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一〇〇年前の女の子
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一〇〇年前の女の子

船曳由美【著】

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一〇〇年前の女の子

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 講談社
発売年月日 2010/06/16
JAN 9784062162333

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商品レビュー

4.2

35件のお客様レビュー

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2022/05/30
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※このレビューにはネタバレを含みます

関東平野、群馬県館林の北西、県境の矢場川を越えると栃木県の足利、二つの町のあいだに高松という小さな村があった。 明治42-1909-年、そこに寺崎テイという女の子が生れた。里帰りしてテイを産んだ実母は、姑と折合いが悪かったか、生後1ヶ月のテイだけを嫁ぎ先へと送り返した。 実母に見捨てられるという数奇な運命を背負わされた乳飲み子の、健気で勝気で賢い女の子として成長を遂げていく姿が心に沁みるが、大正頃の風俗や習慣が詳細に活写されており、民俗学的な関心からもたのしく読める。 私の父母の田舎は徳島県南部や高知県の山里で、北関東の片田舎とはまた趣は異なるが、古里の香り匂い立つ田舎暮しの片々が、中学を卒業する頃まで毎年のように夏休みに帰参しては過ごした田舎の光景や風情が喚起され、ひととき懐かしい郷愁に誘われては、心地よき時間を堪能させてもくれた。

Posted by ブクログ

2021/10/18

1909年に栃木と群馬の県境あたりに生まれた母が米寿を越えてから語りだした子供の頃の思い出を、その娘がまとめたもの。当時の農村の暮らしぶり(裕福な部類に属する百姓家で育ったよう)が実に生き生きと描かれる。80年前の思い出は多少なりとも美化されているかもしれないが、季節の行事ひとつ...

1909年に栃木と群馬の県境あたりに生まれた母が米寿を越えてから語りだした子供の頃の思い出を、その娘がまとめたもの。当時の農村の暮らしぶり(裕福な部類に属する百姓家で育ったよう)が実に生き生きと描かれる。80年前の思い出は多少なりとも美化されているかもしれないが、季節の行事ひとつひとつが愛おしい。 われわれの暮らしはこの100年でなんと変わったことか。石牟礼道子を読んだばかりでますますそう思う。なお本書の主人公も実母が実家に逃げ帰ってしまったため波乱の人生ではあるが、石牟礼道子作品のような重さ、暗さはないので、なんというかより安心して読める。 歳を取ると最近の記憶を忘れる代わりに子供時分を思い出すとはきくが、果たして私は己の子供時代をこのように臨場感を持って語ることができるだろうか。著者自身が幼少期に疎開のためこの村で暮らした経験があることもプラスに働いているのだろう。

Posted by ブクログ

2020/12/05

寺崎家では、乞食が来たら決して手ぶらでは帰さなかったという。奈良時代にはあったという「蘇民将来」信仰の、一つの未来形だろうと私は思う。 おばあさんはいつもいっている。 ーどんな汚い姿(なり)をしている者でもバカにしてはいけない。そういうヤツは人間のクズだ。コジキだって、来世に...

寺崎家では、乞食が来たら決して手ぶらでは帰さなかったという。奈良時代にはあったという「蘇民将来」信仰の、一つの未来形だろうと私は思う。 おばあさんはいつもいっている。 ーどんな汚い姿(なり)をしている者でもバカにしてはいけない。そういうヤツは人間のクズだ。コジキだって、来世には仏様に生まれ変わるんだから‥‥   そういえば物乞いでも丁寧に「お乞食さま」と呼んだりする。何か理由(わけ)があって、神様が身をやつして村を訪れているかもしれないからだ。テイは大事に隠していた宝箱からアメ玉を持ってきてやった。子どもが大きな口を開けてニカっと笑った。(174p) 船曳由美さんのお母さんは、米寿を過ぎた頃から「重い石で心の奥に封印していたかのような子供の頃の出来事」を鮮やかに語り出した、という。明治42年生まれ。出版時には百歳を越えた。だとすれば、冒頭載せたエピソードは大正中頃の栃木県足利郡筑波村大字高松の「常識」であり、それに応えた10歳ほどの少女の小さな優しさだろう。 テイの運命はそれなりに波瀾万丈ではあるが、もっと凄いのは、柳田国男の「明治大正史世相編」では救い取れないかった子どもと女性から見た民俗と、それを生きた人々の想いが、これぞと言って良いほど、生き生きと描かれていることである。 たくさん栞を挟んで本が膨らむほどだったのであるが、もう途中で諦めた。何処を取っても面白い。興味深い。100年前の日本は、弥生時代から続く古代の匂いがする。この60年間で、日本はいったい取り返しがつかないくらいに変貌したのではないか? 船曳由美さんは、10年ぐらいかけて何度も同じ話を聞いてきて、この話をまとめたのだろう。聞書で無名人の人生をまとめた書物に、私は何故かいつも滅多に出さない最高点を出している。無名人の人生にこそ、豊かな物語がある。 小熊英二「生きて帰ってきた男」 山川菊栄「武家の女性」 宮本常一「土佐源氏」 あまりにも凄すぎて未だ読み切れていない 石牟礼道子「椿の海の記」 この本も最高点を出すだろう。 いや、文庫本も出ているようだし、これは買わなければならない。 私の祖母や両親は既に他界しているが、ホントは彼らからこそ、私に繋がるホントの人生の物語を聞かねばならなかった。後悔先に立たず。

Posted by ブクログ

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