「商い」で成功した江戸商人「ビジネス」で苦しむ現代人 仏法に導かれた「商人道」の極意 Nanaブックス

植西聰【著】

• 販売会社／発売会社: ナナコーポレートコミュニケーション
• 発売年月日: 2010/04/28
• JAN: 9784901491983

商品レビュー

2016/09/05

とても易しく分かりやすく、近江商人の精神性を語ってくれているので、実用書としてはとっても有為です。

「金儲け」という言葉には汚い匂いが付きまとうのだけれど、それが近江商人の「三方よし」の精神にかかるとたちまち心が晴れ晴れとする。この読後感はなかなかのものである。

個人的にはもう少し、近江商人の商売哲学と仏教の教義との結び付けを、より詳しくより深くしてほしかった。

道徳観、倫理観、宗教の教義、これらに共通して原理原則が貫かれているならば、切り口はなにも仏教でなくてもよかったのでは。

実際に本書の中でも仏教ではなく儒教の考えが反映されているとも書かれているし。

とはいえ平易で有為な書です。
これから商売しようとする自分自身を力づけてくれる一冊です。

2011/12/23

　サブタイトルの仏法に導かれた「商人道」の極意のことばの通り、仏教の教ええを基に、商人が商売を繁栄させていたという趣旨。紹介されている人物のほとんどが、近江商人。
　三方よし、始末してきばる、千両天秤、近江商人をリスペクトしている自分にとっては、慣れ親しんだ言葉が紹介されていた。それ以外にも、売り手が当然の価格だと思っていても、買い手は「高い」「騙された」と思うかもしれない。お客様に薄利で売って悔やむくらいが、ちょうどよく、お客様は喜んで下さる。という意味の「売って悔やむ」など知らなかった言葉も多数紹介されていた。
　著者のビジネスと言ってしまうと、客を騙してでも、利益を得ることが善と、捉えられている風潮がある。との主張には、本書で挙げられていた。昨今の食品偽装、耐震偽装などを見ると、理解できる面はある。これからは「ビジネス」ではなく、「商い」をしなければならない。そう思える内容だ。
　だからと言って、近江商人の教えだけ、守っているのも、どうかと思う。時代の変化は激しい。正直に、朝から晩まで、闇雲にお客様の喜ぶ顔を見ていても、その商品・サービスが世間から必要とされなくなることもある。一生懸命に働いているのに、商売がうまくいかないのは寂しい。
　だが、将来そのモノが売れなくなった時に、次を考えるのもいいのかもしれない。始末してきばってさえいれば、蓄えもしっかり出来ているだろうし、商売の基本も出来ているだろうから、新しい商売を始めても旧のお客様はついてきてくれるだろうし、自分に必要のない商売でも他の人に紹介してくれるかもしれない。ビジネスでも商いでも、結局は人間性なのかな。