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英仏文学戦記 もっと愉しむための名作案内
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英仏文学戦記 もっと愉しむための名作案内

斎藤兆史, 野崎歓【著】

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 東京大学出版会
発売年月日 2010/07/22
JAN 9784130830539

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商品レビュー

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2014/01/14

最近、英仏文学に触れていないなあという反省を胸に読んだ本。 タイトルから、戦争文学を取り扱ったものかと思いましたが、読み終わってみると特にそういったわけではいませんでした。 イギリス文学翻訳者の斎藤兆史氏とフランス文学翻訳者の野崎歓氏の対談集となっており、それぞれの専門から名作を...

最近、英仏文学に触れていないなあという反省を胸に読んだ本。 タイトルから、戦争文学を取り扱ったものかと思いましたが、読み終わってみると特にそういったわけではいませんでした。 イギリス文学翻訳者の斎藤兆史氏とフランス文学翻訳者の野崎歓氏の対談集となっており、それぞれの専門から名作を紹介しあうというやり方を「戦い」に見立てているのだろうと、おもしろく感じます。 イギリスとフランスは、ドーバー海峡を挟んで向かい合わせの隣国ですが、文化や風土は実はかなり違っており、そうした違いは、文学の中にも色濃く反映されています。 「フランス小説は、ヒロインは絶世の美女ばかり」と指摘するイギリス側。 イギリス小説は『ジェイン・エア』『高慢と偏見』など、ヒロインが不美人の小説が人気です。 イギリス側は「そこに地に足の着いた面白さがある」と言います。 もともと、美人小説がイギリスにないわけでも、不美人小説がフランスにないわけでもなく、これは読者の人気傾向だと思われます。 オースティンは、幸福というのは穏やかに長続きするというイメージだけれど、スタンダールは燃え尽きる一瞬の至福という表現。 やはり実質的なイギリス人と情熱的なフランス人というお国柄でしょうか。 もともと、アングロサクソン系とラテン系なので、民族的にも気質はかなり違うと思われます。 二人とも、互いの専門領域にも詳しいため、詳細で興味深い対話が続きます。 「パリの中心には女性の姿があるのがフランス的。年上の貴婦人の庇護を得ないとどうにもならないというのがある」という意見。 中世の騎士の時代から貴婦人への敬意は続き、それは『赤と黒』にも見られるものだと思い出します。 自分が仏文を学んだため、英文よりもつい仏文の解説を熱心に読んでしまい、気が付くと仏文の特徴ばかり印象に残りました。 英文学に見られない傾向としては、恋愛の駆け引きの巧みさ。 『ボヴァリー夫人』に登場する浮気男、ロドルフの誘惑法に、「これはフランス小説でなければ出てこない」とイギリス側は驚いていました。 イギリス文学は、淡々とした世界の中に時折小さなドラマが生まれるため、その動きが小さくても印象的なのですが、フランス文学は、元々がドラマチックであり、その中に逆に倦怠が生まれるというパターン。 『ボヴァリー夫人』が恐ろしいほど的確に、ドラマの後の倦怠を書き表しています。 こう考えると、フランス文学のドラマチック旗手というのは、熱いスタンダールとクールなフローベールが代表となるようです。 ユゴーも広い意味でドラマチックですが、もっと安定感がある感じでしょうか。 個人的にはあまり好みではないバルザックについても採り上げられました。 人間が踏み潰されずに生きていくためには、エネルギーとパッションが必要で、それで運命を切り開くのがバルザックの書く人物像だとのこと。 優しいだけでは生きていけない、を文章化させた作家で、彼の世界はエネルギー論的だと表現されていました。 翻訳者の二人らしく、英語とフランス語の翻訳の差異も語られます。 ウイリアム(William)が、フランスに行くとギヨーム(Guillaume)になるというのは、いまだに慣れません。 スコットランドの作家サー・ウォルター・スコットの『アイヴァンホー』は、フランス読みだと『イヴァノエ』になるのだとか。 もうさっぱり見当がつきません。 読み終えてみると、仏文の情報ばかり印象に残り、英文側はあまり残らなかったので、次に読みなおすときには、こころがけて英文側作品の言及の方に注目してみようと思いました。

Posted by ブクログ

2011/11/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

イギリス文学vs.フランス文学、両サイドの名作をぶつけ合う対談。『戦記』と銘打ってあるものの内容は至って平和的なのでご心配なく(笑)むしろ英仏異なる視点から互いの文学を批評しているので、新たな発見があって楽しい。 全体としては、倫理を描く生真面目なイギリスと背徳の美の追求が魅力のフランスという構図になるだろうか。言われてみればそんな感じ、するかも。私はどちらかというと仏文学のほうを多く読んでいるかな。 既読の本も多かったが、対談者二人が生き生きと作品を語る中で次々と提示される解釈はどれも新鮮で面白い。(つまり自分の読み方は浅かったのかしら?と思わないでもないが)作品単体の読解にとどまらない、文学史の中でどう位置づけられるかなどの分析はさすが。 読んだことのない作品は読んでみたくなる。 読んだことのある作品もまた読んでみたくなる。 そんな本。

Posted by ブクログ

2011/04/22

 英文学者と仏文学がこれぞと思われる名作を選び、面白さをぶつけあった。  オースティンやスタンダールなど一九世紀文学の定番から、現代の居場所のなさに毒を吐き続け、「八つ当たり状態」(斎藤)のナイポール、果ては、性欲剥きだしで、授業で「訳読はしたくない」(野崎)ヴェルベックまで。...

 英文学者と仏文学がこれぞと思われる名作を選び、面白さをぶつけあった。  オースティンやスタンダールなど一九世紀文学の定番から、現代の居場所のなさに毒を吐き続け、「八つ当たり状態」(斎藤)のナイポール、果ては、性欲剥きだしで、授業で「訳読はしたくない」(野崎)ヴェルベックまで。文学を語る楽しさにたっぷり浸れる。 (週刊朝日 2010/10/01)

Posted by ブクログ

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