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ある補充兵の戦い 岩波現代文庫 文芸173
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ある補充兵の戦い 岩波現代文庫 文芸173

大岡昇平【著】

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ある補充兵の戦い 岩波現代文庫 文芸173

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 岩波書店
発売年月日 2010/08/19
JAN 9784006021733

ある補充兵の戦い

¥880

商品レビュー

4.7

4件のお客様レビュー

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2017/06/20

かつてレイテ戦記を読んだ際、米兵を撃つか撃たないか逡巡する有名なシーンが印象に残り、著者の怜悧な視点に感動したことを覚えている。生きるためには敵を殺すという命題において、前件が否定されれば後件の結論は己の意志のみに左右されるんだよなとか、対偶である敵を殺さないならば己は生きる必要...

かつてレイテ戦記を読んだ際、米兵を撃つか撃たないか逡巡する有名なシーンが印象に残り、著者の怜悧な視点に感動したことを覚えている。生きるためには敵を殺すという命題において、前件が否定されれば後件の結論は己の意志のみに左右されるんだよなとか、対偶である敵を殺さないならば己は生きる必要がない、の真理値はどうなっているのかなとか。煎じつめた文章と思考の、論理的な印象が優先して、自分の中で著者の視点をより怜悧なものにしていた。 しかし、あらためて自分が30代となり出征した際の著者と似た境遇になって本書を手に取ると、異なる印象を受ける。感情表現が大変豊かに感じる。出征の際呼び寄せた妻子を東京で迷わせてしまったであろう後悔や、戦地で懸命に働き死んでいく若い兵を横目に自身は可能な限り身体を労わり生きようとするヒトらしさなど。 己もいずれ死亡すると諦めながらも、自覚的か無自覚的か生への執着は徹底しているように見える。今は、そこに溢れ出る感情の源泉を感じている。

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2011/06/18

所収の「捉まるまで」は読んでいたが、今回改めて読んでみてまた違う印象を持った。なぜ米兵を撃たなかったのか?というくだりはこの中でも有名なところだと思うが、その時の自分(大岡氏)の意識の見つめ方として、相手(米兵)の印象によって、自分の感情なり認識が形作られていく、とでもいうのか、...

所収の「捉まるまで」は読んでいたが、今回改めて読んでみてまた違う印象を持った。なぜ米兵を撃たなかったのか?というくだりはこの中でも有名なところだと思うが、その時の自分(大岡氏)の意識の見つめ方として、相手(米兵)の印象によって、自分の感情なり認識が形作られていく、とでもいうのか、こう書いてしまうとそりゃそうだろうという感じもするのだけれど、自身が最近、柄谷行人「トランスクリティーク」を読んだり、カントなんかについて考えることがあったので、その辺で考えたことと結びつけたくなる感じがした。大岡昇平、柄谷行人、カントあたりを並べてちょっと整理してみたい。 大岡昇平はスタンダールに傾倒しているところから、人間の心理について巧みに書ける作家、のように思われているところがあると思うが、ここにある一つ一つを読んで、そこで書けることの限界についても感じていたのではないかと勝手な思いを巡らしたりしている。「レイテ戦記」はまだ未読なのだが、事実のみを淡々と書き連ねたもの、と何かで読んでいて、そのスタイルが、「結局のところ自分の言いたいことを言おうと思えば、こういう風に書くしかない」という思いに至った末の産物ではないのかと今のところ思っている。 「レイテ戦記」もいずれ読みたい。

Posted by ブクログ

2011/05/08

 召集されてフィリピンに向かい、捕虜となって帰還するまでを書いた回顧録ということになるのかな。それにしても、理性的です。常に死と向かい合わせにある状況であるとは思えないほどの淡々とした文章です。  戦争体験というと我々戦争を知らない世代には銃撃戦に明け暮れるのかと思いますが、...

 召集されてフィリピンに向かい、捕虜となって帰還するまでを書いた回顧録ということになるのかな。それにしても、理性的です。常に死と向かい合わせにある状況であるとは思えないほどの淡々とした文章です。  戦争体験というと我々戦争を知らない世代には銃撃戦に明け暮れるのかと思いますが、ここで語られることの「辛さ」のほとんどは、愚かな上官の下で行動せねばならなかったことや、そもそも勝てるはずもない装備と作戦に従わなくてはならない「徒労」に向けられます。  もっとも辛い拷問は地獄の「石積み」だという話があります。人は目的がないことをやり続けることができないのです。  大岡氏のような頭脳明晰な知識人なら尚いっそうその「無駄なことをさせられることへの苦痛」は大きかったに違いありません。  しかしながら、この本には、泣き言や感情表現はほとんどありません。まるでビデオで撮ったかのようなありのままの描写です。よくここまで記憶しているなと感心します。  解説に「対象(兵士としての自分)との距離を正確にとりながら、当時の自分の心理や感情の起伏を言葉で明晰に表現しようとする。まるで自分の心理分析を楽しむように言葉のメスで対象を切っていく。」とありますが、まさにその通りです。  文章は平易なのですが、格調高いです。ああ、昭和の作家はこうだったと改めて思いました。大岡氏だからこそできる技といえるかもしれませんが。

Posted by ブクログ

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