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芋虫
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江戸川乱歩(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 角川グループパブリッシング
発売年月日 1983/05/01
JAN 9784041053010

芋虫

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商品レビュー

4.3

6件のお客様レビュー

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2024/06/03
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※このレビューにはネタバレを含みます

一度読んだら忘れられない、心抉られる作品を読んだ。傑作です。 湯船に浸かって温まるあいだ、乱歩の短編でも1作読もうかとkindleを起動したら、そこから釘付け。のぼせるところだった。ただ、この作品は途中でやめたらダメだと思って読み切った。どのシーンも、どの心理描写も強烈すぎた。 戦争で四肢を失い、耳も聞こえず言葉も喋れなくなった須永中尉。残されたのは視覚と触覚のみ。中尉は口に鉛筆をくわえて筆談を行うか、目で訴える以外に意思疎通を行うことが出来ない。 主人公は、そんな須永と暮らしている妻・時子。30才。 乱歩が書かなければ、傷痍軍人を妻が支える純愛ものなったかもしれない。 全く違う。 時子は、自分が哀れな亭主を、ただ自分の情欲を満たすだけのために飼ってある獣のように、または一種の道具のように思ってしまっていた。夫を痛めつけることで快楽を得ていた。さらに昔、夫が戻ってきてからの日々を思い出してるうちに、彼女の中の野生が荒々しくなってしまい……。 「ユルシテ」に対して、最後の「ユルス」はあまりにも深い。 1929年、「新青年」一月号に発表。初期の代表的な短編の一つ。 自作解説では『太平洋戦争にはいる直前に、私の多くの作は一部削除を命じられたが、全文発売禁止となったのはこの「芋虫」だけであった。』と語っている。確かに表現がグロテスクであったり、差別的であったり、問題作には間違いない。 さらに解説で書かれていて印象的だったのは、『この小説が発表されると、左翼方面から称讃の手紙が幾通もきた。反戦小説としてなかなか効果的だ。今後もああいうイディオロギーのあるものを書けというのである。しかし私はこの小説を左翼イディオロギーで書いたわけではない。この作は極端な苦痛と、快楽と、惨劇とを書こうとしたもので、人間にひそむ獣性のみにくさと、怖さと、物のあわれともいうべきものが主題であった。反戦的な事件を取り入れたのは、偶然それが最もこの悲惨を語るのに好都合な材料だったからにすぎない。 (中略)  左翼に気に入られたものが、右翼にきらわれるのは至極もっともな話で、私は左翼に認められたときも喜ばなかったように、右翼にきらわれたときも別に無理とは思わなかった。夢を語る私の性格は、現実世界からどんな取り扱いを受けようとも、一向痛痒を感じないのである。』 乱歩はあくまで、自分の書きたいもの伝えたいものの舞台装置として、戦後という状況を使ったに過ぎないと述べている。この姿勢は見習いたい。

Posted by ブクログ

2010/03/27

結構衝撃を受けた作品。江戸川乱歩は読んだことがなくて、一番最初がこれだったからイメージが大きく変わった。でも残酷だけど心惹かれる話だった。官能的と言えばいいんだろうか。目を背けたくなるような描写もあるのに、何故か目をそらせない。そんな感じの一冊。今まで読んだ作品の中でもここまで強...

結構衝撃を受けた作品。江戸川乱歩は読んだことがなくて、一番最初がこれだったからイメージが大きく変わった。でも残酷だけど心惹かれる話だった。官能的と言えばいいんだろうか。目を背けたくなるような描写もあるのに、何故か目をそらせない。そんな感じの一冊。今まで読んだ作品の中でもここまで強烈に残ってるのも珍しいというくらい心に残る話だった。

Posted by ブクログ

2009/11/16

とんでもない小説だった。 一人の人間が、ここまでの極限状態を描き得るということに、畏敬の念を感じる。江戸川乱歩という人は、まぎれもなく、リミッターを取り去った想像力と、果てのない妄想を曝け出す覚悟を持った、正真正銘の小説家だったのだと思う。 もし、小学生の頃に、「怪人二十面相」...

とんでもない小説だった。 一人の人間が、ここまでの極限状態を描き得るということに、畏敬の念を感じる。江戸川乱歩という人は、まぎれもなく、リミッターを取り去った想像力と、果てのない妄想を曝け出す覚悟を持った、正真正銘の小説家だったのだと思う。 もし、小学生の頃に、「怪人二十面相」ではなく、こういう強すぎる毒のほうを喰らっていたとしたら、どういうことになってしまうんだろう。というかそもそも、こんな衝撃的な作品は、今や、どこを探しても見つからないんじゃないだろうか。 彼女の心の奥の奥には、もっと違った、もっと恐ろしい考えが存在していなかったであろうか。彼女は、彼女の夫をほんとうの生きたしかばねにしてしまいたかったのではないか。完全な肉ゴマに化してしまいたかったのではないか。胴体だけの触覚のほかには、五官をまったく失った一個の生きものにしてしまいたかったのではないか。そして、彼女の飽くなき残虐性を、真底から満足させたかったのではないか。不具者の全身のうちで、目だけがわずかに人間のおもかげをとどめていた。それが残っていては、なにかしら完全ではないような気がしたのだ。ほんとうの彼女の肉ゴマではないような気がしたのだ。

Posted by ブクログ

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