生涯学習の理論と実践 放送大学大学院教材

三輪建二【著】

• 販売会社／発売会社: 放送大学教育振興会/日本放送出版協会
• 発売年月日: 2010/03/01
• JAN: 9784595139376

商品レビュー

2011/01/31

記述の中で言及されている文献（実践コミュニティ、省察的実践論、学習する組織）をいくつか掘り下げて、読んでみたくなった。生涯学習社会は自己実現への仕組みであり、コミュニティづくりと密接に関係があり、予想外の広がりを感じさせてくれた。

以下、良かった記述。
・意識変容の学習は、これまでの価値観を全面否定する学習なのではなく、価値観を「相対化」し、価値観の視野を広げる学習だと言って良いという点。
・「問題を女の外に求めるよりも、日常生活や女自身の意識のひだにまぎれこんで女を縛っているものを洗い出し、内在する矛盾と外的な状況との関わりをたどりながら差別の様相をみようとした」（伊藤雅子）
・共有された課題を共同の努力で解いていこうとする意思が生まれるとき、そのひとつの道として共同学習がはじまる。

以下、試験用。
１．社会教育→生涯教育→生涯学習→生涯学習基盤整備とインフォーマルな生涯学習。ポール・ラングランがユネスコで生涯教育の語を用いる。学び方を学ぶ自己教育への関心。波多野完治。1981年の中教審で生涯学習の語が。教育は環境、学習は主体性に力点が。ライフ＝生涯、生活、生命の学習。垂直的統合と水平的統合。学歴社会への反動から生涯学習があてがわれた。スポーツや趣味など、インフォーマルな、組織的、意図的な学習活動とは言い難い活動の中に生涯学習がある。生涯学習への4つの批判：教育格差の拡大、学習の適時性と累積性、経済的コスト測定が難しい、生涯学習が社会適応的。学習はしばしば利己的。
２．生涯学習のグランドデザイン：ボーダーレスな社会、労働・余暇・学習の循環型社会、開かれた自己実現社会。新自由主義路線の悪影響（行政の関与の低下）。参加の陥穽（一部の市民の声。形式的な参加。行政による新たな支配）
３．アンドラゴジーbyノールズ：自己決定性の増大、学習資源としての経験、課題中心的、。ポスト・アンドラゴジーbyクラントン：自己決定型学習（エンパワメント）、意識変容の学習＝価値観を相対化。
４．状況的学習（レイヴとウェンガー：学問と現場の乖離あり）≒省察的学習（ショーン）から実践コミュニティ（ウェンガー：コーディネーターがいる）≒組織学習（ショーン）へ。さらに拡張的学習（エンゲストローム）。
５．学習ボランティア
６．NPO:第3の生涯学習：目的としての学習、手段としての学習、結果としての学習。学習と活動の相乗効果があり、より公共的なものになっていく。
７．センゲの5つのディシプリン：理想と現実のギャップの認識、学習の妨げとなる硬直した考えを修正、共有ビジョンの構築、チーム学習、自分たちを取り巻く環境も視野に入れたシステム思考(個人と組織と社会)の獲得。ワトキンス、マーシックの学習する組織論。
８．高等教育機関の役割（市民への公開講座、産業界との連携、地域社会との連携、省察的実践の推進）
９．ネットワーク型行政
１０．技術的関心（問題解決）を学習評価の全てにしてはいけない→実践的関心（他者理解、コミュニケーション）では相互評価するが、適応的で主観に偏っている→解放的関心（批判理論。根本的な思考）では意識変容の学習、社会参加活動を評価する。
１１．韓国:平成教育、平成教育士１～3級、人的資源開発マネージャー
１２．ドイツ：葛藤する学習。フィンランド:ノット・ワーキング。
１３．万人のための教育、ハンブルク宣言、識字教育。
１４．生涯学習は、高学歴化、資格社会化をもたらす一方、そのひずみを是正する役割（セイフティネット）も持っている。
１５．生涯学習社会の実現の課題（学習者の自己選択、情報提供、ソフト面の整備、人材の確保、連携、多角的なメディア利用、学習契約）