文豪たちの手紙の奥義 ラブレターから借金依頼まで 新潮文庫

中川越【著】

• 販売会社／発売会社: 新潮社
• 発売年月日: 2010/05/28
• JAN: 9784101326917

商品レビュー

2018/04/19

近代の文豪たちの手紙を紹介しています。
恋文・挨拶文・借金の申込み。それからそれから。
タイトル通り様々な状況での手紙があります。

どれも美文ばかりではありませんが、ぐっと
引き込まれる文章ばかり。

『大雪大雪！』と始めてしまう、こころにぐっと
くる書き出し。文人たちは破天荒であって、決して
常識人ばかりじゃありません。

でも、魅力があるんでしょうね。やっぱり。
手紙は思うことがストレートに出るから…。
実際にはいろいろ多事多端な面々。
けど、自分も彼らから、こんな手紙を
もらってみたいような気がして。

少なくとも、お返事なり、親しい誰かに手紙を
したためるのもいいなという気にはなります。

本の後半は、お手紙の書き方マナー講座の
体を取っていますので、改まった手紙の
書き方に自信がなかったらご一読を。

でもちょっと、教え方がおっかなかいのは
私だけでしょうか。

子供の頃、手紙の例文集を読んで
大人はいろんなお手紙を書くんだなあと
文箱のナカミを想像していた私ですが
あの頃の例文集は、もっとやわらかな
言葉で、手紙の作法を説いていた気がします。

もっとも、本書のテーマは前半部なので
そっちが楽しければ良いのでしょうけど。

各作家の作品にも、ぜひ当たってみたいし
書簡集も文芸として素敵ですから
手にとってもいいかも。

なにしろ、人間の諸相を映して
興味津々の一冊でした。

2014/09/21

【本の内容】
恋文、挨拶状、通知状から借金の依頼状まで、二十四人の文豪からその心得と奥義を学びとる一書。

［　目次　］
第１章　心に響かせる「愛の手紙」
第２章　人柄があらわれる「挨拶の手紙」
第３章　気配りが大事な「おしらせの手紙」
第４章　命がけで書く「道ならぬ恋の手紙」
第５章　人生を切り拓く「お願いの手紙」
第６章　私たちも参考にしたい「手紙の心得」
終章　「まごころ」を伝えるために

［　ＰＯＰ　］
恋文から借金依頼まで、２４人の文豪の手紙を引用し、その奥義を学ぶ。実に面白い。

ペンを持つ人の吐息、ときめきや感謝の気持ちが、ありありと伝わってくるのだ。

歌人の斎藤茂吉は、道ならぬ恋をした相手への手紙で〈写真を出して、目に吸い込むようにして見ています。（中略）食いつきたい！〉と、あふれる思いをしたためた。

松茸を送ってもらった島崎藤村の礼状もいい。

〈松林の秋の深さを一緒に送って頂いたように思いました〉。

受け取った人は、どんなにうれしかったことだろう。

お金がないからと、借金依頼を断る漱石の手紙は、その追伸が『猫』の作者らしく、機知に富んでいる。

〈紙入を見たら一円あるから是で酒でも呑んで家主を退治玉え〉。

恩着せがましさは一切なく、借りる人の困り果てた気持ちに手の届く手紙だ。

書き出し、時候のあいさつ、追伸の仕方をまとめた章は参考になる。

「拝啓」に始まり「敬具」で終わる紋切り型ではない、作家の真率で自由な表現が学べる。

［　おすすめ度　］

☆☆☆☆☆☆☆　おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆　文章
☆☆☆☆☆☆☆　ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆　メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆　冒険性
☆☆☆☆☆☆☆　読後の個人的な満足度
共感度（空振り三振・一部・参った！）
読書の速度（時間がかかった・普通・一気に読んだ）

［　関連図書　］

［　参考となる書評　］

2012/09/20

おもしろかった！個人的には北原白秋のドロドロ恋模様と、林芙美子の素直な手紙、斉藤茂吉のぶっ飛び具合が面白かった。でも一番良かったのは織田作之助の「ついと大デブと結婚というはしたなきことになりました」という手紙かな。あと引用されてた太宰の『「晩年」に就いて』に死ぬほど同意。『晩年』は読んだことないが…。