忍法封印いま破る 山田風太郎傑作忍法帖 Kodansha novels special

山田風太郎(著者)

• 販売会社／発売会社: 講談社
• 発売年月日: 1996/07/03
• JAN: 9784061818972

商品レビュー

2012/09/23

　やはり山風先生は、「数」を使った演出が抜群ですな。
　登場人物の数、そしてその"消費""整理"の仕方、さらにはサブタイトルの演出と、実に痺れる仕掛け満載です。
　冒頭、対決構図に至るまでの人物紹介…主人公と３人のヒロイン、そして５人の敵、物語の根幹となる大久保長安。その紹介で全体の1/3くらい使っていますが、そのシチュエーションだけでも素晴らしく、「はてこれが、どんな対決になるのか」と、引きをどんどん強くします。

　そして、タイトルに言われる「忍法封印いま破る」。主人公おげ丸が、いつ、何故その封印を破るのか。その凄まじさが胸を打ちます。

2012/04/09

忍法封印～は銀河～の直後の話となってます。銀河～で石見守は失脚の命運を待つばかりとなりますが、彼の科学に対する思いは、その後継者たる己の種を残すことに結実します。なんでそうなるんや？と思いますが…

そこで石見守は娘婿である服部半蔵にくのいち３人を差し出すことを要求し見事種付けに成功、そして命を燃やし尽くし逝きます。石見守落命と共に改易の惨事を見る大久保家、科学の子を宿した３人のくのいちにもその手は迫るのですが、長安の遺児であるおげ丸（長安とサンカの娘との間に生まれ科学の血は全くなかったものの服部家に預けられ比類なき忍者に成長してます）は、亡き父の言葉を守り３人のくのいちを守るため、大恩ある服部家に刃向かうことを決意し、３人の妊婦を抱えた逃避行に出るのです。

彼等を狙うは甲賀五人衆で、おげ丸のかつての友であり師でもある面々、おげ丸は恩ある者達へのせめてもの手向けで己の忍法を封印します。銀河に続き１対多数の、さらにめちゃめちゃなハンディキャップマッチバトルとなります。

３人のくのいちは、おげ丸のかつての許婚だったり相思相愛の仲だったりするのですが、長安の科学に対する怨念はそのようなセンチメンタルを容赦なき引き裂き、さらに過酷な試練をおげ丸に与え、おげ丸はストイックにその妄執に応えていくのです。ページが進むにつれて陰惨な展開に救いのない予感になります。そしてとうとうおげ丸が忍法の封印を破るに至り…おげ丸のストイックな心情と報われなかった結末に泣けます。

銀河～忍法封印～と連作に見られるのは皆殺しの美学？本来の忍の者の宿命と思われますが、とにかく一人残らず殺しておいて寒風吹きすさぶ中に、ただ一人残るのはキーパーソン大久保石見守長安の怨讐とも言うべき、科学に対する思いの力だったのでした。

2011/09/24

忍法を封印せざるを得ないという設定の妙。最後にカタルシスが得られる。敵の忍法「生霊逆ながれ」「変化袋」がトリッキーでプロットによく生かされている