒロインの名前が菜穂子。 『楡の家』第一部が1934年 『菜穂子...
『風立ちぬ』に続いて堀辰雄。 『風立ちぬ』で二人が出会ったのは軽井沢ですが、『菜穂子』ではその隣村の信濃追分が舞台。 菜穂子が療養に行くのは『風立ちぬ』と同じく富士見高原病院のようです。 ジブリの『風立ちぬ』ではヒロインの名前が菜穂子。 『楡の家』第一部が1934年 『菜穂子』が1941年 『楡の家』第二部が1941年 『ふるさとびと』が1943年 と長い間を経て書かれており、もっと大きい物語にする意図もあったようですが、全体的に未完の作品な感じがあります。 明、菜穂子、菜穂子の母、菜穂子の夫、およう、と人物が入れ替わりながら同じ出来事がそれぞれの視点から語られるという構成ですが、基本的には大きな事件が起こるわけでもなく、秋から冬にかけての寂しい別荘地や療養所でのそれぞれの孤独が綴られているといった印象でした。 おようが離縁された隣村のMホテル(『ふるさとびと』では蔦ホテル)って万平ホテルのことかな。最近また人気の出てきている軽井沢ですが、こちらもいつか行ってみたい。 以下、引用。 18 明には停車場から村までの途中の、昔と殆ど変わらない景色が何とも云えず寂しい気がした。それはそんな昔のままの景色に比べて彼だけがもう以前の自分ではなくなったような寂しい心もちにさせられたばかりでなく、その景色そのものも昔から寂しかったのだ。 51 しかし、彼はいま自分の心を充たしているものが、実は死の一歩手前の存在としての生の不安であるというような深い事情には思い到らなかった。 59 彼には、菜穂子のいまいる山の療養所がなんだか世の果てのようなところのように思えていた。自然の慰藉と云うものを全然理解すべくもなかった彼には、その療養所を四方から取囲んでいるすべての山も森も高原も単に菜穂子の孤独を深め、それを世間から遮蔽している障礙のような気がしたばかりだった。そんな自然の牢(ひとや)にも近いものの中に、菜穂子は何か諦め切ったように、ただ一人で空を見つめたまま、死の徐(しず)かに近づいて来るのを待っている。 66 「一体、わたしはもう一生を終えてしまったのかしら?」と彼女はぎょっとして考えた。 78 「わたしには明さんのように、自分でどうしてもしたいと思う事なんぞないんだわ。」そんなとき菜穂子はしみじみと考えるのだった。「それはわたしがもう結婚した女だからなのだろうか? そしてもうわたしにも、他の結婚した女のように自分でないものの中に生きるより外はないのだろうか?……」 104 あのレンブラントの晩年の絵のもっているような、冬の日の光に似た、不確かな、そこここに気まぐれに漂うような光を浴び出す一人の女の姿──そんな絵すがたを描いてみたい様な欲求が、いま、僕をとらえているのです。 何か僕の力になってくれそうなレンブラントの絵や、ベエトオヴェンの晩年のあの奇妙な翳に充ちた四重奏曲なんぞの中にやや胸苦しく暮らしています…… 114 霧のなかで、うぐいすだの、山鳩だのがしきりなしに啼いた。私が名前を知らない小鳥も、私たちがその名前を知りたがるような美しい啼き声で囀った。 129 一日は他の日に似ていた。 ただ小鳥だけは毎日異(ちが)ったのが、かわるがわる、庭の梢にやってきて異った声で啼いていた。 133 去年と同じ村はずれでの、去年と殆ど同じような分かれ、──それだのに、まあ何んと去年のそのときとは何もかもが変ってしまっているのだろう。何が私たちの上に起り、そして過ぎ去ったのであろう? 149 「私、この頃こんな気がするわ、男でも、女でも結婚しないでいるうちはかえって何かに束縛されているような……始終、脆い、移り易いようなもの、例えば幸福なんていう幻影(イリユウジヨン)に囚われているような……そうではないのかしら? しかし結婚してしまえば、少くとも、そんなはかないものからは自由になれるような気がするわ……」 184 『ボヴァリィ夫人は、私自身だ』というフロォベルの有名な言葉は、頗る理解し易い。
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この作品は昭和十六年三月に発表されたものとのこと。 久しぶりに昭和文学を読んだ。 登場人物それぞれの想い、心の中での葛藤やそのときの表情などが細かく描かれているのだが、その描写が本当に細かくて独特で、でも、その想いがわかるようなわからないような……。堀辰雄さんの作品を読んだのは初...
この作品は昭和十六年三月に発表されたものとのこと。 久しぶりに昭和文学を読んだ。 登場人物それぞれの想い、心の中での葛藤やそのときの表情などが細かく描かれているのだが、その描写が本当に細かくて独特で、でも、その想いがわかるようなわからないような……。堀辰雄さんの作品を読んだのは初めてだが、こんなにも人の心を表現するのは難しいんだな、そしてそれに対面した側の感じ方もきっと多様にあるんだな、ということを感じた。 何といえばよいかわからないが、独特な孤独が漂う小説。途中、胸がキュッとなった。 そして、最後の解説に記されていた、この小説の菜穂子や森さん、三村夫人のモデルを知って驚き、もう一度すぐに読みたくなりました。
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「楡の家」 娘の結婚をなんとか押しとどめようとする母親 その心理の核にあるのは 芥川龍之介をモデルにしたと思しき、過去の男の存在である 作者の堀辰雄は、ここに収められた一連の作品を通じて いつまでも忘れられない軽井沢の青春に なんとかケリをつけようとしたのかもしれない 「菜穂子...
「楡の家」 娘の結婚をなんとか押しとどめようとする母親 その心理の核にあるのは 芥川龍之介をモデルにしたと思しき、過去の男の存在である 作者の堀辰雄は、ここに収められた一連の作品を通じて いつまでも忘れられない軽井沢の青春に なんとかケリをつけようとしたのかもしれない 「菜穂子」 何かから逃れるように焦って結婚した菜穂子 一方、幼馴染の明は 未だ正体もわからない自分なりの理想を追い求め、独り生きている 彼らは共に病に侵され 死に向きあいながら、それぞれに答えを探し続ける でも結局は 死んだ小説家の面影を、今もなお追っているだけのようにも思える 「ふるさとびと」 田舎の古い旅館には、毎年夏休みになると 学生たちが、避暑と勉強を兼ねてやってくる 明と菜穂子がはじめて出会ったのもそこだった なつかしくも、やがて滅びゆくその風景を 守っているようであり、束縛されてもいるような そんな人々を書いたもの
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